“身に付ける”から“体に取り込む”「人間のインターネット化」とは | 東京IT新聞

“身に付ける”から“体に取り込む”「人間のインターネット化」とは

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“身に付ける”から“体に取り込む”「人間のインターネット化」とは
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今年(2015年)6月23日から25 日に米サンフランシスコで開催された「オライリー・ソリッドカンファレンス」の基調講演で、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボの伊藤穣一所長が語った話題のひとつが合成生物学の可能性だ。DNAを操作するコストの低下により、さまざまなプレイヤーが参入し、可能性が試されることになる。すでに人体内でセンサとして働き、通信によってその情報を外部に取り出すことができるバクテリアの研究も進んでいるという。いわば「生物のインターネット化」だ。

体内で薬を運ぶことができるロボットも

 こうした世界は先の話だと思うだろうか。しかし、生物のインターネット化は別のアプローチですでに始まっている。  ウェアラブル端末による人体情報のセンシング(計測)は人間を間接的にインターネット化するものだ。多くのヘルスケア関連のサービスは突き詰めるところ、この「人間のインターネット化」が前提となっている。  そして「身につける」を越えて「身体に取り込む」ことができれば、ネットワーク接続されたバクテリアはすぐそこだ。

膨大な医療費の削減に向け米国で期待高まる

 こうした流れは短期的にはメリットをもたらすだろう。  身体情報をウェアラブルで細かに常時ネットワークでモニタし、異変に対してタイムリーに措置を行い続けることができれば、現在のように病気が顕在化してから対処するよりもコストを抑えられる可能性がある。  米国では3.8兆ドル(約470 兆円)にまで膨れ上がった医療費の削減に向け、こうしたヘルスケア分野の取り組みが期待されているという。  一方で、そこまで身体とインターネットが密接に連携するとなると、ネット環境の有無は文字通り死活問題となることも考えられる。  しかし、その点もあまり心配は必要ないかもしれない。国際的非営利組織のISOC(インターネット協会)によれば、現在でも3G ネットワークは地球上の人口の約半分をカバーしており、さらに上昇している。

懸念は人が「哲学的ゾンビ」に変わる危険性

 人間や人間を取り巻く環境のさまざま情報をもとに、各サービスは、ユーザである人間に適切と思われる情報をフィードバックし、人間はそれに従って行動することが今以上に欠かせないものとなっていく。  もし、健康維持に必要な措置を身体に直接施せるようになれば、本人の意思に関係なく効果的な「調整」を、よりタイムリーに行うこともできる。  ただ、それは素晴らしいことのようである一方、少々の不安も感じる。  「哲学的ゾンビ」という言葉がある。「見た目やさまざまな反応は人間と同じでも意識を持たない」という思考上の存在だが、人間のネット化は人間をゆるやかに哲学的ゾンビへ変えてしまう可能性も秘めている。  有用なツールとして人間のネット化を受け入れていくためには、確固とした人間としての意識を持つことが、なによりも求められることなのかもしれない。 【関連記事】IoT/M2M関連の記事はこちら
《箱田 雅彦》
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