話題の「ユーチューバー」は本当に儲かる? その実態と現実を先駆者に聞く | 東京IT新聞

話題の「ユーチューバー」は本当に儲かる? その実態と現実を先駆者に聞く

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YouTubeに独自の動画を公開し続けている「ユーチューバー」が話題を集めている。なかには、広告収入だけで生活している人も多く存在すると言われる。日本の人気ユーチューバーを紹介するとともに、元祖的な存在の一人であり、著書『YouTubeで食べていく~「動画投稿」という生き方』を発表した「ジェットダイスケ」こと愛場大介氏に自身の経験やユーチューバーを取り巻く実態を聞いた。



米国のニュースにも取り上げられた「HIKAKIN」氏

米国で話題になったこともあるHIKAKIN(ヒカキン)氏


ユーチューバーは、独自に制作した動画を定期的にYouTube上に発信をしている人のことを指しており、国内でその存在が次第に知られつつある。 

ちなみに、ユーチューバーやYouTubeクリエイターなどという呼び名が使われるのは日本語圏のみ。英語圏では「YouTubeパーソナリティ」「YouTubeスター」「YouTubeセレブリティ」といった表記が使われていることが多い。 最近では人気ユーチューバーに企業が

目を付け、商品の宣伝動画の制作を依頼するなどの例も増えている。 

こうしたケースが広く知られるようになったきっかけは、今では日本のYouTube(グーグル)CMにさえ登場するHIKAKIN(ヒカキン)氏の影響が大きい。同氏は昨年、薬用シャンプー「スカルプD」(アンファー)のCMに出演し、その名をインターネット界内外に広く知らしめた。 

YouTubeが米国でサービスを開始したのが2005年で、翌06年には米グーグルに買収された。HIKAKIN氏はこの年からいち早く日本からYouTubeにパフォーマンス動画を公開している。10年6月に発表した「Super Mario Beatbox」は月間再生ランキングで1位となり、米国のニュースでも取り上げられたほどだ。

幼稚園児までいる!日本の人気ユーチューバー

幼児界のカリスマ的な存在である5歳の「がっちゃん」


HIKAKIN氏をはじめ、日本ではさまざまなユーチューバーが活躍しているが、なかには5歳の幼稚園児までいる。 

現在5歳の「がっちゃん」は、おもちゃを紹介したり、鉄道関連のイベントや店に行った様子を配信するチャンネル「ザ★がっちゃんねる」を開設している。 

再生数が400万回を超えることもあり、幼児から絶大な支持を集めている。保育園や幼稚園に通う子供を持つ親からは、「子供がテレビより『がっちゃん』を見たがる」「『がっちゃん』が動画で喋っている様子を真似したりする」といった声もあがっており、もはや子ども界の社会現象だ。 

このチャンネルは、がっちゃんの父親が撮影や編集、動画投稿を行っており、実質的な管理人は父親となっているが、幼稚園児であっても人気ユーチューバーになることができるのだ。

“炎上系”のプロレスラーや企業と組み法人化例も

レスラーでもあるシバター氏は「炎上キャラ」でもある


ほかにもユーチューバーには、テレビタレント以上にユニークで注目を集めている人々が多い。 

チャンネル「PROWRESTLING SHIBATAR(プロレスリングシバター)ZZ」の管理人シバター氏は、格闘技大会THE OUTSIDERなどで活躍する“リアルアマプロレスラー”。アップされている動画は好きなアイドルについて語っているものや、ゲームをプレイしているもの、もらった誕生日プレゼントを紹介するものなど多岐にわたる。 

日記感覚で日常の出来事や感じたことを積極的にアップしているのが特徴。それだけでなく、ほかのユーチューバーにケンカを売るような動画をアップする“炎上キャラ”でもある。 
海外からの閲覧者も意識するMEGWIN(メグウィン)氏


