業界慣習に一石投じた部屋“探され”サイト「ietty(イエッティ)」の革新性 | 東京IT新聞

業界慣習に一石投じた部屋“探され”サイト「ietty(イエッティ)」の革新性

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業界慣習に一石投じた部屋“探され”サイト「ietty(イエッティ)」の革新性
  • 業界慣習に一石投じた部屋“探され”サイト「ietty(イエッティ)」の革新性

爽やかな青色と愛らしいキャラクターが印象的な賃貸物件専門サイト「ietty(イエッティ)」は、ユーザが希望を書き込むだけで理想の物件を紹介してくれるサービスだ。利用者が極力“ラク”ができる仕組みを通じ、不動産業界を根底から変えるほどの事業とみられている。運営会社である株式会社iettyの小川泰平代表取締役社長の思いを聞いた。

条件さえ入れておけば約100社から物件情報が届く

担当者とはチャットでやり取りするなど「ietty(イエッティ)」はユーザが“ラク”できる仕組みとなっている
 不動産屋をいくつも回って、気になる物件を内見、諸々の手続き……など、なにかと面倒な転居。そんな煩わしさから解放してくれる提案型の部屋探しサービスとして注目を集めている。  iettyは引っ越しを考えるユーザが転居希望地域や家賃価格、内見希望日などを書き込むだけで、同社が提携する約100社の不動産仲介業者からユーザの条件に合った物件を次々に提案してくれる仕組みだ。  物件を紹介してくれる営業担当者とは、サイト内のチャットでやりとりができるため、仕事の合間にも物件を探したり、交渉したりができる。  創業者である小川社長は、自社が展開するこのサービスを「バーチャルカウンターモデル」と呼ぶ。「物件を紹介されたお客さまは、ネット上で不動産屋に来店したのと同じ状況になり、その時点で接客が始まっている。まさに、バーチャル上のカウンターです」。

前職の大手勤務時代に感じた“非効率性”

東京・恵比寿駅前にある本社には相談コーナーも設けている
 ユーザが自ら足を運ぶことなく物件情報が届くietty。そのサービス発想の原点は、同社長の前職と深い関わりがある。  「起業前は住友不動産に勤務しており、入社4年目に配属されたのが、賃貸住宅事業部でした」。  同事業部で自社が所有する賃貸物件の事業企画や広告企画を担当した小川社長は、不動産業界の広告営業に対して、ある非効率さを感じたという。  「不動産の広告営業は、電車のつり革広告や折込チラシなど、いわゆる“バラマキ型”が主流。電車に乗っている人のなかに引っ越す人がいるかもしれないから、とりあえず広告を載せる、という手法。しかも、そこに多額の広告費をつぎ込んでいる」。  同社長が抱えていた不動産業界への違和感は「引っ越しを希望するユーザを一カ所に集める」というシンプルなビジネスモデルに姿を変えて、iettyの原型となった。  入社時から宣言していた通り、5年目の2011年に会社を辞め、翌年にはiettyを立ち上げた小川社長。ビジネスモデルの構築から、独立へ――という“正攻法”で起業への道を歩んでいるように思えるが、起業を志すきっかけになったのは、08年に起きたリーマン・ショックだったという。  「辞めた後の身の振り方は決めておらず、転職も視野に入れていましたが、ちょうどリーマン・ショックが起きて、その道が閉ざされてしまった。そこで『起業するしかない』と思い、iettyを含めていくつかビジネスモデルを作ったのが始まりです」。  ちなみに、小川社長がIT分野での起業を目指して猛勉強を始めたのも、独立を決めてから。時代の流れを見ながら、少しずつ起業の準備を進めている最中も、さまざまな不安が頭をよぎったという。

「コンテストで良い成績だったら起業しよう」

 「儲かるかどうかもわからない事業なうえ、ITがほとんど浸透していない不動産業界でITを使ったビジネスモデルをやるなんて『何言っちゃってんの俺?』みたいな感じでした(笑)。そんなときにベンチャー・キャピタル(VC)主催のコンテストの存在を知り、ここで良い評価をもらえたら起業しようと思いました」。  小川社長は自身が構築した提案型の部屋さがしのビジネスモデルをひっさげ、独立系VCが主催する起業家・投資家合同経営合宿「インキュベイトキャンプ」に参加し、見事優勝。「その場で優勝と出資が決まったのを機に独立の決心がつきました」。

個人にフォーカスした営業スタイルに変化

最近では法人向け「ietty BIZ」を社員への福利厚生として導入する企業が増えている。法人経由だと利用者は仲介料が半額となり、貸主側にとっても企業勤務の安心した人に入居してもらえるメリットがある
 最近では法人向けの福利厚生サービスとして「ietty BIZ」を開始するなど、進化を遂げるietty。その秘訣は、同社が行動指針に掲げる、ユーザファースト(ユーザ第一主義)にある。  「IT企業にしてみれば当然の発想ですが、不動産業界には、業界の慣習にユーザが合わせてもらうという風潮がある。徹底的にユーザ側に立ってサービスを作るよう心がけています」。  現在、好評を得ている利用者と営業担当者とのチャット機能も、サービス開始後のユーザ動向を見ての実装だった。また、物件を紹介する不動産仲介業者の営業マン個人のサービス向上を図る仕組みも構築しているという。  「営業担当者のプロフィルページには、ユーザレビュー(評価)が掲載されています。たとえネガティブなレビューがあっても消しません。もしも、業者さんがietty上で変なことをすれば、悪評が立つシステムになっています」。  1人のユーザに対して、複数の業者が物件を紹介できるiettyでは、営業担当者のレビューやプロフィルが紹介者個人への信頼度に直結するのだ。  「これまで1つの不動産屋に対して1人の消費者という営業形態だったものを、バーチャルカウンターによって1対1の個人にフォーカスした営業スタイルに変化させました。裏を返せば、誠実に仕事をしている人がしっかり成績を上げられるシステムなんです」。

目指すはユーザを一生支える不動産のプロ

ユーザを長期スパンでサポートするサービスを目指している
 近年ではietty経由で入居を決めたユーザを対象に「トータルサポート」と名付けたサービスも展開している。  「不動産屋の営業マンとユーザの接点は引っ越し後に切れることがほとんど。しかし、iettyは転居後も継続してユーザをフォローし、入居中に起きたトラブルの対処や、希望があれば退去時も立ち会います」。  「不動産パートナーとして、ひとりのユーザの一生に関わり続けたいですね。現在は賃貸や売買、リフォームなど、住宅に関する事業は、そのほとんどが細分化されています。ユーザ側からすると、それらすべてひっくるめて不動産事業と捉えているはず。我々も今は賃貸が中心ですが、将来的には1人のユーザが抱える不動産の問題を解決できる相談窓口になれれば、と思っています。学生時代にiettyで賃貸物件を探した人が、結婚して家を購入するときに『またiettyに相談しよう』と言ってもらえると嬉しい」。  これまで、変わることのなかった不動産業界の慣習にさまざまな角度から新風を吹き込むietty。同社が葺いた大きな屋根は、私達の生活を豊かにしていくに違いない。  
小川泰平(おがわ・たいへい) 株式会社ietty(イエッティ) 1984年生まれ、島根県松江市出身。青山学院大学を卒業後、2006年に住友不動産に入社。マンション・ビルの事業用地仕入れや賃貸住宅の広告に携わる。退社後、2012年に株式会社iettyを設立  
《大貫 未来》

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