<IT坊主の説話>「開発」は仏教語、未来に向けて奥が深い言葉です | 東京IT新聞

<IT坊主の説話>「開発」は仏教語、未来に向けて奥が深い言葉です

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IT界と仏教界を経験した現役僧侶の“IT坊主”こと牧野豊潤(ほうじゅん)氏がITビジネスで役立つ「説話」を連載。世の中でもっとも新しい業界であるITの世界に、2500年の歴史を持つ仏教の教えは通用するのでしょうか――。今回(第18回)は、IT界でもお馴染みの「開発」という言葉を仏教的な意味合いからその本質を考えていきましょう。

高度経済成長期は、幸福の代名詞として使われた

 「開発」という表現は、古くは「新田開発」などのように人の手が入っていない原野などの未開地を新しく開墾したり、山地などを切り開いて整備を行ったり、天然資源をとり出したり、産業を起こしたりするなどの意味合いがあります。やがて、新たな技術や知識を開いたり、導いたりすることで、公益性があり、かつ生活に役立つようにする行為として使われたのが始まりです。

 明治時代以降には、それがより大々的に、「国土開発・電力開発・産業開発・資源開発・技術開発」などのように重々しく、時には極めて政治的な国家プロジェクトに対して開発という言葉が使われ始め一世を風靡しました。

 戦後の高度経済成長期においては、幸福の代名詞として使用された表現です。

 今日(こんにち)では「○○開発」などのように「開発」と言う文言が付いていれば、新しいものというイメージを感じさせるほど一般的に定着した日常語になっていて、ハード面に限らず、ソフト的な事柄に対しても幅広く使われます。

「かいほつ」と読む仏教語としての意味合いとは

 この開発は仏教用語です。仏教の説く本質を表し「かいほつ」と読みます。

 本来、人間が持っている資質を「開き」「発(ほっ)せしめる(物事が始まる)こと」が開発であるというのがその由来です。

 開は、埋もれているものや閉じているものを掘り起こすこと。発は、隠れていたものなどを表面に出す行為を指しています。

 物理的な行動や行いのみでなく、心理的なことや心の行為も含まれています。行為とは、「それまで自覚していなかったものや事柄が自覚できるようになる心の成長であったり、新たな気づきを得る行いとして意識して向き合い、自ずから開いていくもので、かつ具体的な行動をすること」としています。

 つまり、「人生をより良く、より豊に、より充実して生きる知恵を実現する為の手法(指針をガイドするツール)の一つ」と捉えることができます。

 なお、このような教えや考え方は、時代時代で変化(基本の考え方は踏襲しつつ、時代に即した解釈に変化を加える)し、実践され、進歩し、現代に継承されています。

 開発は、将来に向けて行う目標であり、希望を具現化する行為の一つで、発想や現状に対するイノベーション(古い常識からの脱却)から始まります。

今や“開発”にはITは切れ離せない存在

 このような背景(由来)や歴史を経て、現代においての開発という行為に対する認識は概ね、以下のようなものになります。

(1)森林、荒れ地などを切り開いて人間の生活に役立つようにすること   (2)天然資源を活用して産業を興すこと (3)潜在能力などを引き出し伸ばすこと                 (4)新しいものを考え出し実用化すること

 これらの行為に対する共通認識は、「現状を向上・発展させたり、形を変化させたり、新しいものを創り上げたり、新たな仕組みや技術の研究などと幅広く、社会発展には重要な行為でイノベーションの原動力になる」ということです。

 仏教語の転用解釈で開発は、「自然や熟練者の知識を利用して、より人間に有用なものを生み出す行為」としています。

 これらの認識と意味合いから考えると、開発とは“存在する情報(I:Information)と、人が持つ技術や知識(T:Technology)を活用して人に有用なものを生み出すことで、つなぐ(マネジメントを行なう。ジョイントさせる。知恵を出し実行するなど)役目は人です”という解釈になるでしょう。

 このように今や開発にはITは切れ離せないものです。

 つまり開発とは、人が主導する変化であり、発見や発明を洞察力と融合し発展させ、新たな社会的・経済的価値を生み出す革新(イノベーション)であるという認識が必要です。

 社会に受け入れられ、持続可能なことであるとともに、ポジティブ(良い方向)に向かうことを目標とするものである――という捉え方が一般的な考え方のようです。

 このように見てみると、人は宝であり重要であるという認識はいつの時代においても同じということです。

開発は未来へ向かうための大切な架け橋に

 しかしながら、2012年1月に国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の将来推計人口」では、45年後の2060年には、総人口が8674万人となり、生産年齢人口(15~64歳)については4418万人と推計されています。

 また、経済の中長期の課題を話し合う政府の有識者委員会「選択する未来」は、昨年(2014年)5月に「人口減少の解決が急務だ」と提言する中間報告書をまとめ、このままでは50年後に8000万人台に落ち込む日本の人口を、1億人台で維持するよう目標の設定を求めています。

 大げさな推計だと言う意見もあるようですが、日本が少子高齢化状態にあることは現実です。近い将来には宝である人が少なくなるのです。

 「選択する未来」の将来の人口設定目標値(1億人)通りだったとしても、現状からは減少することになります。

 数々の議論があるなか、「ITの活用で人口減少や高齢化対応に貢献し、地方創生を」という議論も活発化しています。

 人口減少に関る課題では、結婚・出生率減少に対する課題、地域での仕事や人的活用に関する課題および教育のあり方など課題は多々あります。

 特に人に関わることは機微(センシティブ)な問題を含んでいることからも、より本質からの対応が重要です。

 めまぐるしく変化する社会情勢、変化のスピードも速く、何が起きるか分からない世の中ですが、ピンチはチャンスの原点と捉えて前に進む心を持つことも大切です。

 希望あるあした(未来)に向けて、先人や熟練者などからの智慧の継承も新鮮な知恵の活用も大切です。これらの融合による発想が新たな良いアイデアを生むかもしれません。

 最新技術の活用と協力によるマーケティングや研究開発などにより、新たなビジネスモデルが生まれるかもしれません。

 人と人のつながり(ネットワーク)は重要です。単品(個々)ではできなくても、集まれば(複数を組み合わせる)実現できることがまだまだありそうです。開発は未来に向かうための大切な架け橋になります。合掌

《牧野豊潤(まきの・ほうじゅん)》

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