2015年は転換点…料金値下げ問題やMVNO【木暮祐一のモバイルウォッチ】 | 東京IT新聞

2015年は転換点…料金値下げ問題やMVNO【木暮祐一のモバイルウォッチ】

エンタープライズ 市場動向

 2015年も残りわずか。今年も、モバイル業界ではさまざまな製品やサービスの登場や、業界動向に動きがあったが、全般を振り返って筆者がとくに注目した話題について記しておきたい。

■相変わらず「iPhone」だけが飛びぬけて売れている日本

 各通信事業者が端末ラインアップをスマートフォン中心にシフトし、はや5年程度を経た。この業界、通信事業者が「標準的サービス」として位置づけると端末の買い替えによって「5年で80%以上のシェアまで拡がる」という定説がある。スマホのシェアも同様で、出荷シェアで見ると携帯電話全体のうち77%を占めるまでに至った。

 また、スマホのメーカー別シェアではアップルが50%、残り半分をその他のメーカーがシェアし、2位がソニーモバイル、3位がシャープという順に続いた(2015年4~9月期。2015年10月29日、MM総研調査結果)。いうまでもなく、わが国ではアップル(= iPhone)が圧勝という状況である。世界主要国と比較しても、このアップル率(iOS比率)の高さは特別なものである。

 Kantar Worldpanelの「Smartphone OS sales market share」(http://www.kantarworldpanel.com/smartphone-os-market-share/)で最新の2015年10月時点のデータを見ても、わが国はiOS比率が50.3%である。たとえば他国を見てみると、英国は39.5%、米国は33.6%、中国は22.9%というシェアになっているが、こうしたデータでも、わが国だけ突出してiOS比率が高いことがご理解いただけるはず。

 iPhoneのモデルチェンジはこの数年、9月に実施されている。まさにiPhoneの新製品発売に合わせて、この業界のさまざまな販売施策やサービス開発が動いていると実感している。

 たとえば中古スマホ流通業界にも各所に足を運び、その動向を取材したが、中古スマホ流通量が最も増えるのが9月末~12月だそうだ。取材先各所の関係者は「新製品投入のタイミングで」と説明していたが、その“新製品”が新型iPhoneであることは明白である。新型iPhoneに買い換えるという需要ももちろんのこと、旧型となるiPhoneが値引き販売されることもあり、こうした端末が新古品として買取店経由で相当数中古市場に流通しているようだ。

 とくに旧製品に販売奨励金をてんこ盛りにして販売する手法はもう何年も続いており、これが行き過ぎていわゆる「マイナス価格販売(キャッシュバック)」につながっている。この件は後述するが、そこまでして回線契約とともにスマホ端末を販売しなくてはならない異常な状況が目に余った2015年だった。

 一方のAndroidスマホであるが、ソニーモバイルが2位を堅持した形となったが、販売店店頭を見ていると、ソニーモバイルの「Xperia」シリーズもiPhone旧モデルに劣らないキャッシュバック金額を乗せられ、乱売されているように感じた。日本人に親しまれている国産メーカーブランドという点からも、ソニーモバイルやシャープがシェアを伸ばしているように感じるが、世界市場を見るとやはりAndroidスマホではサムスンが大きな存在感を示していた。

 一方でわが国では、日韓関係が冷え込んだこともあるのか、サムスンが一段と苦戦を強いられていたように感じた。たとえばデュアルエッジスクリーンを採用したGalaxy S6 edge(2015年4月発売)など意欲的な端末も登場したが、その後世界で発売済みのGalaxy Note 5が国内では発売を見送られるなど、サムスン離れが進んでしまった印象があった。

 なお参考までに、世界の中古スマホ市場では、iPhoneがダントツで人気があるとして、これに続くのがサムスンのGalaxyシリーズ、そしてソニーモバイルのXperiaシリーズとなる。

■MVNOが大躍進、そしてSIMフリースマホも続々と登場

 2015年は、MVNO(= Mobile Virtual Network Operator、仮想移動体通信事業者)が大躍進を果たした1年でもあった。MVNOとは、既存の移動体通信事業者(MNO)から設備を借りて独自ブランドでサービス提供を行う通信事業者のこと。もちろんMVNOは以前から存在し、サービス提供は行われていたが、ようやく一般の消費者にも認知されるようになり、「特別なもの」ではなくなったという点が2015年のポイントである。

 MVNO事業者数の実態に迫るデータで最適なものが見つからなかったが、2014年12月時点までのMVNO事業者数の推移を総務省が公表していた。これによると、2013年12月時点で155事業者だったMVNOが2014年12月時点で170事業者まで増加している。2015年はさらに勢いを付けて事業者数が増加したのではないかと見ている。

