(湯川鶴章)人気連載の最終回:時代変化をとらえた未来を予測する | 東京IT新聞

(湯川鶴章)人気連載の最終回:時代変化をとらえた未来を予測する

ソリューション クラウド

▼2009年の連載初期は広告技術の内容が多かった

 「東京IT新聞」で連載してきた本コラムも今回で最終回となりました。2009年12月の第1回から、途中にお休みを挟みながらも6年近くにわたり、計96回の連載させていただいたことになります。最終回では、今起こっている大きな時代の変化と未来への予測を書いてみます。

 連載初期の原稿を読み返すと、広告技術に関するものが多かったように思います。最近ではAI(人工知能)に関する原稿が多くなりました。自分の原稿を読み返すだけでも、ここ数年の時代の移り変わりの速さを実感せざるを得ません。

 AIが急速に進化し始めたのは、ご存知の通りです。人工知能研究で50年来のブレークスルーと呼ばれるディープラーニング(Deep Learning=深層学習)のおかげで、この研究分野に人とお金が集まり、その結果、技術が確実に進歩し始めました。

 そうなってくると必要になるのがデータです。AIは大量のデータがなければ本領を発揮できません。今のところは、グーグルやアマゾンなど、既に膨大なデータを持っているところが、AIを最大限に活かし、サービスを向上させ始めました。

▼大量データが集まれば“正のスパイラル”に

 サービスが向上すれば、さらに多くの人が利用するようになり、その結果、さらに大量のデータが集まる。大量のデータが集まれば、AIを使ってサービスをより向上させることができる――。

 この“正のスパイラル”に入ったところが、「勝ち逃げ」できる時代となりました。そのため、とにかくデータを集めようという企業が増えてきました。他社ともデータを交換したいとのニーズも出てきました。

 しかし、問題はデータの流通がほとんど起こっていないことです。AIがせっかく進化したのに、データ漏えいやプライバシーの侵害が怖くて、他社とデータを共有できないのです。

▼PDS(パーソナルデータストア)の概念が普及する

 そこでセキュリティやプライバシーの問題に対処しながらも、データを共有しようとの仕組み作りが求められています。

 さまざまな仕組みが提案されていますが、私は最終的にはPDS(パーソナルデータストア)と呼ばれる仕組みが普及するのではないかと思っています。

 PDSは、消費者が生成したデータを消費者に返すという概念です。消費者が自らの意思によって自分のデータを管理する時代へと移行するのは間違いないと思っています。

 分散型PDSでは、東京大学の橋田浩一教授が日本での第一人者です。ぜひインターネットなどで調べてみてください。

▼今後の台頭が予想される「メディエーター」

 PDSが普及すれば、社会や経済が大きく変化すると思われます。広告、マーケティングの形も変わるでしょう。行動ターゲティング広告のようなものは不要になると思います。

 アテンションエコノミー(関心の経済)からインテンションエコノミー(意志の経済)に移行するとも言われていますし、CRM(顧客関係管理システム)からVRM(ベンダ関係管理システム)の時代になるとも言われています。

 また消費者に代わってデータを管理する「メディエーター」と呼ばれる業種の台頭も予測されており、メディエーターを促進、規制するための法整備も進んでいるという話も聞こえてきます。

 しばらくは、この時代変化がIT業界の最大の話題になるのではないでしょうか。

 「インテンションエコノミー」「VRM」「メディエーター」と聞き慣れない言葉を並べてしまいましたが、こうした言葉に注意して、これからの時代の変化を見定めていただければと思います。

 長い間、ご愛読いただきありがとうございました。
《東京IT新聞》

編集部のおすすめ

特集

page top