日本文化に憧れ来日 クラウドで起業したジェイソン・ウィンダーさんに聞く | 東京IT新聞

日本文化に憧れ来日 クラウドで起業したジェイソン・ウィンダーさんに聞く

エンタープライズ ベンチャー/スタートアップ

どんな企業や個人事業主でも、月末になると必ずやってくるのが請求業務。どれほど面倒でも避けては通れないものの、この作業のために本来の業務にかける時間がなくなっては本末転倒だ。MakeLeaps(メイクリープス)は、請求書管理を代行するクラウドサービス。提供するWebnet IT株式会社(東京都目黒区)のジェイソン・ウィンダー社長に、サービスの概要と開発のきっかけを聞いた。

請求書の発行から管理、発送までOKのクラウドサービス

MakeLeapsの特徴はシンプルな機能とフリーミアムモデル。無料プランも設けている http://www.makeleaps.jp/

 Excel・Wordにデータをまとめ、印刷、押印、封をしてポストへ……。

 請求書や見積書の管理・郵送業務ほど大変で、かつ、時間を奪われて悲しいものはない。しかし、どんなに忙しくても避けて通ることはできないし、かといって、経理担当者を雇えば安からぬコストが発生する。実に悩ましい問題だ。

 そこにビジネスチャンスがあった。請求書の作成から管理、発送までを一挙に請け負ってくれるのがWebnet IT株式会社が提供する「MakeLeaps(メイクリープス)」というクラウドサービスだ。

 クラウドを使って請求業務を行うメリットはまだある。たとえば請求者が出張やバカンスで海外にいる場合、そこから日本に向けて請求書を郵送しなければならず、日数も手間も余計にかかってしまう。

 だが、経理がクラウド化されると世界中どこからでも、国内の拠点から請求書を発行してくれる。世界進出を狙うベンチャーにも重宝される。自由なフィールドで活躍する人の増えた現代にマッチしたサービスと言える。

 「海外では、すでにITソリューションを利用する企業のほとんどがクラウドで請求業務を行っています。ですが、伝統を重んじる姿勢の強い日本は、ビジネス上での習慣もまた変化しにくい傾向にあります。経理業務の負担を軽減することで、少しでも日本人の働くポテンシャルを解放したいですね」。

 オーストラリア出身の社長ジェイソン・ウィンダーさんは、日本語でそう語る。

日本の武道に憧れ、19歳のとき30万円だけを持って来日

 なぜ海外出身の社長が日本で、日本企業向けのサービスで起業したのだろうか。

 ジェイソンさんが日本にやって来たのは19歳のとき。実は渡日の目的は、現在の仕事とは関係ないところにあった。

 「私は空手や柔道などの日本の武道をやっていたこともあり、小さなころから日本にとても興味を持っていたんです。18歳のときに、地元で会計士事務所に務めたんですが、どうしても日本への気持ちが消えませんでした。そこで事務所を辞め、3カ月間IT系の派遣で働いたのち、貯まった30万円を持って日本へ来たんです」。

 日本で憧れの道場・武神館の門を叩いたジェイソン青年。だが、彼が日本に留まるためには定職に就く必要があった。お金と時間の猶予が迫るなか、彼はなんと120社の求人にエントリー、そのうち18社で面接という、怒涛の就職活動を行った。

 「でも、どこの会社も最終的に年齢で切られてしまったんです。18社目に受けたITコンサルティングの会社では、お金はいらないのでチャンスをください!と食い下がり、1週間のトライアルの末、やっとOKをもらいました(笑)」。

新会社で働くも、どんどん増え続けた請求書管理業務

 その会社で1年ほど働いたころ、友人が会社を設立することになり、ジェイソンさんはコンサルタントを手伝うことに。2003年、現在の会社Webnet ITのはじまりだ。会社はすぐに軌道に乗り、順調に規模を拡大していったものの、それに比例して大きくなっていく問題があった。

 「請求書や見積書などの管理業務が増えて、ほかの業務にかけられる時間が削られ、ビジネスが上手に成長できなくなっていったんです。これは死活問題だと思い、知り合いのプログラマに自社のためのソフト開発をお願いしました」。

 このソフトによって、今まで3~4人の社員が何時間も費やしていた管理業務が、たった1人の社員が15分程業務すれば済むようになり、ビジネスはどんどんスムーズになっていったという。

 「経営者の友人にソフトを見せると、ぜひ売って欲しい!と頼まれることが続いたんです。これはビジネスチャンスだと思い、09年にWebnet ITの新事業として、MakeLeapsをスタートさせました」。

 このときCTO(最高技術責任者)に誘った相手こそ、現・共同経営者のポール・オズワルドさんだった。

 「ちなみにポールとは、「Hacker News」というサイトで知り合ったんです。ニューヨークで働いていた彼は、ちょうど日本人の奥さんといっしょに、1年くらいの滞在のつもりで来日していたんですけど、僕と出会ったことで、今は日本で会社の経営までしています(笑)」。

「どんなサービスか」より「周りが使っているか」を気にする

 2人は、最初の2年ほどを開発に費やし、11年に満を持してMakeLeapsをリリースした。時間を節約でき、作業効率も上がる便利なサービスを日本企業も気に入ってくれるかと思いきや、ここでも独自の文化が壁となってしまう。

 「海外ではおおむね、サービスを取り入れるとき、自分が気に入るかどうかで判断するんですが、日本では「どんな内容か」より「周りが使っているか」を気にするところがあるんです。武術の世界で見ても、IT分野で見ても、日本は様々な領域で発展しているんですが、まだまだ改良できる部分もあると思うんです」。

 そのため、MakeLeapsも最初はなかなか顧客がつかず苦労した。しかし、ジェイソンさんらスタッフは地道な営業活動を続けた。そんななか、07年に日本郵政がクラウドサービス「セールスフォース(Salesforce)」を導入するなど、クラウドに対する追い風も吹き始めた。時代の流れと地道な努力で現在ではMakeLeapsの導入社数は1万1000社を突破し、特にスタートアップ業界では知らぬ者のないほどのサービスにまで成長している。

 「MakeLeapsを使って満足してくれる人を見ると、とても嬉しい気持ちになるんです。僕は文化や武術などが大好きで、それを学ぶために日本に来ましたが、日本のビジネス習慣に関しては、もっと良くすることができると思いました。MakeLeapsを導入してもらうことで、日本にもっと貢献していきたいですね」。

 日本の文化を愛するがゆえ、ジェイソンさんは、ある場面ではそれが枷(かせ)となることも知っている。時代の変化に応じて変わっていくことは、何も文化を蔑ろにするわけじゃない。MakeLeapsによって得た時間をどう活用するか、日本はまだまだ発展の途中だ。

Webnet IT 株式会社 代表取締役 ジェイソン・ウィンダー 氏 1982年2月生まれ、オーストラリア・シドニー出身。19歳のときに来日し、日本の古武術である武神館に入門。黒帯二段。2003年にWebnet ITを創業し、09年からMakeLeaps事業に着手。

 

《齋藤 玲乃》

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