福岡発「mruby」誕生から3年、実用化へ向け県が開発支援に本腰 | 東京IT新聞

福岡発「mruby」誕生から3年、実用化へ向け県が開発支援に本腰

エンタープライズ 市場動向

国産初の国際規格認証のプログラム言語「Ruby(ルビー)」をベースにした福岡発の軽量Ruby(mruby=エム・ルビー)の発表から3年。プログラムの不具合(バグ)を見つけたり、修正を助けたりするデバッガ対応版(安定版)が昨秋に公開され実用化段階に入った。福岡県は先月(7月)23日、県Ruby・コンテンツビジネス振興会議内に「軽量Ruby普及・実用化促進ネットワーク」を設置。国内外のIT企業や製品の一部にコンピュータを使う“ものづくり企業”に対するmrubyの普及・実用化を後押しする一方、mrubyで記述するソフトを組み込む製品開発を支援する。

技術が習得しやすい「mruby」へのニーズ高まる

2012年7月には「福岡県Ruby・コンテンツビジネス振興会議」が設立されている
 mrubyは2010年度から3年間、福岡県が経産省の「地域イノベーション創出研究開発事業」補助金を交付され、Ruby生みの親である、まつもとゆきひろ(松本行弘)氏をはじめ九州工業大の田中和明准教授、福岡CSKなどの協力を得てオープンソースとして開発した。  自動車や家電製品に組み込むソフトのプログラム言語は、約40年前に開発されたC言語が主流だが、技術習得の難しさなどが難点だ。  しかし、「IoT(アイ・オー・ティー、あらゆるものがインターネットにつながる)」の進展や、誰もがものづくりに参加できる“MAKERS(メイカーズ)の時代”が迫り、使用文字数が少なく、mrubyなど技術習得しやすいプログラム言語へのニーズが高まるとされる。  なかでも自動車や医療・ヘルスケア、ロボット、農業などの分野でIoTによる組み込み市場の拡大が予想されるため、福岡県は「mrubyを使って製品開発する地場企業をもっと増やして、新しい雇用創出につなげたい」(新産業振興課)と意欲的だ。

普及・実用化促進ネットワークに110社が参加

「軽量Ruby普及・実用化促進ネットワーク」の設立式には、まつもとゆきひろ氏(左2人目)も駆け付けてトークセッションに参加した
 組み込みシステム技術協会(東京都中央区)が主催する恒例の「組込み総合技術展(ET展2014)」が昨年(2014年)11月に横浜市で開かれた。  福岡県は、同展に参加した国内外の“ものづくり系企業”のうち、会場の状況などから約200社がmrubyに関心があると判断。  一方、Rubyでソフト開発する福岡県の企業は325社。明確な線引きは難しいが、関心を払う側を発注サイド、ソフト開発側を受注サイドとみて、「軽量Ruby普及・実用化促進ネットワーク」への参加を呼び掛けた。今年(2015年)7月末現在、約110社が会員登録し、まずまずの滑り出しとなった。  7月23日には、福岡市内のホテルで設立式を兼ねた記念講演会を開催。福岡県の小川洋知事や経産省の野口聡・前情報処理振興課長(補助金交付時の担当課長)、まつもとゆきひろ氏、田中和明准教授らが顔をそろえた。  mruby普及については、同振興会議内のNPO軽量Rubyフォーラムが、JR博多駅に近い福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センターで原則毎月1回、マイコンボートを用いて4時間ほどの無料体験セミナーを開催。地場企業に技術指導している。

先進メーカーを招いたアイデアソンや電子工作

 今回設置された同ネットワークは、同NPOと連動してmrubyを用いた新しいビジネスを創出するという。今年はmrubyを活用する製品の企画から製作までを体験するイベントを福岡で4回、東京で2回開き、県内企業の提案力と技術力を高める。  福岡の4回は、2回を「アイデアソン(企画)」と「電子工作」の1セットにして開催、先進メーカーを招いてアイデアソンに参加してもらったり、電子工作に素材を提供してもらったりして交流を深める。

公開審査会の上位入賞製品は事業化支援

福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センターのWebサイト
 東京開催は、県内企業の開発事例の発表や展示の場とし、在京企業に製品や技術力をアピール。公開審査会も開いて、上位入賞製品は事業化を支援する。  同県新産業振興課によると、mrubyで記述したソフトを組み込んだ製品で商用化されているのは、老舗インターネットプロバイダーのIIJ(東京都千代田区)が開発したルーターとベンチャー企業「メニーカラーズ」(北九州市)の海温や潮流などを計測するブイの2つ。mruby応用のセンサを使った安価な農業IT化の実証実験や自律移動ロボットの開発などが進んでいる。  記念講演したトヨタ自動車グループのアイシン・コムクルーズ(名古屋市)の鈴村延保・技監は「車とITの融合でソフト開発規模は拡大する。一方で投資額は変わらないか、むしろ厳しくなる。今後、高い生産性のプログラム言語が求めらる」とmrubyの将来性を見通した。 【写真上】NPO法人軽量RubyフォーラムのWebサイト 【関連記事】福岡発のプログラム言語「mruby(エム・ルビー)」産官学挙げて世界へ!(2014年9月1日)
《筑紫 次郎》

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