<専門家が本音>人工知能の普及で消える仕事はこの分野と職種 | 東京IT新聞

<専門家が本音>人工知能の普及で消える仕事はこの分野と職種

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<専門家が本音>人工知能の普及で消える仕事はこの分野と職種
  • <専門家が本音>人工知能の普及で消える仕事はこの分野と職種

【ITジャーナリスト・湯川鶴章による連載91回目】人工知能(AI)の可能性をめぐって研究者や起業家、エンジニアなどの専門家の取材を続けている。AIの普及とともに社会はどのように変化するのか。特に人々の仕事はどうなるのという点に触れると、急に言葉を濁す専門家が多い。断言してしまうと、その業種の関係者から反発を受けることが多いからだ。そこでオフレコを条件に話してもらった内容を討論会風にまとめてみた。専門家6人の登場人物はすべて架空だが、内容は実際に口にしたことだ。

弁護士とか医者という仕事がなくなるのでしょうか

A:まったく不要になるということはないでしょうが、今ほど人数はいらなくなるでしょう。 B:そうだね。まずは高給取りの職種から狙われるだろうね(笑)。 C:いや法曹界は弁護士が力を持っているし、医療の世界は医師が政治力を持っている。医師は自分たちを守ろうとするから、まずは看護師の仕事を減らすんじゃないでしょうか。 B:もちろん最初は、看護師の仕事がなくなるだろうし、法律事務所の調査助手の仕事がなくなるだろうね。でもウエアラブル端末で生体データが常にクラウドにアップされる時代になれば、病気になりそうになればアプリがアラートを出してくれるようになると思うよ。スマホで喉の写真を撮って送信すれば、アプリが「風邪です」「咽頭がんの疑いがあります」とか、町医者よりも正確な判断をしてくれるようになる。医療業務の8割は、スマホとウエアラブル端末で代替できるようになると思う。 C:なるほど。弁護士や医師がまったく不要になるという話ではなく、トップレベルの弁護士や医師は残るという話ですね。 B:そう思うね。 A:そうなると、医者余り、弁護士余りの時代が来るんでしょうか。 B:逆に言うと、そうならない限り、このまま高齢化社会が続くと医療費や保険料が高騰して社会は麻痺状態になる。医療費や保険料に悩んでいる人には、いい時代になると思うよ。

手先の器用さが必要な職業って残りますよね

C:いや、残らないでしょうね。ロボットのほうが手先は器用ですから。というより非常に精密な動きができますから。 D:外科手術はロボットに任せるほうがいいようになるでしょうね。 

翻訳や通訳はなくなりますか?

C:何年後か、によりますね。実は翻訳も通訳も文化的な背景を理解していなければならなかったり、一般常識を知っていないといけない。でも一般常識1つひとつ記述してコンピュータに覚えさせる仕事って、簡単なようで非常に大変。参考になるデータがネット上に急増し続けてますし、コンピュータの処理能力も向上し続けてますから、機械翻訳や機械通訳の質は向上し続けるでしょう。でも、どこまでいっても人間の翻訳や通訳にはかなわない、という状況が30年くらいは続くでしょう。 D:でも30年後以降は、人工知能は翻訳や通訳の領域で人間を超える。 C:可能性は高いでしょうね。 

ディープラーニング(深層学習=Deep Learning)のおかげで画像認識の領域が急速に進化していますよね。防犯とか監視業務ってコンピュータに取って代わられるのではないでしょうか

