巣箱の様子をセンサで知らせる「養蜂IT」を開発、アドダイスの伊東社長 | 東京IT新聞

巣箱の様子をセンサで知らせる「養蜂IT」を開発、アドダイスの伊東社長

コンシューマー サービス

ミツバチが集めた花の蜜を収穫し、私たちの食卓にハチミツを届ける養蜂(ようほう)家。その多くが手作業でおこなわれる養蜂の仕事に、IT技術を取り入れたのが養蜂家向けサービス「Bee Sensing(ビーセンシング)」だ。蜂の巣箱内にセンサーを設置し、管理アプリとつなぐことで、養蜂に関わるさまざまな問題を解決できるという。養蜂家とともに技術開発を進める株式会社アドダイス(東京都台東区)の伊東大輔社長に話を聞いた。

ミツバチの巣箱と養蜂家を結ぶ「Bee Sensing」

「Bee Sensing(ビーセンシング)」の紹介サイト
 白い防護服を着て蜂の世話をする姿が印象的な養蜂家。年間を通して多くの巣箱を管理し、さまざまな環境に応じて蜂を育てる養蜂業に、ITの技術を取り入れたBee Sensing(ビーセンシング)が注目を集めている。  その仕組みは、蜂の巣箱に温度と湿度を感知するセンサーを設置し、巣内部のデータをクラウド上のサーバに記録。何か異常が発生すれば人工知能(AI)が感知し、養蜂家のスマホアプリにアラートを飛ばし、その対処法を教えるものだ。  ほかにも、エサやりなどの実作業の進行管理や、消費者に生産者情報を伝えるトレーサビリティ(生産元の追跡)システムなど、さまざまな機能が搭載されている。

自宅から遠い場所にある養蜂場監視をサポート

 縁遠いと思われていた養蜂業とITをつなげたのがアドダイスの伊東大輔社長だ。  「養蜂家の多くは、自宅から離れた遠隔地に養蜂場を持っています。なかには本州に住みながら四国で養蜂している人もおり、巣箱の見回りには時間とコストがかかりすぎる。そこで弊社がつちかってきたIoT技術をベースに開発したのがBee Sensingです」。  ハチミツの味を決めるのは花の種類や、蜜源と呼ばれる周囲の環境だ。たとえば、アカシアのハチミツを作るならアカシアがたくさん咲いている場所に養蜂場を設けるなどの必要があり、必然的に遠方に設置することになる。  「遠隔地の養蜂場に台風が直撃すれば、現地に行って確認しなければなりませんでした。しかし、Bee Sensingを導入すれば、自宅にいながらスマホアプリで巣箱の温度や湿度を確認し、蜂の"健康状態"さえも判断できるようになります。それだけでも、大幅なコストの削減と時間の短縮が可能です」。

後継者不足の課題を解消する可能性を秘めた養蜂

ハチの巣箱の中にBee Sensingを設置することで巣箱の様子が遠隔で確認できる
 同システムが生まれるきっかけとなったのは、開発プロジェクトのリーダーであり、伊東社長の友人である松原秀樹さんの養蜂家デビューだった。  「松原から『養蜂にITのシステムを導入したい』という相談を受けたことがはじまりです。それからは、システムを作るにあたって玉川大学にあるミツバチ科学研究センターの先生に相談したり、養蜂場に足を運んだりしています」。  「ITビジネスはクライアントの世界観や知識に関してクライアント以上に詳しくなければ、サービスを作ることはできない」と語る伊東社長。養蜂を学んでいくうちに、今ではその魅力にどっぷりハマっているという。  「蜂の生態もおもしろいですが、とくに興味深いのは、高齢化や過疎が進んでいるような地こそ、養蜂に向いている点です。豊かな自然が残る里山で採れた花蜜には付加価値がつきます。その土地で養蜂が盛んになれば、ひとつの産業にすることもできるんです。こうした面も養蜂の魅力ですね」。  また、初期投資が数百万円で抑えられる養蜂は、初心者にとってもチャレンジしやすい農業でもあるという。  「代表の松原はIBMの営業マンから養蜂家に転身したのですが、彼のように農業に新規参入する人を増やしたいという想いがあります。システムを活用することで熟練者の技術を共有し、人と人をつなげることで、新しい知識の習得が容易になるはず」。  農業のが抱える問題を養蜂が解決する、そんな未来が来るかもしれない。その一端を担うBee Sensingは、年内でベータテストを終えて来年から事業として本格始動する予定だ。

時代に先駆けて開発に没頭し続けた日々

アドダイスのWebサイト
 蜂を育てんとばかりにBee Sensingの開発に取り組むアドダイスだが、同社はIT技術を扱うベンチャー企業。設立は2005年だが、1999年にはその前身となる会社を立ち上げている。  「私が大学の情報通信ゼミで電子商取引・電子マネーの研究をしていた頃、米国の『ARPANET(アーパネット)』というパケット通信技術が開放されました。それをきっかけにインターネットの世界に可能性を感じ、卒業と同時に『バイリンガルネットニュース』というeラーニングサイトを立ち上げたんです」。  今でこそeラーニングサイトは普及しているが、当時は90年代後半。「さすがに早すぎたんですよね」と認知度の低さや通信インフラの弱さなどの問題が山積みだったという。  それから7年後には事業を売却し、心機一転。モバイルアプリ開発事業を軸にしたアドダイスを設立した。  「立ち上げてからも5年間は都内で家賃1万円の風呂なしアパートに住み、開発に没頭しながらもがき続けていました。そんな時期でしたが、大家さんやほかの店子の方がとてもよくしてくれたのが思い出深いです」。  周囲に支えられながら、日夜開発に明け暮れた彼らが、最初に作り上げたのが「ad-flu(アドフルー)」という販促ツールだった。  これは、飲食店や雑貨店などのWebサイトとFacebookなどのSNSを一元管理できる集客用システムとしては日本初のものだった。同ツールの実用化をきっかけに、先駆的技術の開発能力が認められトヨタグループなどの名だたる大企業との取引きが始まったという。

第一次産業を盛り上げるサービスを作る

 現在は、秋葉原の電気街の近くにオフィスを構え、スタッフとともにアプリ開発からAI技術の向上や新規事業の開拓に尽力している。が、その当時からIoT時代の到来を予見するSoLoMoNというコンセプトを提唱し開発を続けていたのがSoLoMoNデバイスだ。センサーが生えた筐体を管理対象に取り付けるだけで既存事業をIoT化できる。  用途は広いが、なかでも注目を集めているのがBee Sensingで、広島県の産業振興課からも支持を得ている期待のサービスだ。  「大企業が提供するシステムは実際の農家には高価すぎるものが多い。Bee Sensingはプロの養蜂家が実際に関わっていることもあり、値段はもとより、農家によりそった現実的なサービスが提供できます。農業に興味のある若い人たちが参入でき、第一次産業を盛り上げるためにアドダイスの技術を使ってほしい」。  養蜂家とIT企業が手を取り合って開発されたBee Sensing。その可能性は、ミツバチが丁寧に巣を形成していくように、これからも着実に広がりつづけることだろう。 
伊東大輔(いとう・だいすけ) 株式会社アドダイス代表取締役 東京大学法学部を卒業後、eラーニングサイトを運営するバイリンガルネットニュースを立ち上げる。2005年にモバイルをアプリの開発を手がけるアドダイスを設立し、現在に至る
《大貫 未来》

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