【ITビジネス法務】クラウドソーシングの源泉徴収 | 東京IT新聞

【ITビジネス法務】クラウドソーシングの源泉徴収

エンタープライズ 経営

~フリーランスと源泉徴収~

クラウドソーシングでは、エスクロー(発注者が、クラウドソーシングサービスの運営会社にまず報酬を支払い、受注者が、それを確認できた時点で発注者に納入を行い、運営会社が、それを確認できた時点で受注者に報酬を引き渡す、という仕組み)が採用されていることが一般的です。

●エスクローと源泉徴収

エスクローの場合でも源泉徴収を行うのは、あくまでも発注者です。運営会社は、発注者と受注者が直接契約をする場を提供しているだけであり、受注者に対して(法的な意味で)報酬を支払うのは、あくまでも発注者だからです。

クラウドソーシングを利用していると、なんとなく、契約相手は運営会社な気がしてきて、「会社相手に発注をしているので、源泉徴収は不要」と思いがちですが、そんなことはないのです。

●ランサーズも注意喚起

この問題は、クラウドソーシング大手のランサーズのウェブサイト(右図参照)でも、以下のように注意喚起されています。「ランサーズは、クライアントとランサーが直接取引する仕事のマーケットプレイスのため、ランサーズがクライアントからランサーに支払った報酬を源泉徴収することはできません。ランサーズでやり取りされる仕事のほとんどは源泉徴収する必要のないものとされておりますが、万が一、源泉徴収が必要とされる仕事を、日本国内の法人が、日本国内の個人に対して依頼する場合は、クライアント側で源泉徴収が必要になります。」

ここで気になるのは、「ランサーズでやり取りされる仕事のほとんどは源泉徴収する必要のないものとされております」という説明です。源泉徴収が必要な報酬(フリーライターに支払う原稿報酬、フリーカメラマンに支払う写真報酬、フリーデザイナーに支払うデザイン報酬など)に関する業務は、クラウドソーシングでよく利用されているのに、なぜそうなるのでしょうか。

●コンペ方式では源泉徴収が不要?

この点について参考になりそうなのが、所得税法基本通達204-10です。この通達は、「懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金等で、その人に対して1回に支払う金額が少額(概ね5万円以下)の場合は、源泉徴収をしなくて構わない」と述べています。そして、大手のクラウドソーシングでよく利用されている「コンペ方式」(発注者からの依頼に対して複数の提案を集める方式)によるロゴやイラストの発注では、依頼金額の相場が2万~5万円程度といわれています。

そうなると、コンペ方式を、「懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金等」と法的に構成すれば、源泉徴収が必要になる取引はそんなに多くはない、ということになりそうです。

実際、ランサーズの上記説明の中でも、明言はしていませんが、そのように解釈していると思われる記載があります。

とはいっても、これはあくまでも一つの考え方ですので、正確性は保証できません。それに、そもそもコンペ方式が所得税法基本通達204-10でいう「懸賞」に該当するのか、よく分からないところです。

少なくとも、5万円を超える報酬でクラウドソーシングを利用している会社は、発注相手がフリーランスの場合、源泉徴収が後から問題になるリスクがあるということに注意してください。

筆者:藤井 総(ふじい・そう) 弁護士法人ファースト法律事務所代表弁護士。顧問先はベンチャー企業から上場企業まで90%以上がIT企業。サイト「IT弁護士.com」を運営。「IT弁護士.com」
《藤井 総》

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