人と触れ合う「ソーシャルロボット」の時代がやって来る2つの理由 | 東京IT新聞

人と触れ合う「ソーシャルロボット」の時代がやって来る2つの理由

ソリューション ロボット

【ITジャーナリスト・湯川鶴章による連載94回目】ロボットと言えば、これまでは人間の手足の動きをまねるロボットが中心だった。しかしこれからは人間とコミュニケーションを目的とした「ソーシャルロボット」の時代になる。そう考える根拠は、人口知能や音声認識技術が進化していくことだ。

人工知能でロボットの“耳”と“目”が進化した

 1つには人工知能の急速な進化がある。具体的には、「Deep Learning(ディープラーニング=深層学習)」と呼ばれる仕組みが大きな成果を出し始めている。  Deep Learningは人間の脳の仕組みをまねた電子回路を幾層にも重ねることで、人間の認識能力に近い性能を出そうという手法をいう。  2012年にカナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン教授がその手法を3つの分野に応用し、大きな成果を挙げたことで注目を集めた。  3つの分野は「画像認識」「音声認識」「化合物活性予測」で、このうちの画像認識と音声認識は、言うまでもなくロボットの目と耳になる技術だ。  画像認識の領域では、2012年にGoogleの人工知能が猫の画像を自分で認識できるようになったとして話題になったが、その2年後にはGoogleの人工知能は家族写真のようなものなら何が写っているのかを正確に認識できるまでになっている。  音声認識の進化では、Siri(シリ)やGoogleNowのようなスマートフォン(スマホ)に搭載されている音声アシスタントを見れば明らかだ。1~2年前には誤認も多かったが、最近では音声入力をかなり正確にテキストに変換してくれるようになっている。

米アマゾンが自社の音声認識技術を解放した理由

米アマゾンの音声認識技術が搭載されたスピーカー「echo(エコー)」(日本未発売)
 こうした流れのなか、米Amazon.comが音声認識技術をサードパーティー(第三者)に公開すると発表した。この技術を多くのサードパーティーに利用してもらうことで、音声データを数多く集めたいとの思いがある。  Deep Learningが学習するには大量のデータを必要とする。  Googleが猫を認識するためには1000万枚の写真をコンピュータに読み込ませる必要があった。Facebookの顔認識技術は米軍のそれを上回ったと言われる。なぜならFacebooには、米軍が持っているデータセットとは比較にならないほど大量の顔写真が日々投稿されてくるからだ。  同様に、スマホユーザがSiriやGoogle nowなどの音声認識機能を使えば使うほどに、開発元であるAppleとGoogleの人工知能が“賢く”なる。両社とさまざまな領域で競合しているAmazonとしては、人工知能の領域でこれ以上の差をつけられたくない。なので音声認識技術を公開することで、人工知能を賢くしようとしているわけだ。  Deep Learningを使った音声認識技術の“5強”は、Google、Apple、Amazon、Microsoft、Facebookといわれる。  今後競争が激化すれば、よりよい条件でサードパーティーに技術を公開する流れになるのは間違いない。音声認識技術をロボットなどのデバイスに搭載するサードパーティーは増加する一方となるはずだ。

ロボットを利用する領域を絞ぼることが重要

 ここからは私の独断になるが、今後数多くのソーシャルロボットが出てくるなかで、領域を絞ったものが成功するのではないかと考えている。  というのは音声認識の精度が急速に進化したといっても、今日の人工知能があらゆる人とあらゆる会話をできるほど進化しているわけではない。やはり“チンプンカンプン”な受け答えをする。まともな話し相手にはなれていない。  ところが利用するシチュエーションを限定すれば、人間と区別がつかないほどの会話が可能なはずだ。  たとえば会社の受付嬢が行うコミュニケーションは、かなり限定されている。「○○さんとのところに参りました」「ありがとうございます。お約束でしょうか」「はい、2時からの約束です」「了解しました。しばらくお待ちください」。このような会話なら、現在の人工知能でも問題なくできる。  また語彙(い)数や会話の内容が限定される幼児や高齢者相手に限定すれば、やはり十分なコミュニケーションは可能だろう。英会話の学習などに限定しても、相当な練習相手になるのではないかと思う。  人工知能は対話を重ねれば重ねるほどデータが蓄積されて賢くなっていく。特定の領域に特化したロボットがどんどん賢くなれば、その領域のビジネスの勢力図を塗り替えることがあるかもしれない。  ソーシャルロボットがどのような領域に進出してくるのか。注意深く見守りたい。
《湯川 鶴章》

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