“寄り添う支援”で日本一の起業都市を目指す北九州市が積極展開 | 東京IT新聞

“寄り添う支援”で日本一の起業都市を目指す北九州市が積極展開

エンタープライズ 行政

“寄り添う支援”で日本一起業しやすい都市に――。起業支援を積極化している福岡県北九州市は街ぐるみで起業を支援するため、先月(4月)“産官学民金”からなる「スタートアップネットワークの会」を設立した。今月14日には都内で「地方創生で北九州に人の流れをつくる」をテーマに移住促進イベント「北九州スタートアップラウンジTOKYO」を初めて開き、東京や横浜だけでなく、青森からも参加者が現れるなど総勢70名が集まり、九州外でも注目の高さを示した。

魅力を都内で発信、市長が「起業移住」呼びかけ

都内の会場にはベンチャー企業経営者ほかさまざまな業種から約70名が参加しプレゼンテーションに聞き入った
 「YouTube」で再生数800万回を超える人気を集めたトヨタ自動車のインターネットCMがイベントのオープニングを飾った。街を歩くサラリーマンやOLが突然野球を始め、繁華街が野球場となる躍動感あふれる映像は、北九州市小倉の繁華街で実際に撮影されたものだ。  北九州市は映画やドラマのロケ地の誘致活動に積極的で、数多くの作品が同市で撮影されている。市によると、経済効果は2011年の1年間で約3億5000万円に上り、地元活性化に一役買っている。  続くプレゼンテーションでは、北九州市小倉でコワーキングスペース「秘密基地」を運営する岡秀樹氏と、昨年7月に北九州市で起業したフィールド・フロー株式会社の渋谷健社長が、北九州の魅力や同市で事業を興すメリットなどを自身の体験とともに語った。  北橋健治市長も会場に駆けつけ、「北九州市発の海外向け水ビジネスの展開など、新しいことにチャレンジする風土があり、ベンチャー向けの施設や支援制度も整っている。市を挙げて応援していきたい」と述べた。  満場となった会場には、ベンチャー企業の経営者や地元出身のクリエイター、飲食店経営者、金融機関、地方自治体の担当者など、さまざまな業種から約70名が参加した。

「産・官・学・民・金」のゆるやかな会員組織に

「北九州スタートアップネットワークの会」のメンバーには、学生や20代の起業家をはじめ、著名大手企業のほか金融機関8行も名を連ねる
 北九州スタートアップラウンジTOKYOの母体は、市が事務局となって4月に設立された北九州スタートアップネットワークの会だ。  起業したい人と起業経験者や支援者などが交流し、さらには新しいビジネスやサービスを創造する場として期待されている。  会の特徴は、興味があれば誰でも自由に参加できるオープンコミュニティであることだ。  同会事務局となっている北九州市の産業経済局新成長戦略推進室の加茂野秀一室長は、「行政側の思い込みではなく、現場のニーズを取り入れながら起業支援のあるべき姿を追及したかった。そこで、役所と学識経験者を交えた従来型の諮問委員会ではなく、参加者の自主性に任せたゆるやかな運営方式とした」と語る。学生から大企業までフラットな関係で参加できるのは全国でも珍しいという。  現在、会員数は100名を超え、起業志望者やベンチャー経営者、学生、大学職員、金融機関、民間企業では東レやJR西日本、三井物産ほか大企業の担当者など、まさに“産官学民金”が揃う。年代も10~70代と幅広い。

“積極的な受け身型”で行政が寄り添う

北橋健治市長が先頭に立ち「起業しやすい街として市を挙げて応援していきたい」とアピールする
 北九州市の隣には、「創業特区」に指定された福岡市が位置する。コンテンツ産業の振興や「スタートアップカフェ」の運営など起業しやすい都市のイメージが定着しているが、加茂野室長は、「(北九州市は)施設や制度の充実だけでなく、行政が起業者に“寄り添う”スタイルが強み」とアピールする。  たとえば、融資を受けたいが手続きに慣れていない創業者には、市担当者が金融機関に同行する。  北九州市は、自治体としては全国で初めて日本政策金融公庫と組んで起業支援の融資制度を創設した実績があり、金融機関とのつながりも深い。  創業者にとっては、市の後ろ盾によって信用を得やすいメリットもあり、喜ばれているという。

市の仲介で事業化につながった事例も相次ぐ

アロマディレクション(上)とひびくーのWebサイト
 香り(アロマ)を使った空間演出を手掛けるアロマディレクション(同市小倉北区、一刈美穂代表)は、熊本県小国町の「杉」を利用したアロマオイルを同町森林組合と共同開発中だ。  元々は、政府の「環境モデル都市」に選定された北九州市と小国町との連携事業がきっかけで、市担当者を介して小国町の特産品と事業が結びついた。  また、環境配慮型製品やサービスを手掛ける合同会社ひびくー(同小倉北区、松田晋太郎代表)は、自社で開発した省エネ型の新素材「FOLMICS(フォルミック)」を使用し、北九州市門司の伝統工芸品「風師(かざし)人形」を復刻。年内の商品化を目指している。  交流会に参加した市長のアイデアがきっかけとなり、開発に着手したものだ。

行政でも「そこまでできるのか」と羨やむ声

北九州スタートアップネットワークの会のFacebookページ
 このような行政側の一歩踏み込んだサポートについて、「他の自治体、特に大都市では“公平性に欠ける”とか“癒着ではないか”といった批判を受けがちだが、『よくそこまでできますね』と羨ましがられることもある」と加茂野室長は言う。  しかし、人口減少に悩む同市にとっては、雇用を生みだし地元経済の活性化につながる起業支援は必須の課題だ。ネットワークの会を通じて事業拡大に貢献した実績を年間100件程度に増やすことを当面の目標としている。  今後も、東京だけでなく、大阪などでも魅力を発信していくほか、起業に関係する人同士が定期的、継続的に交わる場の提供を積極的に進める計画だ。 【写真上】北九州市産業経済局の加茂野氏(右)、太田知宏戦略推進担当課長、安永真一郎係長は、「北九州市は起業に関わるハード・ソフトの充実のみならず、町ぐるみで起業を応援している」とアピール 【関連記事】北九州からIPO企業を!5つのインキュベーション施設でベンチャー育成に熱(2015年3月12日) 【参考記事】「九州IT事情」特集ページ
《牧 祥子》

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