地方創生の成功にはITが不可欠、政府が「IT利活用促進プラン」を発表 | 東京IT新聞

地方創生の成功にはITが不可欠、政府が「IT利活用促進プラン」を発表

エンタープライズ 行政

「地方創生」の成功にはITの力が不可欠――。政府は今年(2015年)6月末に地方創生へ向けた「地方創生IT利活用促進プラン」を発表した。地方自治体や地元企業が地域の課題解決や経済振興を行う際に、ITを活用した取り組みをどのように進めていくかの指針を示すとともに、国の支援体制をまとめている。地方を活性化するためには、ITの力が必要不可欠であるとの共通認識が深まりそうだ。

ネット業界に近い有識者が議論

政府のIT総合戦略本部が2015年6月30日に発表した「地方創生IT利活用促進プラン」、PDFファイルはこちら
 2015年6月30日に発表された「地方創生IT利活用促進プラン」は、首相官邸の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)が策定したものだ。  今年1月、政府のIT総合戦略本部内に「地方創生IT利活用推進会議」が設けられ、東京大学大学院の坂村健教授や慶應義塾の國領二郎常任理事、福岡市の高島宗一郎市長、NPO法人「CANVAS」の石戸奈々子理事長ら12氏が構成員として議論に参加している。  ほかにも、公立はこだて未来大学の中島秀之学長を主査に、慶應義塾大学の夏野剛特別招聘教授やサイボウズの青野慶久社長ら九氏による「政策企画ワーキンググループ」が設けられ、プランに盛り込む具体内容が検討された。  プラン策定にあたっては、「ICT」と呼ばれた世界で活躍してきた超大手企業やその関係者よりも、インターネットを中心とした「IT」に関連する技術研究や、ビジネスに近い学識経験者によって議論されたのが特徴といえる。

自治体のクラウド化を支援

政府はIT投資の状況を一目で分かるよう「ITダッシュボード」を昨年7月に新たに設けた
 地方創生IT利活用促進プランでは、「ITが地理的・時間的な制約を解消し得る手段であり、適切に利活用することで大きな付加価値を生み出すものである」という前提に立ち、地方の自治体や企業が抱える課題を解消するためにITをどう活用すべきかの方策をまとめている。  その中身は、地方の自治体向けには、業務システムのクラウド化をはじめ、マイナンバーの活用、無料公衆無線LANの整備、オープンデータ化の推進などを薦める。  これに対して国は、基本システム部分を共通パッケージ化したり、政府CIO(最高情報責任者)や成功経験者などによる人材支援・相談体制を構築したり、場合によっては「IT利活用促進に係る新たな法律の制定も視野に入れた検討を行う」とする。

農水や観光業へのIT支援説く

 地方における産業創出が有力な分野としては、農林水産業や観光業分野などを挙げ、IT化支援の必要性を地方自治体に向けて説く。  具体例として農業の6次産業化やスマート農業の推進、農地利活用や鳥獣被害対策でのIT活用、水産業や林業の分野でのIT活用を示した。  加えて、観光分野では多言語化やSNS活用を含んだ観光情報の発信、デジタルサイネージを活用した言語など個人属性に応じた情報提供、ビッグデータ解析による観光戦略の策定、宿泊業におけるIT化・クラウド化の支援といったものだ。

地方の中小ベンチャーを応援

地方自治体の長が独自に連携するとともに、ITベンチャー企業も加わって地方創生に向けた取り組みを強めている(昨年12月「スタートアップ都市推進協議会」のイベントで)
 一方、プランに盛り込まれた内容で特徴的なのが、IT関連企業が得意とする取り組みや、ITベンチャーが恩恵を受けそうな点も多く含まれていることだ。  たとえば、「地方における起業家・ベンチャー企業等の支援」では、資金供給のためのITスタートアップファンドの創設を含め、創業間もないスタートアップ支援の環境を整備するために「地域IT企業スタートアップ推進協議会(仮称)」を設立すると明記されている。  また、ベンチャーだけでなく「地方における中小・小規模事業者等に対する支援」に対しても、「地域のITコンサル人材の質の向上を図るとともに、コンサル人材と中小企業支援機関をネットワーク化することで、中小企業によるクラウド等のIT利活用の芽を広く掘り起こす体制を整備する」という。

企業的な働き方以外の選択肢も

 なかでも注目されるのが「地方における働き方改革の推進」をうたう部分で、専業主婦・夫や高齢者など、地域で就業していない人材を活用して地域の活性化を図ることを薦めている点だ。  具体的には「『いつもの仕事をどこにいてもできるテレワーク』(ふるさとテレワーク)を推進すべく、モデル実証及びその普及展開に取り組む」とし、既に「ふるさとテレワーク」は動き始めている。  さらには、「企業のような就業体制にこだわらず、個人の能力を生かした、医療事務等での会話内容の文字起こしなどの働き方改革や、ローカルコンテンツの流通促進のための地域からの情報発信強化などについても積極的に広報するとともに支援していく」と踏み込んでいる。  そのうえで「地域において働く人材の定着を図るためには、住みやすい環境整備が必要である。このため、都会等と比較して同様の住みやすい環境を整備すべく、光ファイバ等の超高速ブロードバンド基盤の整備を促進し、4K・8K等を活用した遠隔医療、遠隔教育を含む、医療面、教育面等でのIT利活用を推進する」との方針だ。

ITの力で人口減に立ち向かえるか

今年3月に策定された京都府京丹後市の「地方版総合戦略」は自治体で最も早かった
 国は地方自治体に対して、地方創生への具体的な取り組みを「地方版総合戦略」として来年3月までに策定するよう求めている。  全国には1700余の自治体があり、抱えている課題はそれぞれ異なる。  しかし、人口減によって“地域が消滅する”というシナリオを覆すためには、地域に新たな仕事を生み出し、人を呼び込まなければならないのは共通する課題だ。  ITの力が解決にどれだけ寄与できるのか。地方創生IT利活用促進プランが担う役割は大きい。 【関連記事】東京IT新聞「ITで地方創生」カテゴリの記事一覧
《東京IT新聞 編集部》

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