再定義が進む「パッケージ」の概念、提供者側ではなくユーザが決める | 東京IT新聞

再定義が進む「パッケージ」の概念、提供者側ではなくユーザが決める

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再定義が進む「パッケージ」の概念、提供者側ではなくユーザが決める
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コンピュータリソースを必要な時に必要なだけ利用するという概念は新しいように思えるが、同様の概念である「ユーティリティー・コンピューティング」は1960年代からある。そもそもコンピュータを所有することが普通になったのは、1980年代以降のことだ。近年のクラウドコンピューティング台頭は、過去への揺り戻しともいえる。

必要機能を必要な時に必要なだけ

 なにかを所有することなく、必要な機能を必要なだけ必要な時に利用するというスタイル変化は、他の分野やITの別レイヤーでも進んできた。

 他分野の例でいえば、自動車の「所有」に対し、レンタカーよりも手軽に必要な時に必要なだけ利用できるカーシェアリングサービスの存在などがある。

 こうした文脈は「シェア」のキーワードとともに語られることが多いが、ここで挙げたいのは、ユーザがモノを含めた体験として受け取る「パッケージ」定義の変化だ。

Evernoteと日経電子版の連携

ユーザはますます自分が使っているサービスを意識しなくなっていきそうだ(Evernoteと連携した日経電子版)

 たとえば、Evernote(エバーノート)と日本経済新聞社が昨年11月に資本・業務提携発表の場で明らかにし、今年3月から開始された「コンテキスト」機能の連携がある。

 Evernoteでノートを作成すると、内容に関連の深い日経電子版の記事が画面に表示されるというものだ。

 やや大げさに言えば、従来は効率よく記事を流通させてマネタイズするために“新聞紙”という物理的なパッケージが必要だったものが、ITで記事単位の流通が可能になったことによって実現した。

 逆に日経電子版のサイトでは表示している記事に関連する自分のEvernote上のノートが表示されるが、これは物理的なパッケージの分解にとどまらず、コンテンツとしての「新聞」というパッケージにも変化をもたらしているものだ。

ITによって解体され再び定義

 かつて、Webメディアでブログのトラックバックを受け付け、読者の反応が参照できる仕組みが流行したことがあった。現在の動きが異なるのは連携するコンテンツ間の意味的な軽重が対等であることだ。組み合わせることによって、全体として新たな価値を作り出している。

 これに対し、かつてのWebメディアとトラックバックの場合、ユーザが感じる価値のほぼすべてはWebメディアからもたらされる。

 実際、その後にトラックバック機能を廃止したWebメディアが多いが、それによってコンテンツ価値が下がることはなかった。Evernoteと日経新聞の取り組みは、従来のパッケージがITによって解体され、緩やかな連携で再定義された例といえる。

提供者側が決める時代ではない

 こうした変化はITとは異なる分野でも出てきそうだ。

 航空会社のスカイマークが、タクシー大手の日本交通と連携し、子どもをタクシーで空港まで送迎するサービスなどを検討している。すでに日本航空も同様のサービスを行っており、目新しいものではないが、これもユーザからみれば「子どもを目的に安全に送り届ける」というサービスパッケージの構成要素にすぎない。

 そのほかにも、モノ(デバイス)をネットワーク化する「IoT」は、モノが物理的なパッケージから解放されることで、ゆるやかに再度パッケージ化されることを促す変化といえる。

 マーケティング分野ではすでに言われているように、サービスパッケージの概念は、提供者が決めるものからユーザが決めるものになりそうだ。

《箱田 雅彦》
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