<IT坊主の説話>仕事も勉強もまずは「好き」にならねば長続きしない | 東京IT新聞

<IT坊主の説話>仕事も勉強もまずは「好き」にならねば長続きしない

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IT界と仏教界を経験した現役僧侶の“IT坊主”こと牧野豊潤(ほうじゅん)氏がITビジネスで役立つ「説話」を連載。世の中でもっとも新しい業界であるITの世界に、2500年の歴史を持つ仏教の教えは通用するのでしょうか――。今回(第16回)は、仕事や勉強を嫌々やっていても、自分のものにはならないということを、“門前の小僧、習わぬ経を読む”ということわざから探っていきましょう。

繰り返し反復するうち、脳の記憶が確かなものに

 「江戸いろはかるた」のなかに、“門前の小僧、習わぬ経を読む”ということわざがあります。

 「お寺の近くに住んでいる子供たちは、寺の境内で遊ぶことが多く、習ってもいないお経が耳に入り、自然に唱えるようになった」とか、「寺に弟子入りした小僧は、門前の掃き掃除などをしながら毎日、和尚の唱えるお経を聞いているうちに、お経を口真似で唱えることができるようになった」などとの意味に解釈されています。

 表面的には理解したように見えても、「単なる“物まね、猿真似”ですよ」などと受けとられることもあるでしょうが、繰り返し反復するうちに、脳の記憶が確かなものになり、やがては自分のものになり、それらしく対応できたり、振る舞えるようになってきます。やがて本来の意義や理屈も理解できるようになります。

 人の成長には、環境がいかに大切かを言い表した表現でもあります。

“猿真似”は有効手段、CMでも活用される

 何かを覚えるためには、“猿真似”も一つの有効な手段で、時間の経過とともに、いずれ理解の下地も出来てくるでしょう。

 しかし、どこかで綻びが出ないとも限りませんので基本を理解することは重要です。

 「聞き流しているだけで、○○が覚えられます」などというコマーシャルをよく見かけます。これは「門前の小僧」の応用編です。また、同じコマーシャルソングを何回も聴かされていると、つい口ずさんだりするのは門前の小僧の体験編でしょう。考え方や手法などがしっかりコマーシャルビジネスに活用されてるのです。

興味や関心を持つことで、覚えや上達が速くなる

 私が禅寺で修行している時、こんなことを言われたことがあります。

 “お経は心で覚えなさい。心が覚えたことは一生忘れない。頭は「意識して考えるところ」で、心は「無意識で感じたり、思ったり、しまったりするところ」である。これができればやがて、お経を唱えながら別のことを考えることができようにもなる”というのです。

 そうなると、「門前の子供達や小僧さんは、単にそこに居たから覚えることができたということでなく、無意識のうちに、お経に興味とか関心を持った(心地よい、楽しいなど)のではないだろうか、拒絶感のない心が覚えさせたのではないだろか」とも考えられ、もし何も興味がなかったのであれば、耳を傾けたかどうかはわかりません。

 「好きこそ物の上手なれ」ということわざもあります。興味や関心を持つことで、覚えや上達が速くなることは確かでしょう。

無関心だとやる気もなくなり、上達もしない

 「勉強が嫌だ、憂鬱だ、自分には合ってない」「仕事(ビジネス)がうまくいかない」など、思い当たることはないでしょうか。または周囲にいませんか。

 いくらやれやれとけし掛けても(けし掛けられても)興味や関心がなければやる気も上達もしません。これは、子供でも大人でも同じです。

 好きであること(好きになること)は大切なことです。

 次のような話があります。

 室町時代の禅僧で水墨画家(秋冬山水図などが有名)の雪舟(せっしゅう)は、幼いころ禅寺に入りました。しかし、好きな絵ばかり書いていて、お経に全然興味を示さなかったため、寺の住職に仏堂の柱に縛り付けられたのです。その状態であっても、涙を流しながら床に落ちた涙を足の親指に付けて床に鼠の絵を描いたのです。それを見た住職は、“まるで生きているネズミのようだ”と驚き、雪舟に絵を描くことを許したそうです。こういったきっかけが現代に名を残すことにもなったのです。

 人の持つ自信は、人間の成長を助けることにもなります。この雪舟の場合は、好きで得意であったことが幸いしたのですが、それを見て、評価し、認めて、得意なことをさせた上司(住職)がいたからこそ。その出会いもよかったのでしょう。

よき出会いが人間を成長させてくれる

 勉強や仕事は、「押しつけ」や「嫌々」では長続きしません。また、単なる「思いつきで興味があります程度」でも長続きするか否かはあやしいものでしょう。

 やはり始める前には、それなりの情報収集や下準備が必要。体験できることであれば体験してみることが大事です、

 しかし、色々な経験の積み重ねは貴重ですが、いつまでも夢を追いかけているわけには行かないのも現実。自分では気が付かないことも多くありますので、人の意見を聞く耳を持つことは必要です。

 ただ、受身で待っているだけでは意見も情報も届きません。自分からアプローチして積極的にきっかけやチャンスを作る行動を行うことです。そのためには、常日頃からのコミュニケーションと情報のアンテナは高くしておくことは大切です。必ず、後押しをしてくれる人や引き上げてくれる人にめぐり合うことになるでしょう。

「個の時代」も自分一人では成り立たない

 21世紀は「個の時代」とも言われ、集団よりまず自分と思われがちな一方で、“きづな”“つながり”“おもてなし”などという表現が懐かしさを覚える現代です。いずれも人の心を言い表した言葉(表現)であることがそのように想えるのでしょう。おそらく、「心地よい」と感じているのではないでしょうか。

 こういった気持ちは、いずれも自分一人では成り立たない(感じない)心です。そんな心根(こころね)が受け入れられてか、今や、きづなもおもてなしも世界共通語です。

 人は一人では成長できないものです。変化激しくめまぐるしい今の時代、周りに親身になって助言をしてくれる仲間や同輩、先輩、上司などがいる人、そんな、環境(組織、企業など)に居る人は幸せです。合掌

《牧野豊潤(まきの・ほうじゅん)》

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