新たな子育ては“シェア”で!ベンチャー「アズママ」の支援策に共感集まる | 東京IT新聞

新たな子育ては“シェア”で!ベンチャー「アズママ」の支援策に共感集まる

コンシューマー サービス

インターネットを通じ子育てを手助けし合えるライフラインを作る――。そんな理念を掲げる株式会社AsMama(アズママ、横浜市中区)の子育てシェアサービスが注目を集めている。近所に住む顔見知りの主婦らに送迎や託児を1時間あたり500円程度で担ってもらう仕組みで、会員数は2万人を超えた。働きながらの子育てに悩んだり、自分の時間が取れなかったりする母親にとって心強い支援インフラを築きつつある。創業者である甲田恵子社長に立ち上げまでの苦労と、サービスにかける思いを聞いた。

保育園などの情報からWeb上で"仲間"を可視化

もしグループ内に支援者がいない場合も世話役的な「ママサポーター」が駆け付ける
 「今日、会社で急な会議でお迎えが間に合いそうにありません。どなたか保育園へ迎えに行っていただけませんか」。  そんな依頼ができるAsMama(アズママ)の子育てシェアサービスを使うには、パソコンやスマートフォン(スマホ)から親と子どものプロフィールを登録することから始まる。この際、子どもの保育園や幼稚園、小学校、習い事の教室名などの情報を入力しておくと、あらかじめグルーピングされ、そのなかで支援を依頼できたり、受けたりする仕組み。基本的には“顔見知り”としか繋がれなくしているのが特徴だ。  たとえば、仕事で保育園の迎えが遅くなりそうな時や、子供が熱を出しても会社を休めない時などに、送迎や託児の依頼をグループ内で発信し、そのなかから受けてくれる人を探していくという形とし安心感を担保している。顔見知りでも気兼ねしないよう、1時間500円というお礼の金額が決められている。  加えて、会員間のつながりを促すための工夫もある。全国各地で子育てに関連したイベントを毎週のように開いており、参加人数は延べ12万人に及んでいる。ここで繋がりを得るケースも多い。  また、世話役となる「ママサポーター」が全国に400人おり、支援の中心的な存在となって、地域の人々を繋げる役割を担う。  ネットとリアルの双方から子育てを頼り合えるネットワークを構築する試みを行った結果、AsMamaの子育てシェアサービスは会員数は右肩上がりに伸びている。

会社員として子どもより仕事を優先していたが・・・

AsMama(アズママ)の甲田社長
 行政の支援サービスや保育園では掴み取れないニーズを民間企業が主導して担おうと志すAsMamaは、2009年に設立されたベンチャー企業だ。  甲田社長は、かつてインターネット老舗のニフティで海外事業の立ち上げなどを行った後、ネットベンチャーのngi group(旧ネットエイジ、現ユナイテッド)で広報・IR(投資家向け広報)室長として活躍した。会社勤務時代は子育てをしながらの激務に、周囲から「小さな子どもがいるのに信じられない」と心配されるほど仕事に打ち込んできた。  「保育園の迎え時間に間に合わないような時は急いでベビーシッターにお願いするなど、あらゆる手段を使って仕事を優先させてきた。毎日が仕事と育児の綱渡りでした」と振り返る。  ところが08年に起きたリーマンショックの余波で当時勤めていた企業の業績が悪化。全社員の9割がリストラされるという事態に陥る。仕事に心血を注いできた甲田社長だったが、会社の都合であっけなく失業者となってしまったことで“燃え尽き症候群”のような状態に陥ってしまったという。

子育てと両立できずキャリアを捨てている現実

AsMamaの子育てシェアの仕組みでは、職場まで迎えに来てもらうこともできる
 しかし、転機はどこに転がっているかはわからない。現状を打開するために通った職業訓練校で、起業に繋がる社会の課題を見つけることになる。  教室にいた同年代の女性と話すうちに、子どもが生まれたことで会社をクビになった人や、2人目の子が生まれたことで就労できなくなった人など、出産や育児が原因でキャリアを捨てざるを得なかった女性が多いことを目の当たりにした。  子を抱えた女性に対する逆風と、社会の矛盾や怒りを感じたという甲田社長。「子育てを頼れる人がいれば、やりたいことができるようになり、社会も変わる」との思いをSNSに書き込んだところ、大きな反響を呼び、共感の声が多く寄せられた。そのうちに「私も一緒に何かをやりたい」という声も届くようになった。  かつて新規事業や企業広報に関わった経験から、「社会に役立つ仕組みを作りたいのはやまやまだけど、どうやってもお金が回るビジネスモデルが思いつかない」と、企業人ならではのシビアな考えを持ち、起業を思いとどまらせていた。  しかし、その間にも期待や支援の声は日々増えるばかり。ついには“社会の声”に後押しされる恰好で、舞い込んだ転職の誘いもすべて断り、失業から10カ月後には会社を立ち上げることを選んでいた。

