ITインフラ整備が新ビジネス生む!福岡市内で相次ぎ大手が実証実験 | 東京IT新聞

ITインフラ整備が新ビジネス生む!福岡市内で相次ぎ大手が実証実験

エンタープライズ 行政

国の国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」に指定された福岡市で、IT技術を使った大手企業の実証実験が相次いでいる。このうちNTTは4月14日、全国の自治体では初めて同市と包括連携協定を結んだ。同社は2020年の東京オリンピックを念頭にIT技術を駆使した新ビジネスの確立を目指す。一方の福岡市はフィールドの提供によって創業機運を加速させ、地方創生のけん引役を狙う。

全国最大級の無料Wi-Fi網が新ビジネスを支える

2012年4月から整備中の「Fukuoka City Wi-Fi」は自治体主体では全国最大級の無料Wi-Fi網
 福岡市の国家戦略特区の指定は昨年(2014年)5月。市は産学官民一体の創業支援やニュービジネス育成の方針を打ち出した。これを支える都市インフラの一つが、12年4月から整備中の公衆無線LAN「Fukuoka City Wi-Fi」だ。  外国人観光客の利便性向上や防災・減災が目的で、設置スポットは地下鉄全駅や福岡空港、博多港国際ターミナル、JR駅、デパート、ホテルなど、その数は今年2月現在で76カ所、アクセスポイント(AP)は345にのぼる。自治体主体では全国最大級の無料Wi-Fi網だ。業務はNTTグループのNTTBP(東京都千代田区)に委託している。

NTTグループやJTBと連携し外国人向けアプリ

市とNTTグループ、JTBが連携して提供する外国人観光客向けアプリ「J Guidest fukuoka(Jガイデスト・フクオカ)」
 このWi-Fi網に大手旅行代理店のJTBグループが着目。NTTグループや市と連携し、外国人観光客向けのスマートフォン(スマホ)専用アプリ「J Guidest fukuoka(Jガイデスト・フクオカ)」を開発した。  アプリをダウンロードすると、Fukuoka City Wi-Fiからインターネットに接続できる。  アプリのコンテンツ製作は、外国人が喜びそうな観光地や嗜好に明るいJTBグループが主に担当。福岡市や周辺の名所・旧跡、人気グルメ店、割引クーポンなどを入れた。レジャーチケットを購入して使える電子チケットサービス機能も付けた。  Fukuoka City Wi-Fiは日本語や英語、韓国語、中国語(簡体字、繁体字)の5言語対応で大半の外国人観光客が使うのに困らない。  トライアル期間中は、同Wi-Fiの設置場所を北九州市や柳川市、由布市、嬉野市といった周辺部にも広げ、福岡市に着いた外国人観光客を“追跡”し、観光ルートの設定などの参考にする。

防災面ではWi-Fiとサイネージの組み合わせやビーコン

 外国人観光客の認知度が高いNTTBPのスマホ向け無料アプリ「Japan Connected-free Wi-Fi(ジャパン・コネクテッド・フリーWi-Fi」は、ユーザがアプリを取り込んで登録しておくと、空港や商業施設など全国約10万のAPを使える。  J Guidest fukuokaを取り込んだユーザは、福岡地区のJapan Connected-free Wi-FiのAPエリアに入ると自動接続する仕組みにした。  福岡市広報戦略室の花田絵里・公衆無線LAN推進担当係長は「福岡トライアルのデータはNTTが収集して分析する。分析結果を教えてもらい、外国人観光客が魅力的と思う情報発信に役立てる」と話す。 
福岡市の離島・玄界島で起こった大きな地震から今年でちょうど10年を迎える(ヤフーの特集ページ
 防災での連携も見逃せない。福岡市は地震と縁遠いと思われがちだが、05年3月20日に発生した福岡県西方沖地震では同市西区にある離島・玄界島では住宅の半数が全壊した。  市はこの日を「市民防災の日」と定め、毎年イベントを開く。今年はFukuoka City Wi-Fiと最新の「ウェブベースドサイネージ」を組み合わせたデモンストレーションが披露された。  同サイネージは、通信環境とディスプレイ端末が整えば情報発信できる。デモでは緊急情報をリアルタイムで表示した。  イベント当日は、昨年(2014年)5月に東京ビッグサイトで体験デモがあった小型の近距離電波発信機器「ビーコン(Beacon)」もお目見え。プッシュ通知でスマホ画面に緊急情報や避難所、現在地からの避難経路などを表示した。

「じゃらん観光ガイド」に市の観光情報組み込み

市と「じゃらん観光ガイド」が提携し、ビーコンで観光情報の発信実験を行っている(「ふくおか市政だより」より)
 リクルートグループのリクルートライフスタイルは、ビーコンで大掛かりな実証実験をしている。  今年2月16日から1カ月間、JR博多駅周辺や天神地区にある約400の店頭や店内にスマホ向けクーポンアプリ「ホットペッパーグルメ」を発信するビーコンを設置。スマホユーザがビーコン設置店に近付くと、クーポンをプッシュ通知する。  ユーザが興味を持って実際に来店すると、アプリのウォレット機能の利用を促す二度目のプッシュ通知。代金決済まで終えるとポイントがもらえる仕組みだ。  市は実証実験の終了を待っていたかのようにリクルートライフスタイルと連携。同社の観光情報アプリ「じゃらん観光ガイド(iOS版)」に福岡市の観光情報を組み込み、今月(4月)2日、天神地下街の各出入口や博多座、市観光案内所(博多と天神)、市庁舎1階フロアに配置したビーコンで発信実験を始めた。  アプリをインストールしたスマホユーザが、ビーコンの発信電波を受信すると、プッシュ通知が届いて市の観光ガイドが表示される作り込みだ。この実験は6月末に終了する予定だ。

福岡市が目指す理想の都市像は米シアトル

市はNTTと今月14日に連携協定を結んだ(NTTニュースリリースより)
 市とNTTとの包括連携協定は、一連の連携の延長線上で結ばれた。今月14日、協定の締結式が福岡市庁舎10階であり、高島宗一郎市長とNTTの鵜浦博夫社長が協定書に署名後そろって記者会見した。  鵜浦社長は「地元ベンチャーと海外企業の橋渡しをしたい。自ら手掛けるばかりでなく触媒役も果たす」と地元企業の育成にも言及した。  協定書には、観光や防災のほか福祉や教育の連携も盛られた。教育面では、市立校のうち小中学校でタブレットとデジタル教材を使った授業が浮かんでいる。市企画課は「小学校だけでも150校あるため、全校での実証実験は難しい。これから具体的に詰めていきたい」と話す。  高島市長の口癖は「福岡市の目指す都市像は米国のシアトル市」。米シアトルは、アマゾンやマイクロソフト、スターバックスといったグローバルベンチャー企業発祥の地だ。  「政権の中枢から離れた土地だからこそ、ベンチャー企業が生まれやすい」。そう話す高島市長は、福岡を舞台に実証実験を試みる“第二、第三のJTBやリクルート”を心待ちにしている。 【写真上】包括提携協定書に署名後、協定書を持つ高島宗一郎市長(右)とNTTの鵜浦博夫社長(4月14日) 【参考記事】国内最大級!無料Wi-Fiで国際会議数を2位に押し上げた福岡市の戦略(2014年9月11日)【関連記事】福岡や九州の関連記事はこちらにもあります
《筑紫 次郎》

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