一方、MEGWIN(メグウィン)氏は2005年2月から動画を日々Web上で公開していたが、翌年にはYouTubeに活動の場を移し、チャンネル「Amusing MEGWIN TV 毎日面白動画」を開設。11年には体重計や食堂で知られる株式会社タニタの出資を受けて法人化まで行っている。 

動画はひたすら寝ないで過ごす「寝ないシリーズ」や「ドラクエの呪文を再現してみた」など、エンタテインメント性の高いものが多い。人気を集めているのが米国ロサンゼルスでハンバーガーを食べ続ける動画で、再生数は510万を超える。海外からの閲覧者のために、動画には字幕をつけているのも特徴だ。

ジェットダイスケ氏「ユーチューバーとしての認識ない」

レビュアーで達人的な存在のジェットダイスケ氏


ユーチューバーの代表的な存在として知られるのがジェットダイスケ氏(40歳)だ。初期から活躍する動画レビュアー(動画を使い商品などを紹介する存在)のなかでは達人的な位置を築いている。 

2006年に開設したYouTubeチャンネル「JETDAISUKE(ジェットダイスケ)」では、デジカメやシンセサイザーなどの電化製品や、プラレール、トミカ、食玩などのおもちゃの紹介動画が並ぶ。なかには再生数が750万を超える作品もある。 

そんな人気者のジェットダイスケ氏だが、本人は「ユーチューバーとしての認識はない」と言う。その理由は、同氏が長年にわたって動画の知識を蓄えながら、ユーチューバー以前に「クリエイター」として活躍してきたためだ。

自力での動画作成・公開を経て、活動の場をYouTubeへ

高校生の頃からMSXパソコンで動画編集を行っていたというジェットダイスケ氏


同氏が動画編集を始めたのは1980年代、高校生のころ。当時の「MSX」パソコンを使ってのことだというから年季が入っている。大学卒業後に就職した企業でも、Mac関連やCD-ROM収録用の動画編集に携わるなど、動画やインターネットが一般的でなかった頃から、20年以上にわたって制作の知識と経験を蓄積してきた。 

個人でも古くからWebサイトやブログを開設。2004年には音声を公開する「ポッドキャスト」を開始し、翌年にはビデオポッドキャストに発展させた。YouTubeが話題となる以前から、自力で世の中に音声や動画を発信し続けていたのだ。 

そして06年にはいち早くYouTubeに個人チャンネルを開設。現在のスタイルと同様に“レビュー動画”を投稿したところ、「YouTubeにやたら製品レビュー動画をアップしている人」として認知され、ノリの良いタレント性と巧みな動画制作技術もあって、ジェットダイスケ氏の人気は年々高まっている。

動画での収入は再生100万回でやっと10万円程度

8月に光文社から刊行された『YouTubeで食べていく~「動画投稿」という生き方』ではユーチューバーの実態が細かに紹介されている


そんなジェットダイスケ氏は、自身で動画を発表し続けるクリエイターであるとともに、ユーチューバーの元祖的な存在として、今年8月には『YouTubeで食べていく~「動画投稿」という生き方』(光文社新書)という著書を発表。ユーチューバーの存在や現状を世に広く知らしめた。 

同著では、YouTubeでの広告収入の仕組みについても明かしている。それによると、YouTubeの動画再生前に流れる広告や動画上のバナーを閲覧者がクリックしたり再生したりすれば、グーグル側から動画の投稿者に報酬が支払われるという仕組みになっているのだという。 

ただ、動画の投稿者が報酬を受け取るには「YouTubeパートナープログラム」に参加する必要がある。 

2007年に同プログラムが開始された当初は招待制だったが、今では誰でも参加できるため、裾野は格段に広がった。 

報酬が発生する条件というのは細かく定められているが、基本的には再生数が多ければ報酬も多くなる。ただ、グーグル側は1再生あたりの報酬額を公表していない。ジェットダイスケ氏によると「だいたい1再生あたり0.1~0.3円というところ。1万回再生されて1000円、100万回再生されて10万円」だという。 

