痛みと悩み多き「マイナンバー」、今は明確な国民メリット打ち出せず | 東京IT新聞

痛みと悩み多き「マイナンバー」、今は明確な国民メリット打ち出せず

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全国民に対する「マイナンバー」の通知を来月下旬に控えるなか〝国民総背番号〟と呼べる制度に対する認知は少しずつ進んできたものの、情報漏洩などに対する不安を持つ層は依然として多い。一方で従業員のマイナンバーを収集管理する業務が突如舞い込む形となった企業側にも、責務の大きさと未知の業務対応に頭を悩ませる。国民も企業も〝痛み〟を超えた先にどんなメリットが得られるのか。

銀行口座と紐づける個人資産を把握する構想も

政府が作成したチラシには著名人を起用するなど、マイナンバーの浸透に躍起だ

 来月、下旬から11月の末にかけ、国内に住民票を持つ1億2000万超におよぶすべての人に「123456789012」といった12ケタの数字が記された書類が届けられる。

 また、すべての企業(法人)に対しても「法人番号」という13ケタの数字が告知されることになっている。

 これが全国民と企業を12~13ケタの番号によって、国や行政機関が集中管理しやすくしようというマイナンバーと呼ばれるものだ。  個人の場合は、行政機関により「社会保障、税、災害対策の分野で保有する個人情報とマイナンバーとを紐づけて効率的に情報の管理」(内閣官房)される。  マイナンバーの導入によって行政側は、一部国民が納税を逃れたり、生活保護などに代表される行政サービスを不正受給するといった“不公正な行為”を摘発しやすくなるメリットがある。  将来的には、個人や法人の銀行口座などとマイナンバーを紐づける構想もあり、そうなれば行政が詳細な資産状況を把握することも可能となり、より厳格な徴税が行える。  また、従業員5人以上の企業が強制加入し、従業員と折半して負担する義務がある「厚生年金保険」では、これを回避しているような企業をマイナンバーによってあぶり出すことも今以上に容易となってくる。

番号を漏えした企業には罰則も設ける

マイナンバーに対応するうえで企業側の負担は大きい(政府広報資料より)
 一方、マイナンバーを強制的に付与された側の国民は、その12ケタの番号を守るという義務が生じる。  国では「番号は一生変更されませんので、マイナンバーはぜひ大切にしてください。法律や条例で決められている社会保障、税、災害対策の手続きで行政機関や勤務先などに提示する以外は、むやみにマイナンバーを他人に教えないようにしてください」といい、個人の責任で守ることを求めている。  個人だけでなく、この数字を“死守”しなければならないのは企業も同じ。社員と扶養家族の源泉徴収票や社会保険の手続きを代行する際に、マイナンバーを記載しなければならないからだ。  国は企業規模の大小を問わず、マイナンバーを適切に収集・管理するように求め、漏洩した場合には最大で「4年以下の懲役または200万円以下の罰金」とする罰則も設けた。

2017年以降に社会保障や税の手続きが簡素化

 個人と企業に重要な番号を守り管理するという新たな義務を背負わせることになるマイナンバー。行政側にとってメリットは大きいが、個人や企業に“特典”はあるのだろうか。  その1つとして挙げられるのは、行政手続きの際に番号を提示することで簡素化される可能性が高いことだ。  国の予定では2年後の「平成29(2017)年1月から国の行政機関など、平成29年7月から地方公共団体で情報連携が始まり、社会保障や税、災害対策の手続で住民票の写しなどの添付が不要になります」としている。

「個人番号カード」は強力な公的証明に

 もう1つ、メリットとなりうるのが、マイナンバーが民間企業に開放された際、個人認証の作業が容易となることだ。  来年1月以降、顔写真とともに申請すると行政から無料で交付されるICチップ入りの「個人番号カード」は、免許証や保険証とともに国が“お墨付き”を与える強力な公的証明書となる。  民間企業がマイナンバー情報にアクセスできるようになると、通信販売の際やポイントカード、口座開設などの際にも個人番号カードが活用できるとみられる。  また、2年後をメドに健康保険証と個人番号カードの融合も検討されており、そうなれば医療サービス利用時の手続きも簡素化されそうだ。

企業の約7割が「メリットない」と回答した現実

国は「これだけは知っていていただきたい事」と題した“紙芝居”まで作成している
 一方で内閣府が全国の20歳以上の男女1773人に7月から8月にかけて行った調査では、マイナンバー制度への知名度は向上していたものの懸念が増えたことが浮き彫りになった。  特に「個人情報が漏えいすることにより、プライバシーが侵害されるおそれがある」(35%=2%増)と「マイナンバーや個人情報の不正利用により、被害にあうおそれがある」(38%=6%増)との声が今年1月の調査時より増加しており、さらに制度に対しても「特に期待することはない」(31%)との回答が8%増えた。  東京商工リサーチが先月発表した全国5000社弱へのアンケート調査では、66%もの企業が制度に対して「メリットがない」と回答しており、企業の側はよりシビアな見方だ。  企業側にはメリットがないだけでなく「情報漏洩リスクの不安」(53%)や「業務の煩雑化」(15%)、「業務量の増加」(12%)といった悩みまで増やしている。

国はマイナンバーで便利になる未来像を示す必要

 今月から行われている5年に一度の「国勢調査」では、インターネット回答を可能としたことで回収や集計のコスト削減が期待できるように、行政コストの効率化にマイナンバー制度が果たす役割は大きい。  ただ、日本年金機構が個人情報を大量に流出させた事件が発生したように、自らのセキュリティ対策が甘いなかで、国民や企業だけにマイナンバーの厳重な管理を求めている現状では、理解が深まらず、不安ばかりが大きくなるのは当然といえる。  国は制度によって監視面を強化するだけでなく、国民の利便性がいかに高まるかを明示する必要がありそうだ。
《東京IT新聞 編集部》

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