<IT坊主の説話>900年前の教え、4つの戒めはビジネスでも役立つ | 東京IT新聞

<IT坊主の説話>900年前の教え、4つの戒めはビジネスでも役立つ

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IT界と仏教界を経験した現役僧侶の"IT坊主"こと牧野豊潤(ほうじゅん)氏がITビジネスで役立つ「説話」を連載。世の中でもっとも新しい業界であるITの世界に、2500年の歴史を持つ仏教の教えは通用するのでしょうか――。今回(第23回)は、「法演の四戒(ほうえんのしかい)」という4つの戒(いましめ)について、ビジネスにあてはめながら考えていきましょう。

新しく管理者になる部下への教育を説いたもの

 中国宋の時代、禅宗の高僧「法演和尚(ほうえんおしょう、~1104年)」の弟子の一人が、ある寺を任されることになった時、師匠である法演が与えた四戒を、「法演の四戒(ほうえんのしかい)」と言います。 
  1. 勢不可使尽:勢い、使い尽(つ)くすべからず
  2. 福不可受尽:福、受け尽(つ)くすべからず
  3. 規矩不可行尽:規矩(きく)、行ない尽(つ)くすべからず
  4. 好語不可説尽:好語(こうご)、説き尽(つ)くすべからず
  これらは、“戒(かい)”ですから、師匠(上司)が新しく管理者になる部下への教育(「戒(いましめ)」)です。  それぞれの時代により捉え方があるでしょうが、現代表現と解釈は次のようになるでしょう。 

戒その(1):勢いだけではなく謙虚さを持つこと

【勢不可使尽(いきおい・つかいつくす・べからず)】  “勢い”は大切です。勢いを掴むことも勢いに乗ることも大切です。やる気の無いところには何も育ちません。勢いのあるところに人は寄ってきます。これが現実です。  しかし、勢いは時として、相手を支配する力(権勢、威力)になったりもします。自分の勢いは自分で得た力だと勝手に思って、傲慢な振る舞いや行動をとると周囲の反発を招き、いずれ禍(わざわい)を招くことにもなります。「多くの人の支えのおかげ」と受け止める謙虚さも必要です。  勢いは、時勢(じせい)とも言い時(今)の勢いです。先が保障されたものではありません。たとえコツコツと努力をして立場や地位を得たにしても、自分が頑張ったからだ、自分には能力がある、だからこの会社(組織)は上手くいっているのだ――などと思っていたとすると、気がついたときには誰も居なかったということになりかねません。  お客様や周りのお蔭と思う心が大切です。勘違いで有頂天になっているとどんなしっぺ返しがあるかもわかりません。  「調子に乗っていい気(傲慢)になるな!」という戒めです。

戒その(2):幸せは他人にもおすそ分けを

【福不可受尽(ふく・うけつくす・べからず)】  “福”は、幸福、幸せ、いいことなどなど、誰もがほしい(手に入れたい)と想っています。眼に見えるもの、眼には見えないこと、身体で・心で感じること、過去のこと、現在のこと、あした(未来)を想うことなど、人それぞれです。  しかしこれらを全て、自分一人で受けつくすのではなく、「少しでも人様にお分けする心を持つべし」。  そういった心を持たない生活を送っていたら、いずれ孤立しますよ。という厳しい教えです。  ビジネスでも同じことです。受注した仕事は自分の力で獲得したもの、手に入れた情報は自分のもの、地道な活動や情報発信も行わないで成績も情報もほしい――、こんなご都合主義では、“福”は早々に退散することでしょう。  「自分の得ばかり求めすぎるのもいい加減にしろ。いずれ『縁必孤(えん かなわず・こなり)』のごとく、必ず孤独になることを覚悟すべし!」という戒めです。 

戒その(3):ルールばかりに縛られるな!

【規矩不可行尽(きく・おこないつくす・べからず)】  「規矩(きく)」とは基準(マニュアルなど)のことです。組織(企業など)ではルール無くして人は動かせません。  しかし、厳格に決めて、その通りに実行するとなると人は規則に縛られ息苦しくなり、ストレスを感じたり、規則さえ守っていればいいだろうなどと思うことにもなります。  「うちの会社は、こういう規則(ルール)になっていますから」なんていう顧客対応をしていませんでしょうか。相手に失礼というばかりでなく、規則で縛りつけすぎると、伸び伸びと育たず、仕事のやる気度も低下します。  自分で考えることもしなくなり、臨機応変に考え対応するという意欲もなくなります。悪い評判が立つとお客様は来なくなるでしょう。  ルールは、時代や場所によっても異なります。人を活かすには、一人ひとりの個性を見て、組織に合ったものに変化させていくことも必要であり、企業存続の原点です。それがリ-ダーに求められる素質の一つです。ましてや、リーダー(トップ)自ら法を犯すなんていうことは以ての外です。  「ルールばかりに縛られるな。時代や社会の変化、人の感情の揺れ動きも見逃すな!」という戒めです。

戒その(4):美辞麗句だけでは伝わらない

【好語不可説尽(こうご・ときつくす ・べからず)】  禅の教えは「実践主義」です。好語とは、良い言葉とか教えという意味ですが、詳細に説明しすぎると、聴いた人が簡単にわかったような気になり、本来の深い意味や重みが感じられなくなることがあります。  また、実践の伴わない言葉だけで説明しても効果は疑問です。大切なことは、自身が経験(体験、苦労など)したことや自分が心から思っていることを謙虚な姿勢で伝えることで大きな効果を生むことになるはずです。  しかし、言葉には限界があり、言葉だけでは伝えられないことがあります。足らないことは後姿(うしろすがた)を見せたり、実践で教えたりすることです。飾り繕った言葉だけでは人の心は掴めません。いずれ綻びが出ます。  「言葉は質と量とタイミングおよび限界を知るべき。美辞麗句は並べればいいものではない!」という戒めです。

昔から、人と人との繋がりが信頼関係を育てる

 勢いのある企業や人のところに人は寄って来るのは自然の流れです。  人間、上に立つと肩書きがそうさせているということを忘れ、往々にして自分の力だという錯覚を持つことがあります。  実力以上のことができたり、評価されたりすることもあります。「マニュアル通りに行っていればいいだろう」と思って、改善も進歩も無い状態に甘んじていては、いずれ顧客からも周りからも見放されることにもなります。取り繕いもいい訳もいずれ綻びます。  肩書きが消えると、当然のごとく誰も寄ってこないばかりか去って行きます。  「勘違いの『福』も同時に飛んでいく。大した内容でもない話でもお付き合いで聞いてくれていた人も居なくなる。一度勢いが失せて、あー勘違いと思っても時は既に遅い」。  お互い信頼して背中を見てくれていた人との付き合いは末永く続きます。信頼のある深いファンデーションの構築が大切です。人と人との繋がりが信頼関係を育てます。これが約900年前からの教えです。合掌
《牧野豊潤(まきの・ほうじゅん)》

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