面白いだけじゃなかった!脳波で感情を読み出す「necomimi(ネコミミ)」の技術力 | 東京IT新聞

面白いだけじゃなかった!脳波で感情を読み出す「necomimi(ネコミミ)」の技術力

ソリューション クラウド

念じただけでモノを動かすなんて、手品やSFの世界だけかと思っていたが、今や現実世界でもふつうに動く。秘密は「脳波」だ。その変化を測定・解析することで手を触れずにモノを動かすことができる。この技術を玩具に取り入れ、大成功しているニューロスカイジャパン(東京都中央区)は脳波のさらなる可能性を見定めている。

シリコンバレー発の研究開発会社から「ネコの耳」

ニューロスカイジャパンの伊藤菊男社長
 脳波で動くという「necomimi(ネコミミ)」。聞いただけではピンとこないので、実際の商品を見せてもらった。  形状は名の通りズバリ「ネコの耳」だ。髪をまとめるカチューシャにネコの耳に模した飾りがついている。これが脳波の起伏を察知して動くというのだ。  開発したニューロスカイジャパンの伊藤菊男社長は、「そもそもニューロスカイは、脳波にとどまらず、心電、心拍や筋肉の動きなどの生体信号をデータ化して効果的に活用するためのセンサを開発する会社です」と説明する。  なにやら“お固い”研究開発の会社であるようだ。創業地は米シリコンバレー。2004年に3人の大学教授によって設立され、当時から生体信号に関する事業に狙いを定め研究開発を行ってきた。  「ニューロスカイのテクノロジーの柱は大きく言うと2つです。ひとつは医療現場でしか使えなかった脳波などの測定を小さなチップにまとめてしまったこと。もう一つはこれを数値化するアルゴリズムの開発です。脳波の状態がどのような感情に結びつくのかを導き出すアルゴリズムを独自に開発しました」。

脳波の測定技術を使ってエンタメ商品に

 この技術を応用し、09年にはパートナー企業が映画「STAR WARS(スター・ウォーズ)」の登場人物になりきり、フォースの力でボールを浮かせるというおもちゃ「STAR WARS Force Trainer」を発売。大ヒットとなった。実際には脳波を計測してセンサを作動させている。  ニューロスカイジャパンは12年8月、米国法人が100%出資する子会社としてスタートした。そしてヒットさせたのがnecomimiだ。  「ニューロスカイは生体信号を計測する機器とこれを解析するアルゴリズムの開発が専門です。この技術をSTAR WARS Force Trainerのようなエンターテイメントに落としこむのはもっぱらパートナー企業の仕事。しかし、ニューロスカイジャパンはnecomimiに関しては、我が社とneurowear (ニューロウェア=necomimiを発案したクリエーター集団)が主導権をもって企画開発をすすめました」(伊藤社長)。

会議で使うと“感情ダダ漏れ”に大爆笑も

necomimi(ネコミミ)のWebサイト
 ネコを飼ったことがある人ならお分かりだろう。ネコの耳は感情を如実に表す。興味のある音がすればピンと立てるし、怒ったときは後ろ向きに伏せる。  necomimiは人間の「感情」を察知して動く、いわば心のアンテナのようなものだ。脳波を独自のアルゴリズムで解析し「感情」に結びつけることができるからこその製品である。  耳の動きは四つ。まず装着し、本体が脳波をキャッチするとピクピク動く。これがノーマルな状態だ。何か気になることがあって気持ちが集中するとピンと立つ。逆にリラックスしているときは耳はひらたく寝る。さらに集中とリラックスが同時に高まると両方の耳が交互にバタバタ動く。まるで喜んでいるようだ。実際、嬉しいときにこうなる。  しかし初めてnecomimiのアイディアを聞かされた時、伊藤社長は「そんなものの何が面白いのか?」と首をかしげたという。ところが「試作品を試してみると、これが実に面白い(笑)。これを装着して会議などをやるともう大爆笑です」。  自分では隠しておきたいと思っている「興味」でも、その単語が聞こえたらとたんにnecomimiが反応する。  「顔ではポーカーフェイスを装えるけど、耳は反応するわけです」(同)。

技術応用で「おもちゃ」にとどまらない可能性

 当初はセンサだけの提供のつもりだったが、試作品があまりにもよく出来ていたので、製品の最終段階までニューロスカイジャパンが携わることになったのだという。  「necomimiを装着していると感情がダダ漏れ(笑)。思ってもみなかったところで自分の感情の高まりに気づくことができたりします。それだけでも楽しいコミュニケーションツールになり得ます。正確な数はお教えできないのですが、おかげさまで12年の発売以来予想を上回る売り上げを記録しています」(伊藤社長)。  あるイベントでは開催中の2日間だけで4000セット近くを売り上げたこともあった。  この商品のおもしろいところは、ただのおもちゃに終わらない可能性を秘めているところだ。  「たとえば筋無力症などで体の機能が衰えてしまっている方のなかには、顔の表情さえ変えることができないケースもあります。そんな場合でも脳波を計測することで感情の起伏を読み出すことができるnecomimiを使えば、どういった介護が本人にとって快適なのか、などの目安にもなると考えられます」(同)。  遊びだけでは満足できない。ニューロスカイジャパンが新たなコミュニケーションの扉を開くのはそう遠くない未来なのかもしれない。
《末並 俊司》

特集

page top