北九州発の小さな“泡”「ウルトラファインバブル」の大きな有望性 | 東京IT新聞

北九州発の小さな“泡”「ウルトラファインバブル」の大きな有望性

エンタープライズ 行政

極微細な気泡を発生させる「ウルトラファインバブル」技術が世界中から注目されている。ファインバブルとは直径0.1ミリ以下の泡のことだ。トイレの洗浄から、医療向けの殺菌剤、食品、水産分野にもこの技術が利用されており、グローバル潜在市場規模は30兆円と言われている。この分野の開発では日本は世界のトップクラスで、政府も国際競争力強化のための中核技術として世界市場での主導権を握るべく動いている。日本がリードするこの「泡」の開発に、福岡県北九州市が積極的に取り組んでいる。地元の開発企業に産学がサポートし、地域活性化のすそ野を広げる。

▼NHK「クローズアップ現代」で注目集める

 先日、NHKの情報ドキュメンタリー番組「クローズアップ現代」の2015年10月6日放送分で「ウルトラファインバブル」が特集されたことで大きな反響を呼んだ。

 「“小さな泡”が世界を変える!?~日本発・技術革命は成功するか」と題した放送では、映し出された北九州市の魚卸売市場で、水揚げしたサバが窒素を微細気泡化した「ウルトラファインバブル」の氷水に浸されていた。水揚げ後4日目のサバと比較すると、ハリがあり、見た目にも鮮度の差が歴然だった。

 実はキユーピーのマヨネーズにもこの技術が使われている。同社の「シェフスタイルマヨネーズ」は、マイクロバブル状の窒素をマヨネーズ中に安定的に分散する技術により、口どけの良いおいしいサラダが実現できる業務用マヨネーズだ。

 ほかにも、殺菌や洗浄作用、農作物の成長促進効果など特異な性質を活かし、食品分野、医療・薬品分野、工業分野、電子機器分野、水産分野、農業分野など活用先は多岐にわたる。

▼世界市場へ向け、政府も国際標準化に動く

 政府もこの最先端技術の国際標準化に動き出した。ウルトラファインバブル技術の国際標準の策定、規格の普及・認証でリーダーシップを取り、グローバル市場で優位に立つ狙いだ。

 2012年7月に業界や学会、政府共同で設立された一般社団法人ファインバブル産業会(FBIA)の参加企業には、三菱重工業や資生堂、シャープ、島津製作所、西日本高速道路、キリン、サンスター、メニコンほか計58社、参加機関大学など10機関が名を連ね、「ウルトラファインバブル」がもたらす業界の垣根を超えた大きなビジネスの可能性をうかがわせる。

▼ウルトラファインバブル開発の主役は中小企業

 ものづくりを得意とする北九州市では、地元の中小企業が主体で技術開発に取り組んでいる。

 北九州市の魚卸売市場で使われているウルトラファインバブル発生装置は、同市に本社を置く水産物仲卸会社が魚の鮮度維持のために泡を微細化した結果、行き着いた成果だ。

 活性炭や化成品などの卸売事業を展開する技術商社の株式会社クロサキ(北九州市八幡西区、安田善一社長)では、ウルトラファインバブル技術の応用開発に挑んでいる。

 同社では水処理システムなど環境装置を手掛けていることから、工場の廃水処理や汚泥の減容化、電気設備の洗浄用途や、水エマルジョン燃料への適用など自社の工場施設も利用して大学や提携企業とともに研究を進めている。

 同社の草場義彦常務取締役は「殺菌や洗浄作用を持つウルトラファインバブル技術に、自社の技術や製品を組み合わせることで、付加価値の高い製品が提供できる。環境にも優しい技術としても注目している」と語る。

▼北九州市の技術ポテンシャルをバックに産学が支援

 北九州市でウルトラファインバブルの技術開発が行われている背景について、市産業経済局の西田幸生局長は、「ウルトラファインバブル技術は、心臓部である発生装置を核に周辺技術のすそ野が広い。例えば、発生装置を製造するための、せん断や撹拌(かくはん)、混合などの要素技術や部品加工ノウハウ、さらに、微細な気泡の計測技術や市場ニーズを捉えた応用技術や販売技術も重要となる。また、需要先となり得る市内の工場やプラント施設など、ものづくりで発展した産業都市としてのポテンシャルが高いのではないか」と語る。

 北九州市では、中小企業の技術開発への支援も積極的だ。

 新技術開発を行う中小企業に対して産学共同開発への助成を行っており、ウルトラファインバブル生成装置の実用化につながった。

 今年の4月には、中小企業の振興条例を新たに制定し、施行した。市や中小企業団体、大企業、金融機関、大学などが一体となって市内の中小企業を支援する体制を築きつつある。

 今後の展開について、西田局長は「北九州市は官民連携による海外での水ビジネスを手掛けており、ウルトラファインバブル技術には大変注目している。アジアなど海外の食品工場の廃水処理などに利用できるのではないか」と期待を寄せる。

 小さな「泡」が「地方創生」の大きな切り札となるか、期待したい。
《牧 祥子》

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