<IPO専門家が教える>株価が振るわない「上場ゴール」はなぜ起こるか | 東京IT新聞

<IPO専門家が教える>株価が振るわない「上場ゴール」はなぜ起こるか

エンタープライズ 経営

<IPO専門家が教える>株価が振るわない「上場ゴール」はなぜ起こるか
  • <IPO専門家が教える>株価が振るわない「上場ゴール」はなぜ起こるか

企業でのシステム開発者を振り出しに、営業トップや経営者として上場を果たすなど、IT界で多彩な職歴を持つ株式公開コンサルタントの高橋諭氏。ITベンチャー経営者の視点からIPO(株式公開)の苦労とコツを伝授していきます。第10回は株式市場の活況を背景に最近よくささやかれる「上場ゴール」という言葉を考えていきましょう。

上場後の株価が振るわない企業を揶揄した言葉

 本連載では、これまで上場するための条件や上場前の準備・資金調達など、ベンチャー企業経営者が上場を目指す際のポイントについて書いてきました。今回は、上場を実現した後の進め方、特に“株価対策”に関して書くことにします。  最近、一部の新規上場企業の不祥事に関連して“上場ゴール”という言葉をよく耳にします。  上場後に一度も公開価格(公募価格)または公開後の初値を上回ることがない状態を、主に投資家サイドの視点で揶揄(やゆ)した言葉です。  本来、上場というイベントは、企業がより大きな飛躍をするためのワンステップなのですが、“上場ゴール”と言われる企業は上場後の株価が振るわず、そもそも上場時の資金調達だけが目的だったのではと言われているわけです。  初値もしくはそれに近い株価で株を買った人は、今後この企業が成長し株価も高くなるのに違いないと思っていたわけですから、株価が低落の一途では、そのようなことを言いたくなる気持ちも分からなくはありません。

最近の新規上場企業、76%が初値を割り込む

 実際、最近の新規上場企業の上場後の株価推移はどのような状況なのか。上場後、株価が低落傾向の企業は少数なのでしょうか。  ここでは、東京証券取引所の新興市場マザーズに上場して一年経過した企業の傾向を見て行くことにしましょう。  対象を2013年6月以降、2014年5月までの1年間に上場した全企業30社から、重複上場の1社を除く29社とし、初値と一年後の株価(一年後の日の終値)を比較してみました。(別表に企業別の一覧を掲載)  程度の差こそあれ、新規上場した企業の75.9%が初値を割り込んでいます。  株式市場が好調な近年の状況では新規上場企業への期待から高水準の初値が形成されがちですが、多くの企業が1年後にはこの初値水準を維持できていないのが実状です。

株価低迷に一喜一憂せず、長期的な上昇を

  この連載記事のなかでも触れてきたことですが、上場までにはそれぞれの企業にそれぞれの苦労があります。それを突破し晴れて上場を果たすと、一段落という気持ちになり、業績の伸びも鈍くなるというようなことがあるかも知れません。それが株価低迷の一つの原因である場合もあると思います。  私は、上場後の株価が低迷しているからといって一喜一憂することなく、じっくりと腰を据えて事業を推進し、株主には長期的な株価向上によって報いていけば良いと考えています。  実際、上記集計の対象企業のなかで、M&Aキャピタルパートナーズとネクステージの2社は、上場一年後の騰落率こそ、それぞれ69.1%と88.6%でしたが、両社ともその後株価が上昇し、時価総額を増加させて東証一部への“昇格”を果たしています。

株価上昇企業~クロス・マーケティンググループの例

     一方、上表で一年後の株価を150%以上伸ばした企業が5社あります 。これらの企業は上場後のどのような活動が評価されたのでしょうか。  このうちの1社、マーケティングリサーチ事業のクロス・マーケティンググループの上場後の状況を見てみることにしましょう。  同社が上場した後1年間の株価推移は下図の通りで、見事な右肩上がりの推移を示しています。さらにこの期間中、株価上昇にインパクトがあったと推測されるニュースリリースを抜き出し、図中に示しました。  もちろん株価上昇のメカニズムは非常に複雑なので、これらのリリースと株価の関係は定かではありませんが、株価上昇のタイミングとこれらリリースの時期は概ね合致しています。 注目したいのは、この企業が上場後、M&Aや配当実施、そして好業績の決算発表を行っているという事実です。おそらく同社は、上場前にこれら施策の実施を計画しており、入念に上場後の戦略を練っていたのではと思います。

上場の前から上場後の戦略を立てておく必要

 先に「上場後の株価が低迷しているからといって一喜一憂することなく・・・」とは書きましたが、株価が高水準であれば、増資による資金調達や、株式交換による企業買収など、企業に多くのメリットをもたらします。  これから上場を目指す経営者にとっては上場を達成することが最優先で、とても上場後のことを考える余裕がないというケースもあるかもしれません。  しかし、業績の向上とともに、上場前から上場後の施策を準備し上場後は直ちにその施策を実行していくということが望まれるところです。
《高橋 諭》
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