 一般の消費者にMVNOが浸透するきっかけとなったのは、2014年春にイオングループが格安スマホとMVNO回線(SIMカード)をセットで販売したことだった。わが国では長らく、端末と回線契約はセットで提供されるものとして認知されていたため、SIMカードのみを取り扱うMVNOにはなかなか目が向かなかった。しかし、このイオンの販売手法に習い、その後のMVNOは端末を独自調達するなどして、格安スマホとSIMカードのセット販売で契約者数を増やし、MVNO業界の成長に寄与してきたといえそうだ。

 同時に、中古スマホ流通の拡大も期待され、中古スマホの取り扱いに力を注ぐチェーンも登場した。レンタルDVDチェーン大手のゲオホールディングス(以下、ゲオ)は2015年4月、NTTコミュニケーションズと業務提携し独自ブランドのMVNO通信サービス「ゲオ×OCN ONE」を商品化し全国のゲオ(1,047店舗)で販売を開始しただけでなく、SIMカードのほかに新品・中古スマホの取り扱いも行うモバイル専門ショップ「ゲオモバイル」をオープンさせ、2016年度までには全国100店の開店を目指している。国内にて、同社チェーンで下取りされた中古端末のほかに、HUAWEI製、FREETEL製の格安新品スマホも取り揃え、本格的なモバイル専門店を目指している。

 イオンのように、じつはMVNOにとって重要なのことは、SIMカードとともに販売するスマホ端末をラインアップすることももちろんだが、詳しく説明を聞きながら購入することができる「店頭窓口」があるかどうかも、一般の消費者を取り込むのに大きなポイントとなる。

 またいつまでも「格安」を売りにするだけでは、MVNO同士の消耗戦になってしまう。MVNOの独自性も求められてきているところだ。そうしたなかで、後発ながら異色のMVNOとして注目されているのがエックスモバイルの「もしもシークス」だ。独自の代理店制度を打ち出し、現在全国19店舗(春までに49店舗に拡大予定)の店頭窓口を展開するほか、かつてウィルコムで発売され話題になった「イエデンワ」のセルラー版である「スゴい電話」や、国内未発売の「ブラックベリー」を販売するなど、個性際立ったMVNOとして注目されている。

■結局、何が便利? 中途半端感が目に余ったウェアラブルデバイス

 2015年に急速な普及が期待されたウェアラブルデバイス。とくにアップルが「Apple Watch」を2015年4月に発売開始し、腕時計型ウェアラブルデバイス(スマートウォッチ)の普及に大きな期待が持たれたが、実際には苦戦が続いているようである。

 筆者もスマートウォッチは各社のものを日常的に愛用している一人であるが、おそらく実際に手にしたユーザーの多くは「結局、何が便利なんだろう」という結論に至ってしまうのではないだろうか。スマホと連携させて、メールやメッセージ、音声通話などの着信を知る各種通知機能の利用や、心拍データなどのヘルスケアデータの収集というのが活用の目的となろう。

 しかし、各種通知機能がどれほど便利なのかといえば、結局のところスマホ本体をポケットから取り出してディスプレイ操作したほうが使い勝手が良かったり、あるいはヘルスケアデータの収集に関しても中途半端感が否めなかったりするのである。しかも毎日の「充電」が欠かせない製品ばかり。

 筆者の場合、ウェアラブルデバイスに関してはとくに生体情報収集のところで大きな期待を持っているのであるが、収集できる情報はまだ限りなく限定されている。たとえば一時的な心拍数だけ収集できても役立てられるところは少ない。しかし、常時心拍のピーク間隔を収集できるのであれば、たとえばそのウェアラブルデバイスを装着しているユーザーの交感神経や副交感神経の状態を計測可能になる。すなわち、リラックスしているのか緊張しているのか、その比率や頻度なども収集可能になり、応用範囲は一気に広がる。

 iOSに標準搭載されている「ヘルスケア」アプリに各種ヘルスケアデータ項目が多数並んでいるものの、まだそれらの項目内容の多くは収集するためのデバイスが用意されていない。今後のセンサー技術の進展などで、ウェアラブルデバイスのさらなる高機能化や特化を期待したいもの。同時に、装着していて違和感の感じない製品を期待したい。

 国内外各社の製品を試しているが、とくに日本メーカー製のウェアラブルデバイスはまるで「業務用か!?」と思うほど装着時の違和感を感じさせるものばかりだ。心拍計機能付スマートウォッチにしても、国産メーカー品は装着しているだけで痛みを伴ったり、アザができてしまうほど。オシャレさにはどれも程遠い。こうした分野で国産メーカーがもっと活躍してくれないものだろうか。

■総務省の料金引き下げ議論は「誰得」だった?

