自動車の自動運転…2020年に実用化 | 東京IT新聞

自動車の自動運転…2020年に実用化

ソリューション 人工知能

★3社が首都高速などで走行実験
★日本が競争をリード
★求められるインフラ側の対応

世界の自動車メーカーや米グーグルなどIT企業も交えた自動運転技術の開発が加速している。日本では2015年秋に開かれた東京モーターショーに合わせ、トヨタ自動車など大手3社が公道での走行実験を報道機関に公開した。いずれも20年までには高速道路内での実用化を目指しており、日本車が世界の技術競争をリードする格好となっている。(経済ジャーナリスト 池原照雄)

▼現行の道交通で規定

実験を公開したのはトヨタのほか日産自動車とホンダ。日本メーカーではこの3社に加え、自動ブレーキシステムなどで先行してきた富士重工業も20年の高速道路内での実用化を表明している。このうち日産は、他社よりやや先行する実用化スケジュールを打ち出しており、18年に「高速道路の複数レーンでの自動運転」、20年までには「交差点を含む一般道での自動運転技術の導入」を目指している。

各社が目下、取り組んでいる自動運転車は、いわゆる無人運転車のようにA地点からB地点への移動をクルマがすべて自動でやってくれるというものではない。現行の道路交通法で規定された運転であり、ドライバーには安全走行の責任が課せられている。従って、いざという時にはハンドルやブレーキ操作でドライバーが介入し、その際は瞬時に自動運転を解除するというシステムだ。

▼滑らかなハンドリング

昨年秋の実験は、いずれも東京都江東区を中心にトヨタとホンダは首都高速道路内、日産は一般道での走行を公開した。トヨタの実験車は高級車ブランド、レクサスの「GSハイブリッド」の改造車。首都高内の約8kmの走行ルートを予めカーナビゲーションに設定したうえで走行した。

ETCゲートを通過すると、自動運転が可能というアナウンスがあり、ドライバーがハンドルに設置されたスイッチをオンにすると自動運転モードに入った。レーンや周囲の車両などを検知しながらウインカーを出しての本線への合流、走行レーンや車間距離の維持、さらにレーンの変更、出口へ向かうための本線からの分流——といった高速道走行に必要な走りをすべてクルマが自律的に判断して行った。

走行ルートでは時速50kmから80kmまで制限時速が3種類あったが、ナビの地図データから最高速度の情報を得て、逐一速度も変化させる。きつめのカーブが多い首都高だが、滑らかなハンドリングが印象的だった。同様に首都高を走行したホンダの実験車のパフォーマンスも、ほぼトヨタと同じだった。

日産の公道実験は、人や自転車なども通行する一般道なのでハードルが高い。コースは左回りの周回で全長約17km。交差点、三差路などでの信号は約15カ所あった。実験車両は電気自動車の「リーフ」をベースに改造している。交差点での信号認識による停止や直進、左折、車線変更などを自動運転モードでこなした。信号のある交差点を左折する途中で、車両左側の横断歩道に人が入ってきたが、停止したまま通過を待って発進できた。

3社の新鋭実験車への試乗からは際立った優劣の差は伝わってこなかった。横一線で技術開発競争が進んでいるという印象だ。

▼センサーの改良が進む

自動運転は「認知」「判断」「操作」という人の運転動作をそれぞれ、機械やソフトウエア・人工知能(AI)に担ってもらう。このうち「認知」は、人の視覚に相当するもので、コンピュータとソフトが担う「判断」とともに、重要なデバイスだ。3社の実験車は、使い方に濃淡はあるものの、認知機能をいずれもカメラ、ミリ波レーダー、レーザースキャナー(レンジファインダーなどとも呼ばれる)という3種のセンサーで構成している。

これらのセンサーは、性能、コストともに相当なスピードで改良が進んでいる。とりわけ、周囲の車両などの物体を3次元で認識するレーザースキャナーの改良が著しく、自動運転技術の進化に貢献している。トヨタは「20年に向け、より現実的なセンサーの構成ができるようになった」(鯉渕健・BR高度知能化運転支援開発室長)と評価する。

ただし、センサーは「判断」を担うソフトやAIとともに、一段の性能向上とコスト低減がまだまだ必要だ。

また、混合交通というハードルの高い一般道での自動運転には、クルマだけでなく道路などインフラ側の対応も求められる。日産の実験コースは左回りの周回コースだったが、現状では交差点での右折は、クルマ側のセンサーだけでは安全にはできないという事情があるからだ。

日産の開発担当部長の飯島徹也氏は「クルマのセンサー群だけでは死角になるところが多い。道路側のインフラから周囲の情報をもらう『路車間通信』の活用が不可欠になろう」と見ている。そうした路車間通信は15年から一部の交差点やクルマでの実用化が始まった。
ITS(高度道路交通システム)専用に割り当てられた周波数を利用する「ITSコネクト」というものだ。交差点をカメラで監視する通信機とクルマが交信するもので、例えば交差点内で右折待ちする際には、死角から来るクルマなどの存在を音声などで注意喚起する。

自動運転技術の開発に対しては政府も、20年の東京オリンピック・パラリンピック開催時の実用化に向けてさまざまな支援策を進めつつある。日本の先進技術を世界に発信する絶好の機会でもあるからだ。

自動運転車は究極の「ぶつからないクルマ」でもあり、そこで培う要素技術は高度な安全技術として安価な一般市販車にも広く展開でき、交通事故の削減にも貢献できる。また、高齢化が進むなか、公共交通機関の乏しい過疎地での交通手段としての自動運転車の活躍も、大いに期待されるところだ。
《池原照雄》

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