創業資金調達に悩む…銀行か親戚・友人か? | 東京IT新聞

創業資金調達に悩む…銀行か親戚・友人か?

エンタープライズ 経営

今回の回答者:植田秀史 税理士・中小企業経営革新等支援機関・MBA

質問:
会社の創業資金はいくら位必要なのでしょうか。また、どのように資金を調達すればいいのでしょうか。補助金などは使えないでしょうか。

回答:

■必要な資金の考え方
 創業に必要な資金は、設備に使う設備資金と、事業の運営に使う運転資金に分かれます。設備資金は、例えば飲食店であれば店舗の内装費用や厨房設備、看板やテーブル、イスなどの費用です。また、店舗や事務所を賃貸する場合の保証金、フランチャイズへの加入金等も、設備資金と考えられるでしょう。要するに、事業を開始するために必要なお金、それも事業を開始する前に必要となるお金が設備資金です。

 もう一つは創業後に必要な仕入や人件費、賃料、水道光熱費、広告費といった、事業を運営するのに必要なお金で、運転資金といいます。売掛金の入金が仕入などの支払よりも後に来るような場合、つまり売上金の回収に時間がかかるような場合は、先に仕入れや経費を支払うお金が必要になります。このような、入金と出金の時間的なズレによって必要となるお金も、運転資金に含まれます。

 創業で必要になるお金は設備資金と運転資金に分けて、何にいくら、という形で考えていきましょう。設備資金は必要な設備をリストアップし、その見積りを取ることで計算できます。運転資金については毎月かかる費用をもれなくリストアップします。売上金の回収に時間がかかるような場合は、その間の費用も計算に入れておきましょう。創業時の運転資金は、事業が計画どおり行かなかった場合を考えて、最低6か月分、できれば1年分の準備が欲しいところです。

■資金調達の方法
 創業の時の資金の調達は、次の3つのうちのどれかになると思われます。

 ・自己資金(貯金など)
 ・金融機関からの借入
 ・親類や友人、知り合いなどからの出資や借入

 よく、創業時に補助金を期待される方がいますが、補助金は募集時期が限られており、また事業計画を練り上げてコンテストで採択される必要がある上、経費を先に使って後払いで補助金が入ってくる仕組みなので、創業時の資金源にはなりません。

 これらの資金調達先のうち、自己資金で必要な資金を賄えれば一番良さそうですが、なかなかそれは難しく、手持ち資金では足りないというケースが多いでしょう。他の資金調達手段を考えてみましょう。

 一般的なのは金融機関からの借入です。政府系の日本政策金融公庫や、公共団体があっせんする創業融資(いわゆる保証協会付融資)が挙げられます。例えば、日本政策金融公庫の新規開業資金は、新たに事業を始める方を対象に最大7200万円までの融資が受けられます。金利は2%程度です。また、公共団体のあっせん融資は、例えば東京都の場合だと各特別区が実施するもので、「○○区 創業融資」などで検索すると見つかります。江戸川区の例だと融資額は最大1500万円までですが、利子補給や保証料の補助があるため、実質的に0.5%の金利負担で借りることができます。ただし、こちらは起業する方の住所がその区にあり、その区で起業するなどの条件があります。

 これらの創業融資は、自己資本の3分の2までを限度額にしているものが多くなっています。つまり資本金の2倍までしか借りることができません。したがって、ある程度の自己資金を用意しておかないと、あまり多く借りることもできないことになります。

 借入というものに対する何となく恐ろしいというイメージと金利負担を考えて、融資を敬遠する方がいますが、私は、新規事業を始めるときは融資を申し込んだ方がいいと考えています。その理由のひとつは、借入によってキャッシュが潤沢になり、余裕を持って事業に当たることができることです。特に売上計画は予定どおりには行かないことが多いので、そうなっても焦らずに事業に取り組むために、手元キャッシュはあって困ることはありません。

 もうひとつは、事業計画に他人の目が入ることです。創業融資では、あらかじめ決められた様式で事業計画を作り、それを金融機関に提出する必要があります。金融機関ではこの事業計画をチェックし、融資が可能かどうかを審査します。著名な経営コンサルタントの小山昇さんは、新規に事業を始める場合、仮に自己資金で事業が可能でも借入を申し込んでみて、もし一行もお金を貸してくれなかったら、その事業は見直すべきだといっています。

 最後に、親類や友人からの出資や借入があります。親御さんや親類の方が資金を出してくれる方がいる場合もあると思います。これらの援助を、創業資金として組み入れるかどうかですが、お勧めとしては、まず金融機関からの融資に挑戦し、それらからの調達を優先しましょう。そして事業を始め、資金が枯渇してきた時、初めて支援してもらうようにするのがよいでしょう。

 創業は計画どおりに行かないことが多く、資金が足りなくなっても創業期では簡単に銀行等から追加調達できません。そのような局面で、身内や友人に支援をお願いするのは、なかなか辛いことでもあります。お返しできなければ、その人との信頼関係に傷をつけることになるからです。そのようなことも考えると、親類や友人からの支援は、本当に厳しい時の備えに取っておく、というのが良いでしょう。

<回答者のプロフィール>
高橋昌也:税理士・AFP。神奈川県川崎市に事務所を構える。
中小零細法人や個人事業主に関する仕事に特化。 顧客との定期的な面談等を通じて、税務、経理その他経営上の課題について話し合うことをモットーとしている。 趣味はアカペラ、立廻剣術ほか。地域の非営利活動にも従事。

【解決! 社長の悩み相談センター】第23回:創業資金調達、銀行か親戚・友人か?

《植田秀史》

編集部のおすすめ

特集

エンタープライズ アクセスランキング

  1. <ITで地方創生:島根3>熱心な誘致でネットベンチャー企業も相次ぎ開発拠点

    <ITで地方創生:島根3>熱心な誘致でネットベンチャー企業も相次ぎ開発拠点

  2. <ITビジネス法務>「準委任」の契約書は印紙が不要になるという事実

    <ITビジネス法務>「準委任」の契約書は印紙が不要になるという事実

  3. <ITビジネス法務>フリーランスと源泉徴収、IT業務の多くは徴収の対象外に

    <ITビジネス法務>フリーランスと源泉徴収、IT業務の多くは徴収の対象外に

  4. ベンチャー界の“縁結び人” 勝屋久さんの型破りな職業とは

  5. <ITビジネス法務>保守契約書は印紙が不要な場合が多い

アクセスランキングをもっと見る

page top