 9月に安倍晋三首相が携帯電話料金の見直しを求める発言を行ったことをきっかけに、総務省によるスマホ料金引き下げのための議論が始まり、5回にわたって有識者会合『携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース』が開催され、その報告書が取りまとめられた。

 「ライトユーザー向けの低廉な料金プランの検討」や、「高額なキャッシュバックなど行き過ぎた販売の是正」、「MVNOサービスの多様化と競争促進、そしてそのための中古端末市場の発展」などが結論に盛り込まれた。これを受けて、高市早苗総務大臣は12月18日午後にNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社に対し販売適正化に務めるよう要望書を手渡した。

 すでに本件は各所で報道されているものであり、受け取り方もさまざまであろうが、筆者としての考えをここに記しておきたい。

 スマホはまさに日常生活に欠かせない重要なツールとなった。毎月負担せざるを得ないこのスマホ料金を引き下げたいという点は国民の誰もが期待することである。首相の発言の真意もこの「最も基本的」なところを指摘していたはずなのであろうが、これを実現させるには抜本的な業界のあり方を見直す必要が生じる。ユーザーが毎月支払っているスマホ料金は、そのサービスを提供する通信事業の部分だけでなく、定期的に買い替えを余儀なくされるスマホ端末の販売や、サポートの体制も含め、すべてに関わってくる。

 とくに近年問題となっているのが、MNP(番号移動制度)による顧客の「奪い合い」を目的にした過剰なキャッシュバック販売である。「2年ごとに通信事業者を乗り換えつつ端末を買い換えるのが一番お得」という使い方が広く浸透するほど、特殊な端末の売り方が横行してしまっている。確かに、2年ごとに通信事業者を乗り換えてしまうユーザーこそメリットは多いであろうが、そうした契約を繰り返すユーザーはまだごく一部である。多くのユーザーは、同じ通信事業者を何年も変更せずに使い続けている。2年以上同じ端末を使い続けているユーザーも少なくない。こうしたユーザーが結局は損をしてしまうのである。

 2014年3月に総務省で開催された会議に招聘された野村総合研究所の北俊一氏は、2013年の1年間でMNP利用者に約3,400億円が支払われていると試算し話題となった(MNP利用者に支払われた各種販売奨励金、すなわち月々サポートやのりかえサポート、キャッシュバック等の総額)。MNPを利用する約5%のユーザーのために、その他の約95%のユーザーが約2800円を負担している計算になるという。

 では、総務省の要請を受けて何が変わるのか。

 MNPのキャッシュバックを廃止すべきというのは最もな話である。過剰なキャッシュバックは前述の北俊一氏の指摘もあり、2014年春には一旦落ち着きを見せたはずだったが、その後また、とある通信事業者が始めると、それの対抗策として他の通信事業者も追随するという形でイタチごっこを続けてきた。

 では通信事業者の本音はどうなのだろうか。じつはNTTドコモはこれまでも何度かキャッシュバックを廃止したいと表明していたことがあった。つまり競争環境にあって仕方なく対抗してきたということであろう。本音はキャッシュバックをやめれば増益となる。その増益額も決して少ない額ではない。総務省の要請は「渡りに船」な状況ではなかっただろうか。

 一方で、キャッシュバックが廃止された場合に困るのはどこであろうか。やはり影響が大きいのは販売店であろう。スマホ端末を売らなくてはビジネスが成り立たないが、まさにキャッシュバックに充当する販売奨励金でなんとかつないでいるという状況であろう。通信事業を事業者とともに支えてきたという自負もあろう。通信事業者としても簡単に見捨てるわけにはいかない。こうしたことから「段階的に是正していく」としつつ、何らかの救済策(新たな販売施策)を模索していくものと考える。

 結局のところ、首相による「電話料金の見直し」という発言から始まりながらも、肝心な「消費者」にとってメリットのある見直しとはいえず(「低廉な料金プラン」と言っても、ただ単にデータ容量を少なくしたものが作られるだけ)、煮え切れない感じが拭えないのだろう。

 以上、2015年を振り返ると、ネガティブな話題が多い印象も受けてしまいそうであるが、言ってみれば大きな「転換点」となる1年であったのではないか。スマホのシェアの件や、キャッシュバック増額による乱売をポジティブに捉えれば、おそらく2016年は国内における中古スマホ市場の形成とMVNOのさらなる躍進に大きな注目が集まっていきそうだ。

 ウェアラブルデバイスについても、中途半端感を今後払拭し、さらに高度化が進むセンシング技術が搭載されることで、2016年には改めて注目されるヒット製品も登場するかもしれない。いずれにしても、変化が大きいといわれるICT業界の中にあって、とくにモバイル業界は常に変化がもたらされるワクワクした世界であることは間違いなさそうだ。

料金値下げ問題、MVNOの躍進……。“転換点”を迎えた2015年のモバイル業界

《木暮祐一》

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