リクルートが人工知能に本腰、米の世界的権威と何を目指すのか | 東京IT新聞

リクルートが人工知能に本腰、米の世界的権威と何を目指すのか

ソリューション 人工知能

【ITジャーナリスト・湯川鶴章による連載90回目】リクルートが人工知能研究所を開設したと発表した。ネット上では「単なる株価対策ではないか」という意見が散見されたが、実はそんなことはない。人工知能の研究者に「日本で人工知能に最も熱心な企業は」と質問すると、多くの人が「リクルートだ」と答えているのだ。

ゼミの優秀な学生が次々とリクルートへ

リクルートホールディングスが2015年4月15日に発表したプレスリリース
 昨年秋ごろから人工知能に関する取材を続けてきが、取材先の研究者に「日本で人工知能に最も熱心な企業は」と聞くと、多くの人が「リクルート」と答えていた。  人工知能研究で有名なある大学の教員は、ゼミの優秀な学生たちが次々とリクルートに就職していて、「大学と共同研究する必要がないくらい」と話している。  また人工知能の研究者の中でも最も元気のいい若手研究者たちが「全脳アーキテクチャ勉強会」という名前の勉強会を開催しているのだが、その会場として、リクルートがセミナールームを提供している。  それにリクルート社内にいる友人たちからも、人工知能に関する計画の話が、少しは聞こえてきていた。  そこで僕の有料メルマガの中で、リクルートの“野望”についての推測記事を書いた。少し紹介すると、次のようなものだ。

米の求人サイト「Indeed」を子会社化した意味

リクルートグループによる米の求人サイト「Indeed(インディード)」の紹介ページ
 リクルートの峰岸真澄社長は、中長期的な目標として人材領域及び販促領域においてグローバルナンバー1のマッチングプラットフォームになることを掲げた。そのために海外では2010年から積極的なM&Aを続けている。  なかでも子会社化した米国の求人サイト「Indeed(インディード)」は快進撃を続けている。東洋経済オンラインの「リクルートを世界へ導く、テキサスの救世主」という記事によると、米Indeedは、世界55カ国以上28言語で事業を展開しており、約1億5000万人の月間ユニークユーザ数を持つ巨大な求人検索サイトだという。  特に北米では、Indeed経由での採用者数が類似オンラインサービスの中でトップだという。

求職者のマッチング精度を向上させるために

 このIndeedのマッチング能力をさらに向上させるためには、履歴書や求人票以外のデータも必要になってくる。  求職者が今、人生のどのステージ上にあり、どのような嗜好があるのか、などという情報をうまく活用することができれば、より精度の高いマッチングが可能になる。  そうしたビジョンを可能にするためには、膨大なデータと最新の計算式(アルゴリズム)が必要になる。求人事業以外にも各方面のデータを大量に持つリクルートが、株式公開で得た資金をベースにして人工知能という最新鋭のアルゴリズムを手に入れようとしている。組む相手としては最適。  Indeed経営陣はそう判断し、リクルートの傘下に入ったのだろう。

世界的な権威と呼べるレベルの研究者とパイプ強化

米カーネギーメロン大学のTom Mitchell教授による著書『Machine Learning』
 そうした流れのなかで、リクルートは人工知能研究所を設立し、世界の研究所とのパイプを強化した。しかも驚いたことに、今回リクルートがアドバイザーに迎えたのは、世界的な権威と呼べるレベルの研究者ばかり。  米カーネギーメロン大学のTom Mitchell教授は、機械学習の代表的教科書『Machine Learning』の著者で、米大手求人サイトMonster.comの創業者でもある。ほかにも元ワシントン大教授のOren Etzioni氏、コロンビア大のDavid Blei氏などがアドバイザーになっている。  またマサチューセッツ工科大学やスタンフォード大学などの著名教授の下に、リクルートから若手人工知能研究者を送り、共同研究する計画にもなっているようだ。  そしてこのメルマガ記事の最後に僕は、次の疑問を投げかけて記事を締めくくった。  「なぜこれほどの世界的権威が、日本の一企業と組んだのだろうか。米国の研究者たち本人に聞いてみないと分からないかもしれないが」。

真実を確かめるために米国で直接聞いてみる

 この記事を読んだからかどうなのか分からないが、友人を通じてリクルートから僕のところに取材の仕事の依頼が来た。リクルートのアドバイザーとなった研究者たちを英語で取材してほしいという依頼だ。  どうやらその動画を、同社の人工知能研究所の新しくできるWebサイト上で掲載するらしい。人工知能に少しは詳しく、英語のできるライターということで、僕にお声がけいただいたのだろう。まさに願ったりかなったりだ。  実はこうした経緯があって、今、アメリカに出張している。この記事はカーネギーメロン大学近くのホテルの部屋で執筆している。昨日はコロンビア大学のBlei教授を取材した。今日はこれからMitchell教授を取材する予定だ。  リクルートとアドバイザー陣が思い描く未来がどのようなものなのか。探ってみたい。
《湯川 鶴章》

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