【ITビジネス法務】「業務を発注する契約」を理解しよう(1) | 東京IT新聞

【ITビジネス法務】「業務を発注する契約」を理解しよう(1)

エンタープライズ 経営

~「業務委託契約」という契約はない~

IT業界で働く皆さんは、日々色々な種類の契約を結んでいます。その中で特に多い契約として、まずは秘密保持契約(NDA)が挙げられます。その次に多いのが、業務を発注する(受注者に何か作業をしてもらう)契約ではないでしょうか。

●「業務を発注する契約」は、なんの契約?

この「業務を発注する契約」ですが、法律上は、一体どんな契約なのでしょうか。何かを買うなら「売買契約」、何かを借りるなら「賃貸借契約」、というのは誰でもわかると思いますが、一体なんでしょうか。

先に答えを言うと、「請負契約」か「準委任契約」か、どちらかの契約になるのが通常です。(両方の要素をミックスした、非典型的な契約になる場合もありますが、話がややこしくなるので割愛します)。

ところで、業務の発注というと、「業務委託契約」という言葉がよく使われていますよね。先ほどの私からの問いにも、「業務委託契約だ!」と思った人も多いのではないでしょうか。ですが、そのような種類の契約は、法律上は定めがありません。業務委託契約は、請負契約と準委任契約の両方を指す、あくまでも慣習的な用語なのです。

●請負契約と準委任契約、どんな契約?

というわけで、業務を発注する契約の種類が分かったとして、それで請負と準委任は、どのような内容の契約なのでしょうか。請負になると(準委任になると)、どんな良いこと(悪いこと)があって、発注側の場合、受注側の場合、どちらの種類のほうがいいのでしょうか。

まず、請負とは、受注者が「仕事を完成すること」を約束し、発注者がその仕事の結果に対して費用を支払う契約のことです。例えば、Webサイトで考えてみると、コーディング業務やデザイン業務、ライティング業務などは、通常は請負になります。

一方で、準委任とは、受注者が「事務を処理すること」を約束し、発注者がその事務の処理に対して費用を支払う契約のことです。 請負と違って、受注者には仕事の完成義務がありません。同じくWebサイトで考えてみると、SEO対策業務やコンサルティング業務は、通常は準委任になります。

●何が違うの?

請負も準委任も、当然のことながら、きちんと仕事をする義務はあります。ですが、請負はそれにプラスして、仕事の完成までが契約上の義務になるのに対し、準委任はそこまでは契約上の義務にならない、ということです。

準委任は、家庭教師をイメージすると分かりやすいでしょう(家庭教師契約も、基本的には準委任です)。家庭教師は、適切に指導を行わなければ(例えば、授業時間中に生徒とゲームや雑談ばかりしていれば)、事務を処理していないということで、契約違反になります。その一方で、家庭教師が適切に指導さえ行っていれば、結果がどうなろうとも(例えば、生徒の成績が上がらなかったり、志望校に合格しなかったとしても)、事務を処理しているといえるので、契約違反にはなりません。もちろん親は、成績の向上や志望校合格を期待して、家庭教師契約を結んだのでしょうが、その期待は、契約上の義務にまではなりません。

どうでしょう。請負と準委任の違いが、なんとなく分かりましたか? 次回は、業務を発注(受注)する契約を結ぶ場合に、この請負と準委任の違いが、具体的にどう関わってくるのか、問題になってくるのかについて、解説をします。

筆者:藤井 総(ふじい・そう) 弁護士法人ファースト法律事務所代表弁護士。顧問先はベンチャー企業から上場企業まで90%以上がIT企業。サイト「IT弁護士.com」を運営。「IT弁護士.com」
《藤井 総》

編集部のおすすめ

特集

エンタープライズ アクセスランキング

  1. <ITビジネス法務>保守契約書は印紙が不要な場合が多い

    <ITビジネス法務>保守契約書は印紙が不要な場合が多い

  2. <IPO専門家が教える!>赤字や小さな売上でも上場できるのはなぜなのか

    <IPO専門家が教える!>赤字や小さな売上でも上場できるのはなぜなのか

  3. 地方創生の成功にはITが不可欠、政府が「IT利活用促進プラン」を発表

    地方創生の成功にはITが不可欠、政府が「IT利活用促進プラン」を発表

  4. <ITビジネス法務>「準委任」の契約書は印紙が不要になるという事実

  5. 毎日新聞が有料電子版、紙より価格抑え先行する日経と朝日を追う

アクセスランキングをもっと見る

page top