<佐賀大発>オプティムが狙う電子「準新刊雑誌」市場の有望性 | 東京IT新聞

<佐賀大発>オプティムが狙う電子「準新刊雑誌」市場の有望性

エンタープライズ 市場動向

佐賀大学発のベンチャーである株式会社オプティム(東京都港区)が2014年10月の株式公開を契機に、これまでのインターネット端末の管理や制御、セキュリティ対策といった主力事業とはやや色合いの異なる電子書籍市場に進出し、ビジネスのウィングを広げている。同社の菅谷俊二社長は、「準新刊本市場の創出」という新たなビジネスモデルを提案、電子書籍市場に一石を投じた。

手を伸ばせばコンピュータがある環境で育つ

オプティムのコンセプトは「ネットを空気に変える」を掲げる
 ベンチャー企業の社風は、創業者の個性や経験に左右されやすいとされる。オプティムも例外ではない。  菅谷社長は神戸市生まれ。工業高校の教員だった父親の影響で、幼いころから手を伸ばせば、そこにコンピュータがあるという環境で育った。  「ネットを空気に変える」という同社のコンセプトは、この生い立ちから生まれたのかも知れない。  小学1年生で子供向けコンピュータを製作。その後も電子機器の工作に親しみ、起業家への夢を膨らませていった。

兵庫から佐賀大へ、この選択が起業への道早める

菅谷社長が進学した佐賀大農学部
 佐賀大では、情報工学部系ではなく農学部を選択した。  「これからはバイオの時代、情報工学は大学で学ぶ必要はないと思った」と菅谷社長。兵庫県立星陵高から佐賀大農学部に進んだが、この進路は珍しくエピソードがある。  合格を信じていた大学の前期日程入試に失敗。後期日程の受験大学を考えていなかったため、大慌てで願書を取り寄せようとした。しかし、どの大学からも願書を取りに来てほしいと言われた。その中で佐賀大だけが宅急便で後期日程の願書を送ってくれた。迷わす受験し合格した。  この大学選択が、起業家への道を速めた。当時、一般学生は大学のインターネットを自由に使えなかった。ところが佐賀大は、情報処理センターを学生に開放し、誰もが自由に使えた。生かさない手はない。  佐賀県内のコンピュータ関連会社でシステム開発のアルバイトをしながらビジネスのノウハウを学び、大学の情報処理センターでシステム開発に取り組んだ。

2000年の「孫正義賞」受賞後にオプティム設立

 2000年3月、有望な起業家発掘と支援を目的にした第1回ビジネスジャパンオープンが開かれた。菅谷氏は、ファイルのダウンロードが終了するまでの待ち時間に動画CMを流すという広告ビジネスを発案し応募した。  全国の応募作381件の中から孫正義賞(特別賞)を受賞。同じ佐賀県内である鳥栖市出身の孫氏から賞状を手渡された。大学3年生だった。

06年から東京本社と佐賀本店の二本社体制に

オプティムの会社案内には起業前後や上場までの道のりをすごろくで模した紹介が掲載されている
 大学4年生の同年6月、佐賀市でオプティムを設立し、翌年10月には東京へ進出した。ビジネスの軸足を広告系からeラーニングに移し、遠隔地の教師と生徒がパソコン画面を共有して授業するシステムを開発し、NTT東日本に提案した。  そこでの課題は、ラーニングよりも遠隔サポートだと知り、遠隔者同士が共有する画面をサポートに応用することを考えた。ユーザとNTT東日本のオペレータが画面を共有し、離れていてもパソコンの操作方法やトラブル解決を助言できるようにした。  これが、ネットデバイスのマネジメントやセキュリテイ対策、ユーザサポートなどを手掛ける「Optim事業」の契機になった。06年9月に佐賀市の本社を東京に移し、東京本社と佐賀本店の“二本社体制”にした。  佐賀本店があるため、佐賀県庁では今でも地元企業という扱いだ。今年2月に佐賀市内で開かれた県庁主催の「ベンチャー交流ネットワーク」の例会に菅谷社長は講師として招かれ、自らの起業体験などを語った。

「パテントリザルト」のランキングで特許資産の規模9位

 オプティムの知名度が急上昇したのは、特許分析会社「パテントリザルト」(東京都江東区)が発表した「2012年情報分野・特許資産規模ランキング」だった。  NTTやマイクロソフトなど国内外の名だたるIT企業が保有する特許資産を質と量から格付けした。  オプティムは特許資産規模で国内外合わせて9位、特許1件当たりの資産規模で国内トップ。当時、オプティムの特許は19件。「ベンチャーを守るのは知的財産権」という菅谷社長の信念に基づき、新技術の開発と特許取得に注力してきた結果でもある。  ただ主力のオプティム事業の性格上、開発製品は相手先ブランド(OEM)での販売が多い。そのためIT業界での知名度に比べると、一般消費者への浸透はこれからだ。  そういう意味で2014年は、大きな転換点になる可能性がある。10月に佐賀県企業では初めて東京証券取引所マザーズ市場に株式を公開。11月には「準新刊雑誌市場」創出という新たなビジネスモデルを掲げて電子書籍市場に進出した。

新刊の1つ前「準新刊雑誌」の市場創出を狙う

オプティムが2014年11月に開始した「タブホ」
 電子書籍の商品名は「タブレット放題(略称タブホ)」。電子雑誌を月極め定額制で販売するが、扱う雑誌は電子書籍で主流の新刊ではない。  新刊の1つ前の「バックナンバー」を“準新刊”とネーミングして、人気週刊誌や月刊誌296冊の原則フルコンテンツを月額500円の定額制で発売した。  電子雑誌の読み放題サービスの大半は新刊だ。ところが、実際に読まれているのは買った雑誌の半分程度にとどまっている。菅谷社長はこの点に着目。出版社の著作権も侵されにくい“準新刊雑誌市場”の創出を目指した。

自社ブランドよりも市場の開拓に注力

 現在、電子雑誌をスマートフォンに最適化した「スマ放題」も商品化。NTT東日本など提携した直売や、九州電力系の九州通信ネットワーク(QTNet)などによる相手先ブランドでの販売、大手コンビニエンスストア「ローソン」などと組んだ販売――といった販路開拓に注力している。  その姿は自社ブランドにこだわった販売よりも、準新刊雑誌市場の開拓に注力しているようにもみえる。  「『タブレット使い放題』サービスの成否が、会社の転換点になるかどうかと考えている。現時点では、そうなれるよう販売拡大に邁進したい」。  菅谷社長の佐賀大の後輩でもある休坂健志・コーポレートプロモーション &マーケティングは、言葉を選びながら販路を模索する。 【写真上】記者団を前にプレゼンテーションする菅谷俊二社長 【関連記事】「九州IT事情」の記事一覧はこちら
《筑紫 次郎》

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