ガールズコレクションで大人気の豆腐!…相模屋食料(3) | 東京IT新聞

ガールズコレクションで大人気の豆腐!…相模屋食料(3)

ソリューション ものづくり

 この後、オリーブオイルをかけて食べるために、豆腐には天日塩が加えられた。それが豆乳の凝固反応を遅らせ、より滑らかな舌触りを産み出したという。また、ショーの会場でも食べられるように、パッケージにはオリーブオイルとスプーン、皿がセットで入れられた。

 その一方で製品のパッケージについても、今までにない層に訴求できるイメージが必要だった。しかも大事なのはオリーブオイルをかけて美味しそうに見えること。実は相模屋食料の豆腐のパッケージは、それまですべて鳥越氏が自らデザインしていたという。しかし、この製品についてだけは今まで映画やCDジャケットなどで数々のデザインを手掛けてきた、著名なアートディレクターに発注した。

 初めてデザイン案が上がってきたとき、鳥越氏はすぐに彼に電話をかけたという。これでは売り場で目立たない、もっと明るいデザインにしてくれと依頼した。しかし、相手はこれで絶対にイケていると言って聞かない。それは今までディレクションを手掛けてきた映画館のように、暗い場所であれば確かに見栄えがしただろう。しかし、スーパーの豆腐売り場では、陳列棚の中に照明がある。そのような場所では、デザイン案のような暗いイメージは目立たなかった。

「最終的にはパッケージを作っている印刷所に売り場を再現して、実際に製品を並べてみました。それで納得してもらったのですが、やっぱりプロの方は凄いですね。その場ですぐに作業を始めて頂けて。『僕は世界中でMacを広げてきたけど、さすがに豆腐売り場の前というのは初めてだよ』って言いながら、デザインを直してくれたんです」

 革新的な食感、今までにない食べ方の提案、女の子に刺さるパッケージ。新製品に鳥越氏は「マスカルポーネのようなナチュラルとうふ」と名前を付けた。

■0.26秒の世界を打ち破る
 「マスカルポーネのようなナチュラルとうふ」は、日本三大コレクションに集まる女性たちから、たちまち絶大な支持を集めた。会場では毎回サンプルの配布を行ったが、初回の神戸コレクションで用意した4000個が、あっという間に品切れになる。その後は持てる限りのサンプルを会場に運んだが、それもステージの半分もスケジュールが進まないうちに無くなった。

 今ではコレクションにブースを出すと、「あっ、ナチュラルとうふだ」と女性が集まるほどに、その名が広まっているという。SNSでもサンプルを食べた女の子たちが投稿し、ジワジワと注目を集めていく。それと同時に商品の指名買いも増えていった。青山のあるスーパーでは、製品が品切れになったというクレームもあったという。

 豆腐と言えば中身が透けて見えるパッケージという固定観念がある。そのため、全体を包装フィルムで覆った「マスカルポーネのようなナチュラルとうふ」は、一見すると豆腐に見えない。だが、それは鳥越氏があえて狙ったものだった。


「誰が言ったか知りませんが、豆腐売り場は0.26秒の世界。ブランドなどを選んで買われる商品ではないんです。でも、どれだけ製品の魅力を訴えても、人は説明くさい話を聞きません。だから、自然とお客様が寄って来てくれるお豆腐が作りたかった。女の子だけに刺されば、その他の層には訴求できなくてもいい。そういうパッケージなんです」

 絹や木綿といった種類を超えた、“ナチュラルとうふ”という新しいカテゴリー。その美味しさを広めるために、その後も鳥越氏は新たな製品を開発していく。このうちバレンタインに向けた「チョコレート味」は好評のため、その後に販売の継続が決まった。

 15年9月にはナチュラルとうふを手軽に食べられるようにと、「ナチュラルとうふ premium ハチミツ×プレーン」を発売。トールカップに入れることで、持ち歩いてどこでも食べられる豆腐という新提案を行った。この月にナチュラルとうふは発売開始から1年を迎えたが、シリーズは累計300万パックと、鳥越氏の予測を超える売り上げを記録している。

■ヒット商品開発の哲学
 「ザクとうふ」から「ナチュラルとうふ」へ。その開発はすべて鳥越氏が1人で手掛け、社内に意見を募ることは一切なかったという。自分の信じたことを貫き通せば、社内から自然と人が集まり、目標を達成したらみんなで喜ぶ。それが、鳥越氏の経営哲学だ。

「成長を前提とした中小企業に必要なのは、会議を繰り返すことではありません。夢を共有できない人に相談しても、その人にとって迷惑なだけ。だから、まずは自分がリーダーシップを取って、社内にビジョンを見せる。社員にはその夢を共有してもらうことで、一人で行動するよりも大きな成功と達成感を感じてほしいと思っています」

 だから、例え独善的と言われようと、まずは自分が正しいものを決める。コンサルチームなどが集まる会議では、皆が鳥越氏にそろって言うという。「社長が迷ったら、この会社は終わりだからな」と。

 一連の商品を開発する中で、豆腐の新しいカテゴリーを開発するという流れができてきた。これを絶やすことなく、客の予想を超える製品を作ること。それが今、鳥越氏が自らに課している使命だ。

【地方発ヒット商品の裏側】ガールズコレクションで大人気の豆腐!…相模屋食料(3)

《丸田鉄平/H14》

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