<ウェアラブル端末>メガネ型はダメで腕時計型が生き残った理由 | 東京IT新聞

<ウェアラブル端末>メガネ型はダメで腕時計型が生き残った理由

プロダクト ウェアラブル

【ITジャーナリスト箱田雅彦の連載】身につける「ウェアラブルデバイス(端末)」の種類は数多くあるが、まず大きく注目されたのはグーグル・グラスに代表されるメガネ型だった。ARアプリ「セカイカメラ」で知られる井口尊仁氏も一時取り組んだ「テレパシー」など、さまざまなメガネ型ウェアラブルデバイスが発表されたものだ。装着すると一目で未来的な雰囲気を醸し出す見た目は、まさにウェアラブルの“本命”と目されるに十分なインパクトであったと言える。しかし、2015年現在、メガネ型はめっきり見かけなくなってしまった。

“ギーク”な層以外は身に着けたがらない

画期的ではあったが一般層にまで浸透しなかった「グーグルグラス」
 その理由としてはグーグル・グラスなどで搭載されているカメラ機能によるプライバシーに関する懸念や、キラーアプリの不在といった問題もあった。しかし、なにより大きかったのは一部の“ギーク”な層以外は、誰も本当にそれを身につけたいと思わなかったからだと考えられる。  今年2月にMMD研究所が実施した「2015年ウェアラブル端末に関する調査」でもメガネ型デバイスの利用意向は低く、「あまり利用したいと思わない」「利用したいと思わない」が53.3%と半数を超えている。  では、メガネ型とともに注目されていた腕時計型ウェアラブルである「スマートウォッチ」はどうかといえば、これも課題を抱えていた。

デザイン面での取り組みが進む腕時計型

見た目デザイン性に優れた腕時計だが、実はスマートウォッチとなっているソニーの「wena wrist(ウェナ・リスト)」
 そもそも、スマートウォッチが目指していた場所には、すでに従来型の腕時計が居座っている。  「Fitbit(フィットビット)」のようなアームバンド型のヘルスケア製品ならば、まだ見た目的に共存もしやすいが、より“時計然”としたスマートウォッチでは「屋上屋を架す(屋根の上に屋根を作る)」ような印象になってしまう。  しかし、先の調査で腕時計型のウェアラブルデバイスは「あまり利用したいと思わない」「利用したいと思わない」が47.6%となり、かろうじてだが半数を切った。また、「利用したいと思う」「やや利用したいと思う」も27.3%とメガネ型(21.1%)よりも高い支持を得ている。  そして、こうした傾向をより顕著にしそうな動きがスマートウォッチのデザイン面での取り組みだ。  ソニーの「wena wrist」(ウェナ・リスト)は時計の文字盤部分をシチズン時計が手がけ、見た目はデザイン性の高い腕時計そのものだ。  一方でバンド部に内蔵された「おサイフケータイ」の機能やスマートフォンとの連携など、スマートウォッチらしい顔も持つ。  ソニーのクラウドファンディングサイト「First Flight(ファーストフライト)」で目標金額を大幅に超える支援を獲得した。

高いデザイン性と機能性のバランスを統合

8月に発表されたVELDT SERENDIPITYの新モデル「Vesper(ヴェスパー)」
 国産であるVELDT(ヴェルト)のスマホートウォッチ「SERENDIPITY(セレンディピティ)」は腕時計のデザイン性とスマートウォッチの機能性のバランスをさらに高レベルで統合したものだ。  文字盤に円形に配置されたLEDは天気予報やスケジュールと連動し、腕時計らしく簡潔に時間や内容を伝える。小さなテキストディスプレイも内蔵しているが、腕時計の雰囲気を壊すことなく配置されている。  ほかにもインテルやグーグルと協力して今年11月にスマートウォッチを発売すると報じられた高級時計メーカーのタグ・ホイヤーの例など、従来の腕時計の文脈から発想できるプレイヤーの動きが目立つ。

従来型の腕時計メーカー参入が功を奏す

アナログの文字盤に隠されたLEDライトと小型ディスプレイで、iPhoneからの情報を直感的に通知
 これらは、メガネ型のように「未来的であること」をむやみに追うことなく、従来型の腕時計が「なぜ」選ばれてきたかという原点に立ち返った真っ当な進化といえる。  「リーダー論」で知られる米国のコンサルタント、サイモン・シネック氏が提唱する「ゴールデンサークル」という考え方のフレームワークでは、誰かに行動を促したければ、「Why(なぜそれをやるのか)」を最初に伝えるべきだという。次に「How(どのようにそれをやるのか)」、最後に具体的な「What(なにをするか)」という順番だ。  メガネ型は目の前に設置された「スカウター(漫画「ドラゴンボール」に出てくる眼鏡型の計測装置)」のような小さなディスプレイやカメラなど、「What(何を)」が先行し、なぜ(why)それが存在すべきなのかが曖昧なままだった。  腕時計型も「小さなディスプレイを搭載して……」と同じ轍を踏みそうになったが、踏みとどまった。腕時計の「Why」を知り尽くした従来型の腕時計メーカーが参入したことも功を奏したといえそうだ。  しかし、これらのウェアラブルデバイスは認知度が55.6%に対して実際の利用率はわずか6.6%と、まだまだ黎明期にある。従来の腕時計の「Why」だけでは対応できない新たなユーザも出てくるなか、界隈のにぎやかさとは裏腹に、定着するまでにはまだ時間がかかりそうだ。
《箱田 雅彦》

特集

page top