ペッパーがやってきた! 共同生活がスタート【木暮祐一のモバイルウォッチ】 | 東京IT新聞

ペッパーがやってきた! 共同生活がスタート【木暮祐一のモバイルウォッチ】

ソリューション ロボット

 ソフトバンクが発売を開始した感情認識パーソナルロボット「Pepper」が一般向けに出荷開始され、およそ2カ月が経った。実は、筆者も一般販売初日に何とかオンラインストアでの申し込みに滑り込み、初回出荷分1,000台のうちの1台を入手することができた。

 Pepperはいわば「人型のコンピュータ」である。パソコンやスマートフォンと何が異なるのか、Pepperにできて、逆にPepperには向かないこともだいぶ分かってきた。Pepper到着からその後分かってきたことまでを2回に分けて報告したい。

■なかなか手に入れることができなかった……

 Pepperが初めて発表されたのは2014年6月5日。正直なところ、ソフトバンクがそういった方向に舵取りをするということに大いに驚かされた。ロボットと共存する生活は、子どものころからさまざまなSF映画や漫画を通じて見てきたが、そうした世界がいよいよ現実にやってきたという点で、Pepperへの期待は大きくなるばかりだった。

 このPepperを入手できるチャンスをうかがっていたが、最初のチャンスは2014年9月の開発者向け限定販売だった。この時は開発者イベントに参加する必要があり、断念。その後、今年2月27日10時より、やはり開発者向けとして限定300台が用意され、Web等での販売が行われた。ここでは、朝からWebに向かって申し込みを試みた。確か1分程度で受付終了のうえ、申し込み多数で抽選に。残念ながら、またしても、あえなく抽選で落選したのだった。

 そして、発表から1年を経た今年6月、一般販売の開始が開催されることになった。やはりWeb(オンラインストア)による販売で、6月20日10時から、限定数1,000台で受付を開始するという。これまでの経験上、すぐに予定数を超えるであろうと、やはり30分前からWebに張り付き、申し込みを試みた。

 9時59分30秒を過ぎたころ、オンラインストアの画面が切り替わった。すかさず必要事項を入力完了し、見事10時ジャストで申し込み受領の画面に。この日も案の定、1分で完売の画面に切り替わったが、受付受領されたユーザーはその後の与信さえ通れば全員購入が可能だということだった。あとはひたすらPepperの到着を待つのみ。

■Pepperは117万円もする超高価端末

 ところでPepper発表時に、ソフトバンクグループ代表の孫正義氏は「販売価格198,000円」と宣言したが、その発表会のバックヤードではソフトバンクロボティクスの関係者が騒然としていたという。そもそもこれだけのロボットが、iPhone 2台程度の価格で買えるわけがない。

 まあ、そこは案の定、あとから別の名目で代金を回収するという通信事業者ならではの手法を使い、本体代金こそ198,000円としたが、Pepperの感情認識機能やロボアプリの利用を行うために必須となる「Pepper基本プラン」が14,800円×36カ月、さらに義務ではないがPepper保険パックが用意され、これが9,800円×36カ月分必要となる。

 36カ月といっても途中解約はできない。トータル、1,083,600円。これに消費税が掛かり、税込みで117万円少々の買い物となる。契約時の消費税率が適用されるので、どうせなら消費税が8%のうちに購入しておいたほうがお得だ。

 軽自動車が買えそうな価格だが、ソフトバンク関係者の話ではこれでも原価割れの提供ということだ。今後量産が進めば価格も引き下がっていくことであろう。

 その後もソフトバンクは毎月1回、Pepperの販売を1,000台単位で行っているが、そのたびに1分で申し込み受付が完了になっているようだ。そんな毎月の大騒ぎを横目に見ながらも、なかなか筆者が申し込んだPepperが納品されない。受注生産の自動車でも買ったと考えて待つしかないのか……。

