訪日客向け無料Wi-Fi、全県で統一化を目指す九州は“優等生” | 東京IT新聞

訪日客向け無料Wi-Fi、全県で統一化を目指す九州は“優等生”

エンタープライズ 市場動向

九州経済連合会(九経連)と九州観光推進機構が、九州7県や福岡市、NTTグループなどと連携して、訪日外国人が無料の公衆無線LAN(Wi-Fi)と接続できる「Kyushu_Free_Wi-Fiプロジェクト」に着手した。認証手続きを一度済ませておくと、滞日期間中は再認証手続きが要らなくなるスマートフォン(スマホ)アプリの活用を考えている。

集めたデータを広域観光ルート設定などに生かす

2013年から東北7県で配布されている「ID/パスカード」

 ブロック単位での訪日外国人向けの無料Wi-Fi接続サービスは、国内では既に例がある。

 2013年12月から東北観光推進機構などが新潟を含む東北7県の観光案内所や空港など74カ所で「ID/パスカード」を無料配布。NTT東日本のWi-Fiスポットで2週間無料接続するサービスを提供している。

  九州は、自治体主導で設置したWi-Fiスポットで集めたデータは、九経連情報通信委員会が分析して広域観光ルートの設定などを各県に提言するという。  九州観光推進機構企画部によると、同プロジェクトの柱は2つある。  1つは、共通のスマホアプリから九州7県の観光情報へのアクセスを可能にする。もう1つは、無料Wi-Fiスポットから接続する際の認証方式を共通化し、シームレスWi-Fi網を構築することだ。

福岡市の観光アプリに九州7県の観光コンテンツ追加

福岡市で2011年から行われている「Fukuoka_City_Wi-Fi」
 九州では、アジアとの玄関口・福岡市が2011年4月から、無料Wi-Fi「Fukuoka_City_Wi-Fi」を導入。今年5月現在、地下鉄駅やJR駅、空港、ホテル、デパートなど81カ所のアクセスエリアから無料接続できる。  市は業務をNTTBPに委託、同社の無料Wi-Fi接続アプリ「Japan Connected-free Wi-Fi (略称Japan Wi-Fi)」をスマホに取り込んでおくと、大手コンビニエンスストア3社の店舗をはじめ全国約13万カ所で使える。  NTTグループとJTBグループは昨年10月から今年4月まで、訪日外国人向けに開発した観光アプリを使った実証実験を福岡市と郊外で実施した。この際、Japan Wi-Fiを利用した。  プロジェクトでは、この観光アプリを基盤にして九州7県の観光コンテンツを追加し、多言語(日本語、英語、韓国語、簡体・繁体中国語)で情報提供している。

九州内でシームレスに使えるWi-Fi網を構築へ

一度の認証登録で九州内全域で使えるようにする「Kyushu_Free_Wi-Fiプロジェクト」
 一方、比較的難題とみられるのがシームレスWi-Fi網の構築だ。九経連は7県経由でJapan Wi-Fiアプリが使えるWi-Fi網の整備を計画する。  「この方法だと独自のサーバを持つ必要がない。要るのは共通ステッカーの作製費くらい。安上がりで済む」(九経連産業第三部)という。  半面、このWi-Fi網整備がうまくいかないと、訪日外国人が九州をどう回遊しているか、男性に人気の温泉地はどこか、女性が好きな郷土料理は何か、さらに、それらを国別にみるとどうなのか、といった細かな解析の精度が落ちる。  九経連と九州観光推進機構は先月(6月)5日、Kyushu_Free_Wi-Fiプロジェクトを発表した。この時点で、福岡県は県有11施設に無料Wi-Fiを設置し、9施設が「Japan Wi-Fi」に対応。福岡に次ぎ人口の多い熊本県では、熊本市の観光地など20施設に市と県がJapan Wi-Fiを設置済みだった。  佐賀県は2014年度に、長崎県は11年度にWi-Fi設置の補助制度を創設。佐賀は対象施設を拡大、長崎は新たな補助制度をつくった。  大分県は設置補助の対象を宿泊施設から公共交通・観光施設に広げた。宮崎県は主なホテルや旅館のWi-Fi整備を終え、県有施設9カ所に設置を準備中だった。

意欲的な佐賀の背景にタイ人観光客の急増

全県Wi-Fi化を目指して公開されている「佐賀わいわいWi-Fiマップ」
 このうち長崎は11年度から3年間で整備を進めた。「これから設置するならともかく、既に設置した事業者に切り替えてほしいとは言えない」(観光振興課)と困惑気味。  一方、佐賀は「全県Wi-Fi化」を宣言し、ネット上で「佐賀わいわいWi-Fiマップ」を公開、「整備現状を踏まえつつ県域を越えた整備スキームを検討する」(情報・業務改革課)と意欲的だ。  観光と縁遠かった佐賀が、タイ映画・ドラマの撮影誘致を機にタイ人観光客の人気スポットになっていることも背景にあるとみられる。スマホの多言語対応でもタイ語の追加を希望する。  大分は「統一したWi-Fiにするよう努める」(観光地域振興課)、宮崎は「Wi-Fiの統一は歓迎、可能な限り協力する」(観光推進課)と話す。

鹿児島は独自のスタンス「県内設置が先決」

 これに対し鹿児島県は独自のスタンス。「自治体主導のWi-Fi設置は南九州市と指宿市にとどまっており、県内の設置自治体を増やすのが先決。九州の統一Wi-Fi設置はその次の段階」と同県観光課。「訪日外国人向けWi-Fiは重要」としながらも、「東京オリンピックが開かれる2020年までには国が何らかの対策を打つはず。それを見極めたい」と含みを持たせる。  九経連産業第三部は、統一無料Wi-Fi網を広げるため、「FreeSpot(フリースポット)」を設置する「FREESPOT協議会」と話し合い、認証方式の統一を目指す。「フリースポット」は人気観光地の熊本県阿蘇地方や天草地方で整備されている。

九州は国の「Japan.Free Wi-Fi」の“優等生”

九州経済連合会や九州観光推進機構が入る福岡市の電気ビル共創館

 ともあれ、共通化した無料Wi-Fi網で訪日外国人を“おもてなす”という九州の観光戦略。

 総務省と国交省観光庁が訪日外国人旅行者向けの無料公衆無線LAN環境を周知する共通シンボルマーク「Japan.Free Wi-Fi」の“優等生”ともいえる。

 ただ、プロジェクトは緒に就いたばかり。九州各県での今後の取り組みに注目が集まる。 【写真上】「Kyushu_Free_Wi-Fiプロジェクト」のWebサイト 【関連記事】国内最大級!無料Wi-Fiで国際会議数を2位に押し上げた福岡市の戦略(2014年9月11日) 【参考】九州IT事情の記事一覧
《筑紫 次郎》

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