日経がベンチャーと協業を加速、起業家集団への接近には課題も | 東京IT新聞

日経がベンチャーと協業を加速、起業家集団への接近には課題も

エンタープライズ 市場動向

日本経済新聞社がまたベンチャー企業に出資した。今度はソーシャル求人サービスのウォンテッドリー(東京都港区、仲暁子社長)だ。投資額は約1億円だという。日経は有料ニュースサイト「日経電子版」を活用した収益事業として人材関連事業を位置付ける。これまでもリクルートグループなどと協業しており、ベンチャーとの提携で加速する。

日経専務「コンテンツだけでは成長できない」

ウォンテッドリーの仲社長
 ウォンテッドリーは今月(6月)19日、東京・渋谷で初めての本格的な事業戦略発表会を開催した。ヤフーやサイバーエージェントなどへのAPI(システム間接続)開放と並んで発表されたのは日本経済新聞社との資本・業務提携だった。  仲社長は「エコシステムを広げる強力な助っ人になってくれると期待している」と話した。  ゲストとして参加した、日経の野村裕知専務は「日本経済新聞電子版の有料読者数は43万人と世界屈指の規模だ。ただ、これからの時代はコンテンツだけでは成長できない。テクノロジが不可欠だ。また、他社とコラボレーションすることも重要だ。ウォンテッドリーさんと進めていきたい」などと提携への期待を語った。

イベントレジストやSansanなどへ相次ぎ投資

日経がリクルートと展開する転職サービス
 日経電子版は、転職支援事業でリクルートグループと提携している。広告を入口としてリクルートグループへ読者を送りこんだ際に手数料をもらう。さらに、実際に転職が成立した際には、リクルートグループがクライアント企業から受け取る収入の一部の配分を受けている。  ウォンテッドリーの企業向けサービスは月額固定なので、同様の手法はとれないが、なんらかの連携はいずれスタートするとみられる。  日経のベンチャー投資は加速している。昨年4月にソーシャルチケッティングのイベントレジスト、5月に名刺管理のSansan(サンサン)、今年2月には東京大学発ベンチャーで経済情報データ解析のナウキャストにそれぞれ出資している。米エバーノート(Evernote)にも2000万ドル(約24億円)を出資した。

「STARTUP X」というベンチャーイベントも開く

日経が先月20日に開設した「STARTUP(スタートアップ)X powered by 日経電子版」のWebサイト

 さらに、日経はベンチャーや起業家のコミュニティにも近づいている。

 同社は今月12日に「STARTUP(スタートアップ)X powered by 日経電子版」というイベントを開いた。米有力ベンチャーであるBOXのアーロン・レヴィCEOの講演会だ。

 当日の参加者からは「感動した」「参考になった」と興奮気味に語る声が聞かれた。ベンチャーやベンチャーキャピタルとのネットワークを構築し、協業や投資につなげる考えだ。若い読者を増やす狙いもありそうだ。  ただ、イベント自体は盛り上がったものの、その後に開いた懇親会が“ミソ”をつけた。  まず、懇親会には一部の参加者だけを招待。参加できなかった人々が不満に思うだけでなく、参加者にも不評だったようだ。テーブルの上に並んでいたのは缶ビールやお茶のペットボトル、それに駄菓子だけだったという。  あるベンチャーキャピタリストは「日経さんがベンチャーコミュニティーの現状を知らないことを象徴している」と指摘する。確かに、ベンチャー関連のイベントで、日経の事業担当者と遭遇することはあまりない。

新聞社ならでは?技術力の欠如を嘆く声も

日経電子版はエバーノートと連携している
 次回以降のスタートアップXの前途に関してもさまざまな話が聞こえてくる。  日経側は大物ベンチャー関係者が来日する機会を捉えてイベントの日程を組んでいるようだが、ベンチャー側が旅費や宿泊費の一部負担を求めたところ、難色を示されたという話もある。  新聞社はもともと、取材対象にインタビュー時間をとってもらっても報道の名のもとに費用を支払わない。その延長線上の発想なのかもしれないが、適正なコストも支払わないようでは、ベンチャーとの関係を深めるのもなかなか難しい。  また、日経の技術力の欠如を嘆く声もある。  米エバーノートとの提携では、日経電子版にエバーノートへのクリッピングサービスが実装された。しかし、エバーノートの上級ユーザには不評のようだ。アプリの使い勝手に対する不満も根強い。ベンチャーと付き合うには、大企業側にもベンチャーと対等な技術水準を持つことが求められる。  この先、日経のベンチャー提携戦略は成果を挙げていけるだろうか。 【写真上】日経の野村専務(左)とウォンテッドリーの仲社長
《東京IT新聞 編集部》

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