<ITビジネス法務>SLA違反でもベンダが責任を負わない理由 | 東京IT新聞

<ITビジネス法務>SLA違反でもベンダが責任を負わない理由

エンタープライズ 経営

クラウドサービスで障害が発生した場合、クラウド事業者がどのような責任を負うのかについて、数回にわたって解説をしていきます。前回はSLA(サービスレベルアグリーメント)をどう作ればいいのか、何を規定すべきかを紹介をしました。今回は、SLAで規定したさまざまな項目についての保証に違反(保証数値への未達成)した場合、ベンダがどんな責任を負うのかを解説します。みなさんの感覚からすれば、「保証に違反した以上は、契約違反となり、支払った利用料金の返金や損害賠償の請求、契約の解除ができるのでは?」と思うかもしれませんが、実はそうではありません。結局のところ、SLAになんと規定されているか次第なのです。

GoogleがSLAに違反してもクレジットが発行されるだけ

Google Appsで「サービスクレジット」を受けるには顧客側から申し出ることが必要となっている

 たとえば、前回紹介したGoogle AppsのSLAを見てみましょう。

 ここでは、サービスの各月稼働率が一定の数値で保証されていますが、「GoogleがGoogle Apps SLAを満たしておらず、かつお客様が本Google Apps SLAに基づく義務を満たしている場合、お客様は下記のサービスクレジットを受けることができます」「本Google Apps SLAは、GoogleのGoogle Apps SLA のいかなる不履行に対するお客様の唯一かつ排他的な救済手段となります」と定めています。

 つまり、SLAの保証が下回った場合でも、Googleの責任(ユーザの救済手段)は「サービスクレジット」(=サービス期間終了後に無償で追加されるサービスの日数、または毎月後払いで請求するユーザに対するサービスの日数分に相当する金銭)の発行だけ。利用料金の返金や損害賠償は請求できないということです。 

 しかも、サービスクレジットの発行を受けるためには、「対象となった時点から30日以内に、お客様がGoogleに通知する必要があります。この要件を遵守しなかった場合、サービスクレジットを受ける権利は失効します」と定められており、ユーザ側からGoogleに対して、30日以内に通知をする必要があります。それをしないと、サービスクレジットを受ける権利は無くなるということです。

 「これはけしからん!責任逃れだ」と思うかもしれませんが、サービスクレジットの発行がきちんと約束されているだけでも良心的です。

 というのは、世の中のSLAには「本SLAで規定された数値は、あくまでも当社の努力目標であり、この数値を下回ったとしても、本サービス利用契約における当社の債務不履行とは扱われず、利用料金の返金や損害賠償の支払などの責任は生じません」と定められているものも多いのです。

SLAに違反した場合の責任をSLAに定める

  このように、SLAで一番重要なのは、「保証に違反(保証数値への未達成)した場合、ベンダがどんな責任を負うと規定されているのか」という点です。

 ユーザ側の立場に立つ際、ここは必ずチェックする必要があります。逆に、ベンダ側の立場に立つときは、自社の体力・体制に見合った責任内容にとどめておく必要があります。

 では、ユーザとして、ベンダが定めたSLAに不満がある場合、どう対応すればいいのでしょうか。逆に、ベンダとして、ユーザからSLAの内容に突っ込まれた場合、どう対応すればいいのでしょうか。次回の記事で解説します。

《藤井 総》

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