C:画像認識や映像認識の領域は、早い段階で人工知能が入ってくるでしょう。監視業務は、ディープラーニングとか特徴表現を作る技術の得意とするところですからね。何かおかしいとか、なにか異常が起こったということを察知して、対処してくれるようになるでしょうね。 B:監視員や警備員がいなくなる? C:それだけじゃなくて、例えば店舗の店員さんとか飲食店の従業員が暇なときでもいるのは、変なことが起こっていないか見るためにいるんです。上司が部下の前に座っているのもそう。真面目にしているかどうかを見るためにいるわけです。世の中のいろいろな仕事って、実は監視が目的である場合が多い。そういう部分の仕事をコンピュータが行うようになれば、人間はもっと生産性の高い仕事ができるようになります。 D:知り合いのシステムインテグレータの会社の社長から聞いた話なんですが、工事現場の現場監督って、作業員が手抜き作業をしていないか監視することが主な目的だそうです。それで監視の意味と、記録の意味から、工事の様子を撮影できるタイムラプス(早送り)的な撮影の仕組みがないか探しているらしい。それを開発できれば、世界中の工事現場に設置できるので、大きなビジネスになるって言ってました。 C:まさに人工知能にぴったりの仕事ですね。 F:コンビニとかで万引きしそうなヤツは目つきが悪いから分かるとか(笑)。 C:人工知能がどういう理由で警告を出すのか、ディープラーニングを使うとロジックの部分はまったくブラックボックスになるので、そういうことが起こるかもしれませんね。 F:万引きしそうになったら、奥の部屋で会計処理をしていた店員に警告を出すとか、店の扉が閉まって逃げられなくなるとか。過疎地域に無人コンビニができるかもしれないですね。 B:工場の生産ラインは? C:ここにも、監視系業務が結構多いように思いますね。 B:農業は? C:耕うん機が自動走行になり、倉庫から田畑へ自分で行って、自分で勝手に作業して、終われば倉庫に戻ってくる。何か問題が発生すれば、映像認識で人間にアラートを発信する、とかいうようになるでしょうね。 D:お掃除ロボット「ルンバ」の耕うん機版ですね(笑) F:マッサージってよく行くんですけど、下手な人が多い。ロボットのほうが上手になるんじゃないかなあ。 C:二極化するでしょうね。ロボットマッサージ師は、完璧じゃないけど、まあ満足できるレベル。最大のメリットは安さ。一方で人間のマッサージ師は、マッサージは神業に近いけど、高い。ちょうど寿司屋が、回転寿司チェーンと高級寿司店に二極化しているのと同じようなことが、いろいろなサービス業で進むのだと思います。 

8割がた満足できるものをロボット、人工知能が提供するようになるというのが15年先の未来。でもそのあとはすべての領域で、ロボット、人工知能のほうが完璧なものを提供できるようになるわけでしょうか

 
C:すべてではないでしょうね。人工知能は大量のデータが取れない限り賢くならないですから、データが取れない領域は、人間がするしかないと思います。 D:あとは儲からなくてもいいから、楽しい仕事。そこは人間がやり続けるだろうね。投資家や起業家は、儲からない産業には投資しないだろうし。 F:となると、データがたくさん取れる領域、人件費が高い領域、というところに、まずは人工知能が入っていく、ということになりそうですね。 E:ちょっと視点が変わるんですけど、社長さんって給料が高いじゃないですか。なので社長さんこそ人工知能に取って代わってもらったほうがいいんじゃないでしょうか(笑) D:それはその社長がどんな価値が出しているかだろうね。社長にしかできない判断をしているんなら高給をとってもいいだろうし。二代目社長で、だれにでもできるような判断しかしない人なら人工知能に変わってもらったほうがいい(笑)。 C:おもしろい視点ですね。でも中小企業とかって、やっていることが似ているからデータが多い。そうすると実は中小企業のおやじさんがやるより、人工知能の方がいいんじゃないかって話になりますね。大企業になってくるとその業界での判断って、なかなかデータのサンプルがないので、人間がやるしかないでしょうけど。 F:業績が悪くなった企業に銀行が役員を送りつけるじゃないですか。そんな感じで「今期、業績が好転しないと、来期から人工知能に経営を任せますから」と銀行から言われる日がくるかも(笑)。 C:企業間のノウハウの横転移、それも日々の細かな業務などの知識を他業種でも活かす。そういう仕組みを人工知能で作ることに、大きなビジネスチャンスがあるように思いますね。 D:日々の業務を超えた大きな戦略的決断は、人間の仕事として残るでしょうね。データがまったくないところでの判断が必要になりますから。 E:今のIBMの医療用「Watson(ワトソン=IBMが開発した人工知能)」は、診断ごとに確率を表示してくれますよね。この方法で治療すれば成功率90%、この方法なら50%、という感じで。会社の戦略判断で過去データや業界のデータがたくさんある場合は、人工知能が自信いっぱいに戦略を提案してくれるので人工知能に社長業を任せてもいいと思います。でも未曾有の領域に進む場合はデータがない。人工知能も「データが少ないため成功率を算出できません」ということになる。企業経営にはそうした場面が多くあるでしょう。特にこれからは予測不可能な時代に突入すると言われているので。そういう意味で、人間の社長さんの存在価値はあると思いますね。 B:でもマネジャーや中間管理職は不要になりますよね。 C:まあそうでしょうね。
《湯川 鶴章》
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