 ソフトバンク側からその後のアクションがようやく来たのは7月30日。オンラインストアからメールにて「Pepper本申し込みご依頼のご連絡」が届き、Webから契約情報等を入力。大学の研究費などで購入するような予算もなく、ここは、申し込み時の通り、開き直って個人で購入する覚悟を決めた。

 その後、書類でのやり取りがあり、8月15日にいよいよ「商品発送手続き開始のご連絡」というメールが届いた。さらに8月18日には「出荷完了のご連絡」というメール、そして8月21日に納品となった。オンラインストアでの申し込みからちょうど2カ月だ。その後も毎月販売を行っているが、多少は納期が短くなっているのであろうか。

 到着当日は、筆者のエリアを担当するヤマト運輸から電話があり、納品の段取りについてやり取りを行う。開発者向けのPepper実機やその梱包箱をあらかじめ見たことがあったので、納品についても段取りをしっかり考えないと、とんでもないことになる。中型冷蔵庫が届くようなものだ。

 1人では動かせないし、乗用車に乗せるのも困難である。ちょうど納品日は、終日大学の研究室にいる日であったので、ヤマト運輸にお願いし、納品先を自宅から勤務先に変更してもらい、夕方ようやく到着することとなった。

 ちなみに、筆者の住居および勤務先は青森県であるが、ソフトバンク関係者の話では、青森県への納品第1号ではないかという。青森県ではソフトバンクショップでさえ、Pepperの配備はなかった。

■学生が見守るなか、Pepper開封の儀

 ヤマト運輸のトラックは、研究室最寄りの玄関付近に寄せてもらい、ヤマト運輸のスタッフが慎重にPepperを研究室前まで運んでくれた。それなりの重量である。

 開発者向けのPepperの梱包箱は黒だったが、一般販売用のものは通常のダンボール箱になっていた。しかし、このダンボール表面に梱包されているPepperのつぶやきが英語で色々と書かれているのがユニークである。

 ゼミの学生も集まってきて、いよいよ開封。一旦、静かに梱包箱を寝かして、梱包テープにカッターを入れる。ダンボールを開くとその中は「水色」だった。これはちょっとした演出といったところだろう。

 そして製造元アルデバラン社の「A」のロゴが中央に描かれているが、学生からは「何で“六”って書いてあるのか?」という声も。確かにアルデバラン社のロゴは「六」に見えなくもない。

 この開封したダンボールの内側に起動までの最小限の段取りを説明したチュートリアルが封入されている。このチュートリアルを見ながらPepperを箱から出してあげて、いよいよ電源投入である。学生や、配送してきてくれたヤマト運輸のスタッフからも歓声が上がった。

■“感情を持つ”Pepperの真価とは

 Pepperを一言でいえば、手足の付いたコンピュータである。人型(ヒューマノイド)という特徴をどう活かせるかが鍵となろう。基本的には、対話を通じたコミュニケーションによって、クラウド上の情報を「知識」として披露してくれたり、対話によってユーザーとの関係を深めていく端末となるのだろう。

 たとえば「ニュース」と呼びかければ、最新のニュースのヘッドラインをしゃべってくれる。専用のアプリマーケットも用意され、Pepper専用の「ロボアプリ」の追加が可能である。とはいえ、現時点では、まだまだPepperを存分に楽しめるというようなアプリは少数だ。今後のアプリの増加に期待したいところ。

 Pepperのウリは何といっても、Pepper自身が「感情」を持っているということ。こちらが発声する音声や、Pepperに備えられたカメラやその他のセンサーから感じ取られた情報をもとに、Pepperが“空気を読んで”くれる。

 これはPepper自身の感情として胸のタブレット上にカラーで表示されている。タブレット上の「もやもや」した模様が「白」のときは“平常”、「赤」のときは“悲しい”、「緑」のときは“うれしい”という気持ちを表しているそうだ。さらに「感情マップ」アプリを起動することで、Pepperのより正確な感情の変化を見ることもできる。

