<IT坊主の説話>自分を鍛え、自信を持って人と出逢うことの大切さ | 東京IT新聞

<IT坊主の説話>自分を鍛え、自信を持って人と出逢うことの大切さ

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IT界と仏教界を経験した現役僧侶の“IT坊主”こと牧野豊潤(ほうじゅん)氏がITビジネスで役立つ「説話」を連載。世の中でもっとも新しい業界であるITの世界に、2500年の歴史を持つ仏教の教えは通用するのでしょうか――。今回(第17回)は、「我逢人(がほうじん)」という言葉から、人と人の出逢いの尊(とうと)さや重要性を考えていきましょう。

「ようやく真の師匠に逢えた」という喜びを表す

 我逢人(がほうじん)は「我(われ)、人と逢うなり」、人と人が出逢う尊さを表した言葉です(「出会う」と「出逢う」は、それぞれの表現や解釈もあるようですが、ここでは“出逢う”を使って述べていきます)。

 誰もが、誕生すると親に出逢い、家族に出逢い、やがて出逢いの輪が広がり、人生は出逢いの連続です。

 この我逢人の三文字は、道元禅師(どうげんぜんじ=鎌倉時代の禅僧)が、修行で中国(宋)に渡り、如浄(にょじょう)禅師と対面を果たし、「ようやく真の師匠に逢えた」という喜びを得た様子を、“まのあたり先師をみる、これ人に逢ふなり”と表現した言葉です。

 この場合の出逢いは、人生における師匠とめぐり逢えることができた、何事にも代えられない喜びの出逢いです。このように想う人にめぐり合えることは幸せです。

 如浄禅師は、世俗の権力を徹底的に遠ざけ、世俗的な名誉を求めず、真の坐禅修行を説いた禅者とされています。

出逢いはお互いを成長させ、人生さえ変わる

 出逢いを大切にということを言い表した禅語で一般によく知られているものに、「一期一会(いちごいちえ)」という言葉があります。この場合は、“会”です。

 一期は人の一生涯、一会は一回限りの人との出会いの機会のことで、「今日(きょう)の出会いは人生で一度きりのものであり、お互いに大切にしなければならない」という意味があります。

 この言葉は茶道でも用いられていて、「茶会に臨む際には、その機会は一生に一度のものと心得て、主客ともに互いに誠意を尽くせ」の意があり、お互い真剣勝負の出会いという意味合いになります。

 我逢人の意味するところの出逢いは、以下のように捉えることができます。

 人生は、人が人と出逢うことから始まる。なぜならば、人は自分と違う領域を持っていて出逢いはお互いを成長させてくれる。自分一人で考えて行動するには限界もあり、分からないことがたくさん出てくる。出逢いにより救われることもあり、人生が大きく変化することもある。人との出逢いがすべての始まりであるが、誰と出逢うかではなく、出逢いそのものの尊さや有り難さを想う事である――。

出逢い後を大切にすることがビジネスでの基本姿勢

 どちらも人と人が出逢う事の大切さを表した言葉ですが、期待するところの意味合いは異にします。

 我逢人でいう出逢いは、未知なる自分との出逢いの始まりと捉えることができます。出逢いそのものに期待感と楽しみが含まれています。

 人はそれぞれの考えで、それぞれの人生を生きていて人に出逢う事により世界が広がります。違う価値観を得ることによる成長もあり、どんな人に出逢うかで人生は変わります。そんな未来志向の出逢いです。

 「我れ以外みな我が師也」(吉川英治作「新書太閤記」の一節)という言葉があります。これは、出逢いと学びについて秀吉が実践した心構えの一つで、「・・・秀吉は、接する者から必ず何か一事を学び取るということを忘れない習性を備えていた」と書かれています。

 このように出逢う事によって何かを得ようとする意欲もあり、ポジティブかつ、人との出逢いを楽しみの一つにしていたのでしょう。

 これは、出逢い後の関係を大切にしていけば、新しい出逢いに発展するかもしれない――という、ビジネスにおいての基本姿勢そのものです。

 ビジネスは縁(出逢い)の賜物であることが多々あります。出逢いは、数ではなく質が大切で、さらにコネクションのある出逢いはお互いに安心感が持て、後々に繋がります。

人と人の出逢いは一生続くものとは限らない

 しかしながら、出逢いがあるなら別れもあります。出逢いには、期待、希望、夢などが含まれているもの。出逢った後、いかに絆(きずな)をに作り上げ、持続や継続させるかはお互いの努力が必要です。

 じっと我慢も一つの覚悟であり決断です。しかし、綱(つな)が切れ、気持(き)だけが残っていてもバランスが悪く不安定です。

 不安定な状態を維持する不健康より、新しい縁(出逢い)を見つけるほうが健康な場合もあります。気持ちを切り替え、別れは新しい出逢いの始まりでもあり一つの区切り点という考え方もあります。

 人と人の出逢いは必ずしも一生続くものとは限りませんし、環境が変われば、環境に合わせた必要で新たな人に出逢うようになります。「出逢いが縁なら、別れも縁」です。

 ただし、出逢いの縁には偶然がありますが、別れの場合は自分の意志(縁を切ると言います)次第です。人生無限にあらず一度きり、ポジティブに悔いが無いようにしましょう。

仕事も含め、この世は人間関係で成り立っている

 人との出逢いは、それまで変えられなかった自分を変化させてくれるきっかけになります。誰と出逢うかということより、どんな人と出逢うかで世の中の見方が変わります。

 自分にとって良い人に出逢うか、そうでない人に出逢うかで大きく変わるでしょう。

 出逢ったその時点では良い関係と思っていたのが、時間の経過と共にお互いが期待していた事との乖離(かいり)に気が付いたり、お互いを取り巻く状況変化による事など多々あると思います。

 しかしながら、世の中は、ビジネスもプライベートも出逢いによる人間関係で成り立っています。別れを恐れていたのでは何もできませんし、物事は前に進みません。お互いに、確かな心の眼を持っている事が重要です。

 我逢人や“我れ以外みな我が師也”などと言った言葉の背景には、人を見抜く習性(心の眼)を持っている自信があるからこその言葉と解釈できます。自分を鍛え、自信を持って人と出逢いましょう。合掌

《牧野豊潤(まきの・ほうじゅん)》

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