動画投稿だけで生活するための報酬を得るには、かなりハードルは高いといえそうだ。

企業とのタイアップやTVCMへの出演という道も

劇団スカッシュ(SQUASHfilms)はダスキンとのコラボ動画など企業との連携も積極的に行う


一方、ジェットダイスケ氏はYouTubeでの広告収入について「ベーシックインカム(最低限の生活ができる)くらい」は得ているという。同氏くらいの存在になればユーチューバーだけでも生計を立てることも不可能ではないようだ。 

また、広告による収入以外にも、企業のバックアップが得られることがある。 

たとえば、毎週金曜日にドラマ動画をアップしているチャンネル「劇団スカッシュ(SQUASHfilms)」は、「StalkingVampire~隙間男」と題したシリーズの動画が人気を呼び、昨年には掃除サービス大手のダスキンとコラボレーションした動画も発表。その後もアイフルや楽天、パナソニックといった著名企業とのコラボ動画を継続的に公開し続けている。 

冒頭に挙げたHikakin氏のように、YouTubeがきっかけでテレビCMへの出演を果たすケースもあり、活動の場はYouTube以外に広がることもある。 

また、ジェットダイスケ氏によると、企業とのコラボ動画やYouTube以外のメディアへの露出といった展開だけでなく「企業とタイアップし、YouTube上での『プロダクトプレースメント動画』も活況だ」という。 

これは番組内でスポンサーの商品を登場させる広告手法。有償でレビューを行ったり、動画内にスポンサーの商品や会社名を入れ込んだり、といった形の動画作品がそれにあたる。 

確かに、ユーチューバーの収入という面では可能性も広がるが「純粋に作った動画ではないため、企業絡みであることへの視聴者からの反感もある」(同)という。

解析ツールを気にせず、自分の伝えたいことを優先



ユーチューバーは普段、どのように活動しているのだろうか。 

YouTubeには、ユーザがアップした動画の閲覧数や離脱タイミングなど細かく把握することのできる解析ツールも用意されている。これで自らが発表した動画の反響が図れるわけだ。 

しかし、ジェットダイスケ氏は「(解析ツールを)気にせず、淡々とやっています。これを気にしていたら精神的に持たないですよ」と明かす。 

「たとえばトークショーや書籍執筆といった活動だと、まず何が面白いかとか、何を伝えるべきかとか、そういう側面から考えますよね。解析ツールを見て、どういう動画が受けるかとか、こういうシーンが受けるとか、気にすることはありません」とアドバイスする。視聴者の反応よりも、自分の伝えたい内容を優先することが大事だということだ。

日本の“ユーチューバービジネス”は「まだこれから」



「Webの記事でも、気合いを入れて書いたものがPV(ページビュー)が伸びず、力を入れずに書いたものがすごいPVになることがありますよね。多分、人気のユーチューバーは、ホームランを打ちにいくとか、ヒットを打てる打者ではないんです。たとえて言うなら素振りをやっている人。1000回くらい素振りしてたら球が飛んできて、ひとつは当たるんじゃないのか、というものではないかと思います」。 

10数年以上にわたり、独自で動画制作を続け、広く世に発表してきたジェットダイスケ氏ならではの言葉だけに、実感がこもっている。 

自分が伝えたい内容の動画を公開し続けていたところ、ある日突然、または徐々に注目が集まっていった、というのが今の人気ユーチューバーの姿といえそうだ。 

一方で「日本でユーチューバーという存在がビジネスとして確立されるのはまだこれからでしょう」といい、「海外のクリエイターによる動画を見ると、クオリティの高さに圧倒されます。日本発の動画サイトや動画文化も決して負けてほしくはありません」と力を込める。 

個人が継続的に動画を制作し、公開したら大きな注目を集め、結果として収入に繋がった、というようなユーチューバーはまだ日本では一握りだ。 

様々な目的を持つユーチューバーがこれからも切磋琢磨し、日本の市場が活性化していくことを期待したい。
《高橋 ユキ》

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