SNSで募った11人の同志とともに子育て支援で起業

2009年11月に創業した株式会社AsMamaのWebサイト
 SNS上でつながった同志11人とともに立ち上げたAsMamaだったが、子育てを助けるという社会的な使命を担う一方で、経営者としては会社としてビジネス化することも考えなければならない。  子育て支援の輪を作りながら、そこへ企業がスポンサーとして商品をPRしたり、消費者の声を聞いたりする形で協賛してもらう形を考えつく。これは成功をおさめ、会社の収入も増えるなど経営も安定化しつつあった。しかし、ある時に気付く。  「数百人規模の親子コンサートイベントを主催したことがあり、お客さんは満員になって協賛してくれた企業の方にも喜んでもらえたのですが、壇上で子育て支援の話をしても広い会場がシーンとなって誰一人反応してくれない。自分たちは単なるイベントを主催するだけの存在になっているのではないか、と思うとショックで、どうしていいのかわからない状態になりました」。  創業者である社長に迷いが生じたことで、今まで共に歩んできた仲間は去っていき、会社には甲田社長だけが残された。

泣きながら1000人の声を拾い使命感が再燃

甲田社長は2013年11月にこれまでの経緯をまとめた書籍『ワンコインの子育てシェアが社会を変える!!』(合同出版)を刊行した
 「もう事業をやめてしまおうか」と開店休業状態となったところで、助け舟を出したのが、先輩起業家らと半年間かけて事業計画を磨く「社会起業塾」だった。  NPO法人ETIC. (エティック)が主催するこのプログラムは、「課題やニーズに立ち返って、社会を変える計画を作る」というコンセプト。事業の在り方に迷いが生じた甲田社長にぴったりだった。  ここで鍛えられるなかで、起業の原点や社会のニーズを再確認してみることをアドバイスされる。甲田社長は1000人に対面アンケートを行うことを決意。幼い我が子を連れ、拡声器を手に街頭へ出て、見知らぬ人に声をかけ続けた。  しかし、無視や拒絶をされるばかりではなく、時には不審者として警察官にまで職務質問され、交番へ連行されることも経験。1000人に話を聞くという難しさに道端で泣いてしまったこともあるほど過酷な2カ月間だったという。  そんな苦心の末に得られた1000人の声が甲田社長を二度目の再起動を促した。「近くに頼れる人が誰もいないから心配」「子どもがいるとできないことばかり」など、リアルな悩みを聞いた結果、子育て支援の必要性を再び認識。真剣に事業を行っていかねばならないとの使命感が刻まれることになった。

女性進出を促す日本に必要な「未来の子育て」提案

 そして昨年(2013年)4月、これまでの子育てコミュニティのなかで行われていた支援サービスをWeb上で正式に仕組み化し、子育てシェアサービスとして開始。万が一に備えて最高5000万円が補償される保険制度も苦労の末に整え、支援が行われるうえでの不安を少しずつ取り除いていった。  ビジネス化の面では、子育て社員へのバックアップを行いたい企業での支援活動や、住宅提供者である公団などの依頼で子育て支援サポート業務をすることによって、収入を得る形に変えた。保育園や幼稚園、行政などとの協業も積極的に行っている。  AsMamaのサービスは、働く母親はもちろんだが、専業主婦や父親も対象としているのが特徴だ。子育てに関わる人が孤立することを防ぎ、自分の時間を持つことは子どもにも好影響を与える。これが「未来型の子育て」だと甲田社長はいう。  日本の人口減や低成長によって、社会での女性活用が声高に叫ばれている。政府や行政の動きに先んじて、小さなベンチャーがこれからの社会に対応した新しい子育てスタイルを提案し、多くの共感者を集めているのは心強い。 【写真上】AsMamaの子育てシェアサービスに関するWebページ
《東京IT新聞 編集部》

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