赤字上場のグノシー、無難な滑り出しは市場の信頼回復につながるか | 東京IT新聞

赤字上場のグノシー、無難な滑り出しは市場の信頼回復につながるか

エンタープライズ 経営

先月(4月)28日に東京証券取引所マザーズ市場に株式新規公開(IPO)したキュレーションアプリのグノシー(Gunosy)の株価が堅調だ。公募価格を上回る水準で無難な滑り出しとなっている。株式市場では、上場後に赤字転落の大幅な業績下方修正を発表して株価が下落したゲームアプリのgumi(グミ)など、IPO銘柄に対する不信感が広がりつつあった。株価の行方が心配されていたグノシーの堅調さによって懸念は振り払われるのだろうか。

将来を語る場でも、安定性を語らざるを得ない状況

グノシー(Gunosy)の福島CEO
 「ゲームに比べると、急激に落ち込む可能性は少ない」。  「ユーザの獲得費用が一定であれば、広告宣伝費を投入すれば、広告収入は増える」。  「いったんユーザになるとゲームのように急速に離反することは少ない」。  上場記者会見で、グノシーの福島良典CEOは、同じ趣旨の内容をさまざまな言葉で繰り返し強調。比較的安定した収益が得られることを説明した。IPOに事業計画書でも「将来の収益が予見しやすい」と表記した。  本来は自社の事業内容や将来の戦略を語るはずの場で、福島CEOが業績の安定性について語り続けざるを得なかったのは、直前に上場したgumiの問題があったからだ。

個人投資家の信頼を喪失させてしまったgumi

昨年(2014年)12月、東証一部に上場したgumi(グミ)
 gumiとグノシーは、時価総額の大きいスマホアプリ関連ということで、IPO銘柄好きな個人投資家は、どうしても両者の相関性を思い浮かべがちだ。  また、退任した前共同CEOで投資家の木村新司氏の持ち株比率が現経営陣を大きく上回る4割強であることも憶測を呼び、業績の不安材料となっていた。  昨年12月に上場したgumiは、わずか3カ月後に、2015年4月期の連結営業損益が海外事業の不振で4億円の赤字(従来予想は13億円の黒字)になる見通しだと発表した。  それだけでなく、経営陣は下方修正せざるを得ないことを上場前から察知していたのではないか、との不信感が広がった。  さらには、一部のベンチャーキャピタリストが上場直後から空売りしていたという噂も飛び交った。空売りは株価が下がる局面で儲かる投資手法だ。  このキャピタリストはgumiには投資していなかったが、業績が実際に悪いことは、関係者周辺では織り込み済みだったようだ。  韓国子会社での横領も発覚し、リストラによる人員削減もあった。一般の個人投資家の信頼を喪失させる材料のオンパレードだった。  結果として、gumiの株価は一時、初値(3300円)から61%低い1282円まで下落。時価総額も1000億円程度から400億円前後にまで転げ落ちた。

懸念跳ね返し時価総額は一時400億規模に

上場記念で鐘を鳴らすグノシーの福島CEO(右2人目)ら
 gumiはベンチャーが通常上場するマザーズ市場ではなく、トヨタ自動車やJR東日本などと同じ東証1部に直接上場したことも、「信頼が裏切られた」という感覚でショックを大きくしたようだ。  主幹事証券会社だった野村証券は担当者を処分し、東証を運営する日本取引所グループの斎藤惇CEOは「上場して3カ月で黒字見通しが赤字見通しになるなど経営者としてあり得ない」と批判した。  幸いなことに、グノシーの株価は堅調だ。創薬などバイオテクノロジー関連以外では今どき珍しい赤字状態での新規上場ということで、株式市場からは懸念もあった。  しかし、先月28日に付けた初値は公募価格と同じ1520円。その後、上場後4営業日目の今月(5月)7日には一時、2140円まで買われた。時価総額は400億円規模まで上昇した。7月の決算発表を注目したい。

次に控えるメルカリやスマートニュースの実力

 ベンチャー投資の世界では、時価総額10億ドル(約1200億円)級のベンチャーを、めったに出会えないという意味から「ユニコーン」と呼ぶ。  日本でも今後、フリーマケットアプリのメルカリやニュースキュレーションのスマートニュースなどがこのクラスの上場になるとみられている。その時価総額に見合った実力はあるのか。それともgumiのように“張り子の虎”なのか。  大型銘柄の失速はIPOマーケット全体の崩壊につながりかねない。会社、証券会社、株主であるベンチャーキャピタルなど関係者の真摯な姿勢が求められる。    【関連記事】東大の院生が開発、自分だけの有益ニュース集める「Gunosy」で起業した理由(2013年6月6日)   【参考記事】ニュースキュレーションの競争激化 日経参入に続きOBも起業(2014年10月11日)
《鈴江 貴》

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