ガールズコレクションで大人気の豆腐!…相模屋食料(2) | 東京IT新聞

ガールズコレクションで大人気の豆腐!…相模屋食料(2)

ソリューション ものづくり

■豆乳クリームや菊乃井との出会い
 ザクとうふを発売して間もなく、鳥越氏は不二製油の清水洋史氏(当時社長)から、「うちの豆乳クリームを使ってみないか」と話を持ちかけられた。豆乳クリームという名前に心当たりはなかったが、詳しく話を聞くと、どうやら新たに開発した商品だという。

 サンプルを飲んでみて、鳥越氏は驚いた。自社で豆腐の原料としてつくっているものとは比べものにならない、圧倒的なコク、旨味、甘み。そこに大豆臭さも無ければ、一切のエグ味も感じられない。これは凄い、何か新しい製品ができそうだ。そう思っていた鳥越氏の元に、今度は清水氏が豆乳クリームで作ったという豆腐を持って訪れる。

「これは絶対に清水さんが私に言わせたかったんだと思いますが、食べた瞬間に思わず口に出ていました。いやぁ、コレうちがつくったら、もっと凄いお豆腐になりますよって。そうしたら、それは豆腐は豆腐屋だよねって盛り上がって。隣に座っていた向こうの事業部長は、渋い顔をされていましたけどね(笑)」

 豆乳クリームとは牛乳からクリームを作るように、大豆を独自の製法で遠心分離したもの。通常の豆乳よりも脂質を多く含むため、固まりにくいという性質があった。そのため、清水氏が持ち込んだ豆腐も、無理に固めたような食感があったという。

 しかし、当時の鳥越氏にはある程度の勝算があった。絹や木綿のつくり方で固まらないならと、まずはよせ豆腐の製造に取り掛かる。試食した清水氏の評判も良く、実際に製品化の話も進んでいった。

 13年4月に不二製油はUSS製法についての記者発表会を行う。このとき、会場に招かれていた鳥越氏の印象に残っているのが、登壇者の一人として呼ばれた京都の老舗料亭「菊乃井」の主人、村田吉弘氏の一言だったという。「これで世界にいけるわと思いました」。そして、「うちでは鳥越さんのところで、豆腐をつくってもらいます」と。

「いやいや、そんな打ち合わせは一切していませんからと。どうも控室に置かせていただいたお豆腐を食べて頂いた時に思い付いたようなのですが、その一言から本当にコラボが実現して。その年のうちに製品化することができたんです」

 完成した「菊乃井とうふシリーズ」は、他の豆腐とはコクや旨味が全く違う商品となった。そのバリエーションは相模屋食料のプレミアムラインとして、今も高い人気を集めている。


■ファッションショーで豆腐をデビューさせる
 豆乳クリームを使った製品開発に着手した頃、鳥越氏はある機会からファッションショーを訪れていた。きっかけになったのは「ザクとうふ」の成功。ピンポイントな製品が成立するならと、今度はF1層をターゲットにすると決めていた。

「なら、彼女たちが集まるファッションショーを一度見に行こうと。会場に着いたら、その熱気に驚かされました。何万人もの視点がランウェイに集まって、誰もが夢中で喝采を上げていたんです」

 その中で鳥越氏が注目したのが、一人のモデルだった。ファッションアイテムとしてカフェのトールカップを手に持ち、ランウェイを歩いている。これがもし豆腐だったら、ものすごいPRになるのではないか。

 国内では三大コレクションとして、神戸コレクション、東京ガールズコレクション、東京ランウェイの3つが高い人気を集めている。鳥越氏はそれらすべてのショーで、豆腐をPRさせてくれないかと動き出す。果たして豆腐がショーに受け入れられるのか? それが鳥越氏にとっての不安材料だったが、話をしてみると意外な共感が得られた。

 例えば、ショーのモデルにはじまり、女性にはダイエット食として豆腐は身近なものだった。また、東京ガールズコレクションは、日本のガールズ文化を世界に発信することを目的としていたが、その中心となるファッションは元をたどれば舶来品。その中で日本古来の豆腐の意味を女の子にきちんと広めるのには意義があると、ショーの関係者からも賛同を得ることができた。

 とはいえ、この時に鳥越氏の手元には、ショーでPRする商品はまだ存在しなかった。ランウェイで醤油を垂らして、箸で食べるような商品を出すのは無理がある。既に出演が決まったショーのうち、一番早い神戸コレクションまでに残された期間は2か月。限られた時間の中で、鳥越氏はまたしても一人、新たな商品開発に乗り出す。

■温度調整の失敗から生まれた新製法
 女性に向けた新製品を開発するにあたり、鳥越氏には一つのビジョンがあった。それがチーズのような豆腐。元々は雪印乳業に勤めていただけに、乳製品のことは知り尽くしていた。さっそく豆乳クリームを使って、女性に人気の高いモッツァレラチーズのような豆腐をつくり上げる。試食してみて鳥越氏はすぐに気づいた、コレでは売れる商品にならない。


 試作品は豆腐として食べるには味がよかったが、例えばカプレーゼのようにトマトと合わせるなど、チーズのような食べ方をするには微妙だった。このままではモッツァレラチーズの代替品にしかならないだろう。

 そこで次に思いついたのが、ナチュラルチーズでモッツァレラと人気を二分するマスカルポーネだった。イメージしたのは、柔らかく、滑らかで、つるりとした舌触り。これならばよせ豆腐ではなく、充填豆腐がふさわしいだろうと、さっそく製法を変えて新たな豆腐をつくり出す。あらかじめ豆乳をパックに詰めてから温度を上げることで、ぼてっとしたよせ豆腐とは違い、その豆腐は滑らかな食感に仕上がった。

 これに加えて、鳥越氏は豆腐を半凝固にするというアイディアを取り入れる。きっかけになったのは工場の設備がまだ古かった頃に、豆腐を熱湯殺菌する時間を間違った経験から。タイマーを短く設定しすぎたことで、その豆腐は柔らかすぎ、売り物にはならなかった。

 この失敗を元にして、鳥越氏は豆乳の温度を二段階に分けて上げる新製法を産み出した。まずは低い温度で加熱することで、豆乳をゆっくりと固めていく。その後に温度を一気に上げることで、食べやすい固さまで凝固を進める。完成した豆腐は従来にはない、クリーミーかつリッチな食感となった。

■オリーブオイル×豆腐という食べ方の新提案
 マスカルポーネチーズのような、クリーミーかつリッチな食感。今までにない製品だけに、それを女の子にどう訴求するかも、開発に向けての課題だった。その一つが醤油をかけるのではない、新たな食べ方を提案すること。これについては、地下鉄の駅で手にしたフリーペーパーがヒントになったという。

「記事でオリーブオイルのかかった和菓子が紹介されていて、これだって思いましたね。オリーブオイルなら女の子のイメージや食生活にも合う。この頃には新製品のキーワードとして“ナチュラル”という言葉を使っていましたが、それにもピタリとハマりました」(つづく)

【地方発ヒット商品の裏側】ガールズコレクションで大人気の豆腐!…相模屋食料(2)

《丸田鉄平/H14》

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