テレワークで働き方を変える、企業での本格普及を狙い国が本腰 | 東京IT新聞

テレワークで働き方を変える、企業での本格普及を狙い国が本腰

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企業のオフィスとは離れた場所で仕事を行う「テレワーク」の普及に向け、国や企業が取り組みを本格化させている。総務省や厚生労働省、経済産業省、国土交通省など四省は今年(2015年)11月に初めて「テレワーク月間」を設定。有識者や民間企業とともに国民運動として導入の機運を高め、来年中には本格普及を促していきたい考えだ。

オフィスから「離れた場所」で「働く」こと

企業にとってテレワークは得られる効果が多い(日本テレワーク協会の図表より)

 テレワークは「tele=離れた所」と「work=働く」をあわせた造語で、ITを活用して場所や時間にとらわれない働き方を意味する言葉だ。

 自宅で仕事を行う「在宅勤務」はもちろん、近年流行する「ノマドワーク」も含まれる。

 1980年代から90年代にかけて、”バブル経済”を背景とした都心のオフィス不足への対策の意味合いもあり、その概念や仕組み自体は一部企業の間で知られていたが、最近になるまで広く普及するには至ってなかった。  再び注目を浴びたのは2011年。3月に起こった東日本大震災により、東北や首都圏で交通機関が混乱し、福島の原子力発電所の事故で会社への出社が困難になったことが契機だった。  事業継続(BCP)の観点からも真剣に導入を検討する動きが強まった。

多様で柔軟な働き方ができる社会を目指す

国が中心となって初めて設けられた「テレワーク月間」のWebサイト
 さらに、日本中のいたる場所でインターネット回線に接続できる環境が整ったうえ、スマートフォン(スマホ)やタブレット端末といったモバイル機器が浸透していることもテレワークの実現を後押しする。  もう一つ注目を集める理由には、時間や場所にとらわれない働き方を実現できることがある。少子・高齢化による人材不足の懸念を持つ企業にとって、多様な働き方を認めることは、子育てや介護による離職を防ぐことにつながるためだ。  今年6月に安倍晋三政権が新たに閣議決定した「世界最先端IT国家創造宣言」では、テレワークを普及することにより、「若者や女性、高齢者、介護者、障がい者を始めとする個々人の事情や仕事の内容に応じて、クラウドなどのITサービスを活用し、外出先や自宅、さらには山間地域などを含む遠隔地など、場所にとらわれない就業を可能とし、多様で柔軟な働き方が選択できる社会を実現する」との目標を提示する。  そのうえで、2016年までに「本格的な構築・普及を図り、女性の社会進出や、少子高齢化社会における労働力の確保、男性の育児参加、仕事と介護の両立などを促進する」と宣言している。

日本マイクロソフトは全国650社と実践中

日本マイクロソフトは650社とともに8月28日までテレワークを実践中だ
 今年初めて設定された11月の「テレワーク月間」では「働く、が変わる」とのキャッチフレーズを掲げ、専用サイトを設置するとともに、企業での取り組みを紹介していくほか、ロゴマークを配布するなどしてテレワークの認知度を高めていく。加えて、シンポジウムなどの開催も予定している。  こうした国の動きに呼応するように、民間企業側でもテレワーク普及に向けた取り組みを加速させている。  日本マイクロソフトは今月(8月)24日から28日までの5日間を「テレワーク週間」と定め、650社の企業とともに、実戦や普及活動に取り組んでいる最中だ。  同社は過去3年間にわたって大半の社員がテレワークを経験しており、昨年11月には20の自治体や団体、民間企業とともに5日間にわたって集中的に実施。ノウハウが蓄積してきたことから、テレワーク導入を検討する企業にも広く共有していきたい考えだ。

地方創生へ「ふるさとテレワーク」の試み

 一方、安倍政権が進める「地方創生」の取り組みでも、テレワークを活用する動きが広がる。  総務省は、東京の仕事をそのまま地方で続るための「ふるさとテレワーク」の実証実験を北海道のオホーツク地域から沖縄県の竹富島まで、全国15の地域で行う予定でいる。  北海道別海(べっかい)町の取り組みでは、廃校を活用して〝テレワークセンター〟を設置。日本マイクロソフトの社員や家族が別海町に滞在し、首都圏の仕事を離れた場所でも実際に行えるのかどうかを検証する。  福島県会津若松市では、市やアクセンチュアなどが、都市圏の企業が本社から切り出した高付加価値業務をテレワークによって実施可能か否かについて、業務のマッチングシステムを使って検証していく。  群馬県高崎市は、高崎に支社を置く首都圏の企業に対し、「ふるさと勤務」や、里帰り出産後でも在宅型テレワークを導入して勤務することが可能かどうかを実証実験する計画だ。

社内で顔が見えない懸念をどうするか

 一方でテレワークの導入にあたっては、企業や団体などの組織内に心理的な壁があるのも事実だ。顔の見えない場所にいる社員の仕事ぶりをどう評価し、サポートするのかは未知の経験という管理者層も多い。  従来の「フェイス・トゥ・フェイス」の業務スタイルに慣れたビジネスパーソンにとって、インターネットを通じたコミュニケーションに不安を感じるのも当然だ。  生活と仕事の場所が同一化したり、近接化したりすることで安易な休日勤務や長時間労働が起こりかねず、労務面で規則を設けたり、管理体制を強化する必要にも迫られる。  テレワークを実現するためのネット環境やITツールは充実しつつある。今後は、国や民間で先行して取り組んできたノウハウを広く共有したり、支援したりすることで、企業における導入の壁をいかに低くしていくかが重要になりそうだ。
《東京IT新聞 編集部》

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