CADソフトちょっと未来…オートデスクが事例紹介展示 | 東京IT新聞

CADソフトちょっと未来…オートデスクが事例紹介展示

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CADソフト大手のオートデスクは、CADの現状と将来の可能性を見せるイベント「Autodesk Gallery Pop-up Tokyo」を10月23日~11月8日に開催した。会場は東京・表参道にあるBA-TSU ART GALLERY。展示ではプロダクトデザイン、建築、エンターテインメント、アートなどさまざまな分野で同社のソフトを活用した事例を紹介。またその場でデザインしたものを3Dプリンタで出力するワークショップもおこなわれた。

▼CADソフトを手がける老舗メーカー

オートデスクは1982年、米国カリフォルニアで設立された。初期の主力商品はAutoCADで、この2次元CADソフトの爆発的なヒットが市場での地位の確立と、その後の成長の原動力となった。まだCADといえば大企業が持つものと考えられていた時代に、PCさえあれば個人でも使え、しかも安価という特徴を備えていたことがヒットの要因だ。その後もAutoCADシリーズはWindowsマシンで動作するソフトとして、大企業から個人事務所まであらゆる規模の事業者に採用されて市場を拡大してきた。

また競合他社やCGソフトのメーカーなどの買収を積極的に展開して事業領域を拡大。設計業務における3次元CADとしてだけでなく、関連商品を含めるとデザイナーのイメージスケッチから高精細なCGムービーの作成まで、デザイン開発に関わるあらゆる領域をカバーできる機能を備えることになった。この結果、現在は1200万というプロフェッショナル・ユーザーのほかに2億を超える個人ユーザーを獲得。学生や教育機関では6億を超すユーザーがいるという。

▼開発プロセスを見せる展示

ユーザーの幅広さは、展示された作品バラエティを見れば納得する。イベントのテーマは「The Future of Making Things~創造の未来~ 」というもの。さまざまな顧客が自社ソフトを用いて開発した製品と、その開発プロセスを展示するイベントとして2014年にフランス・パリで初めて開催され、東京は2回目となる。

そして東京会場には、日本企業をはじめとして40を超すプロジェクトの製品やプロトタイプ、模型などが展示された。トヨタi-ROADや日本設計が新潟県に建設予定の水族館、エアバスの旅客機コンセプトモックアップといった大規模な工業製品から、筋肉の電気信号で制御するイクシーの筋電義手といったベンチャー企業の製品、アーティストによる伝統工芸品までが並んだ。

興味深いのは、いずれもデザインや設計を進めるプロセスも紹介されていたことだ。アイデアの着想からいったいどのような過程を経て具現化されるのか。スケッチや図面の作成、3Dデータ化や試作といった、あらゆるプロセスにおける試行錯誤がわかるようになっていたのが展示の特徴だ。このような展示にした理由として、キュレーターのジェイソン・メダルカッツ氏は「最終的なデザインだけを見せる場にはしたくなかった」と説明する。「私たちの顧客が作り出した素晴らしい製品だけでなく、そのストーリーを伝える場所が欲しかったのです。素晴らしいデザインとエンジニアリング、そしてそれが製造されることを祝福する空間として、ギャラリーは存在します。最終製品を見るというだけなら、店舗や博物館へ行けばいいのです」とのことだ。

▼「ものづくり」の将来を考える機会

東京がパリに続く開催地に選ばれた理由について、コミュニケーション担当副社長のグレッグ・エデン氏は「東京には素晴らしい建築や製品があり、クリエイティビティの集まっている中心地だから」という。メダルカッツ氏は「日本は素晴らしい伝統と職人技のある国です。また美的感覚にたいする高度な理解力を持っています。だから東京はギャラリーを開設するのにふさわしい都市だという結論に達しました」と説明する。

また会場2階には「デジタルファブリケーション・ワークショップ」が設けられた。ここには3D CADがインストールされたPCが並び、誰もが実際の操作を体験することができるようになっていた。さらに数種類の3Dプリンタやレーザーカッターも設置され、作成したデータをすぐに立体物としてアウトプットすることも可能になっていた。「最新のデザインツールに触れ、将来のものづくりについて考える機会を提供するものです。まずはものづくりに参加することを楽しんでほしいですね」とメダルカッツ氏。

▼「最適化」の時代から「連携」の時代へ

CADソフトの将来について、エデン氏は「連携の時代」になるという。図面をデータ化する目的で登場した2次元CADは、やがて3D化するとバーチャル環境でシミュレーションできるようになり、実際に試作する前に最適化を図れるようになった。そして現在は「最適化することを超えて、製品の使われる環境とどのように繋がり連携してゆくのか、という部分の検証に使われるようになります。製品の使われ方をデザインする必要があるのです」とのことだ。

またクラウド環境の普及で、ものづくり環境が大きく変化しているとも指摘。誰もが無限の演算能力を使えるようになったことで、どんなデバイスでもデザインや設計ができるようになってきているという。これからはCADの進化が開発プロセスだけでなく、製造業のありかたそのものも変革してゆくことになるのかもしれない。
《古庄速人》

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