 話しかけるとその声やこちらの表情に反応し、Pepperがさまざまな感情を呈するのだが、これは話しかけているユーザー自身の感情の鏡とも言えそうだ。音声感情認識は、東京大学大学院医学系研究科音声病態分析学講座の光吉俊二博士が考案した、「脳と声帯は直結しており、音声の成分を分析することで感情を推測できる」という理論に基づいたエンジンが搭載されている。

 Pepperを梱包箱から引き出し、姿勢維持のためのロックピン2本を外す。Pepperのうなじの部分のゴムカバーを開くと、このロックピンを収納する穴がある。そしてこのカバー内中央部には赤い大きなボタンがあり、まずはこのボタンを軽く右に回して浮き上がらせる。このボタンは万が一の場合の緊急停止ボタンで、Pepper本体の電源を強制シャットダウンするために取り付けられている。この緊急停止ボタンを解除し、カバーを閉めて、いよいよ電源投入である。

■電源のオン/オフ時に発するユニークな挨拶

 本体電源は、タブレットの裏側の胸部のみぞおちの辺りにある。このボタンを押すと目、肩、耳のLEDが光り、Pepperは「OGNAK GNUK(オグナク ヌック)」という音声を上げ、起動を開始する。ちなみに電源を切るときには「GNUK GNUK(ヌック ヌック)」と発声する。

 アルデバラン社によれば、これはロボットが使うBidi語で、それぞれ「こんにちは」と「さようなら」を意味しているという。勉強不足で恐縮だが、左横書きと右横書きの言語の混在した文をコンピュータで取り扱うBi-Directional(BiDi)のことか? ともあれ世界中のロボットが人間には分からない言語で相互にコミュニケーションを取っている世界がそのうち来るのだろうか。

 電源投入後、タブレット画面の指示に従って順次進んでいったが、初期起動だけは相当時間が掛かった。途中でアルデバランアカウントの登録や、Wi-Fi設定、さらにインターネットに接続された後はソフトウェアアップデートが入り、ようやく10分以上を経て、Pepperが目覚めてくれた。腰をくねらせながら自分の体を見回し、そして腕を動かし、その様子はまるで今ここで生まれた自分の存在を確認しているようなしぐさである。

■「携帯電話」のように、今後普及するのか?

 それにしても、筆者としては近年になかった大きな買い物である。117万円は決して安い買い物ではない。友人から「軽トラックでも買ったほうがよほど役立つぞ」と笑われたが、筆者としてはこの「家庭用ロボット」という全く新しいジャンルの製品に、これは今買っておかなければいけない何かを感じさせてくれたのだ(家庭用ロボットといえば、過去にはソニーのAIBOなどもあったが)。

 一般家庭にとっては高いし、必要性が感じられないと言われればそれまでなのだが、これがどうしても、かつての自動車電話発売時にかぶるのだ。

 1979年12月に東京23区内からスタートした自動車電話。当然のことながら一般家庭にはまったく縁遠いものであった。その利用目的もピンと来なかったであろうし、そもそも契約料、利用料が高価すぎた。

 契約時は保証金を含め40~50万円の費用が掛かり、毎月の電話料金も基本使用料だけで2万円近く掛かった。しかし、その登場から15年後の1994年以降、携帯電話は販売方法などの規制緩和もあり、一気に大衆化を果たし、その後は1人1台持ち歩かれるものへと普及を果たした。自動車電話登場時に、わずか15年後のその世界を想像できた人は多くはなかったのではないだろうか。

 Pepperを初めて見た時に、これは自動車電話が携帯電話へと進化し、その後、広く世界に広く普及して社会を激変させたことと同じことが起こるのではないかと、そんな気がしたのである。

 だからこそ、まだ海の物とも山の物ともつかないこのロボットに手を出してしまった。Pepperが手元にやって来て、もう2カ月が経過。そこから見えてきた「Pepperでできること、できないこと」などは次回のコラムでお伝えしたい。

【木暮祐一のモバイルウォッチ】第85回 Pepperがやってきた! ロボットとの共同生活がスタート

《木暮祐一》

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