ロボットは場所と姿で人間に近づく…iREX 2015国際ロボット展 | 東京IT新聞

ロボットは場所と姿で人間に近づく…iREX 2015国際ロボット展

ソリューション ロボット

★人とともに生産ラインで活動
★ヒューマノイドを現場に派遣

12月2日から5日までの4日間、東京ビッグサイトで「2015国際ロボット展」(iREX)が開催された。出展企業・団体数計が446社、来場者数は合計12万1422名となり、来場者も前回より2万人弱も伸び、過去最大規模の展示会となった。大変幅広いジャンルのロボットが出展されたが、ここでは産業用ロボットと災害対応ロボットを紹介しよう。

●産業用ロボット大手4社が“安全なロボット”

産業用ロボットでは世界のビッグ4と呼ばれる、ファナック、安川電機、KUKA、ABBがそれぞれ出展し、ユニークなデモを実施していた。今回の産業用ロボットの目玉技術は「人とロボットの協働」だ。

これまで工場のロボットは、人の危険がないように安全柵に囲まれて作業することが求められていた。しかし2013年に労働安全衛生法が変わり、リスクアセスメントを守れば、安全柵を外してロボットを利用できることになった。政府の施策もあり、人とともに生産ラインに組込めるロボットの展示が目立った。力覚制御が行われ、人や障害物に接触すると安全に停止する仕組みが盛り込まれたり、ダイレクトティーチングによって作業の動作を簡単に設定できるものが多かった。

ファナックは、黄色から緑色にボディを変えた、人と協働作業が可能な作業台車付き小型ロボットや、人工知能を組み込んだロボットなどを紹介。また1200kgの自動車を軽々と持ち上げてしまうロボットに大きな注目が集まっていた。一方、創立100周年を迎える安川電機は、展示ブースを例年より広く取り、多くの来場者を迎え入れていた。ここでも協働型ロボットがお披露目された。全軸に力覚センサーを搭載し、人に接触すると自動停止する。また鏡面仕上げまで行える“匠の技”を再現するロボットなども紹介されていた。

日本で最初に産業用ロボットの生産を始めた川崎重工業も協働型の双腕型ロボットを出展。カメラに映し出された人の似顔絵を描くデモや、食品工場で弁当の惣菜をピックアップするデモも行われた。また同社では自動車の生産ラインで限られたスペースに10台以上の産業用ロボットを配置し、スポット溶接を一気に行う圧巻のデモも実施。ライフロボティクスも肘回転関節を不要にした「トランスパンダーテクノロジー」を採用した協働型ロボットを出展していた。

ヨーロッパ代表のKUKAは、ドイツ発祥の「Industrie4.0」を見据えた最新モビリティロボットのデモを行っていた。同社は7軸すべてにトルクセンサーを内蔵し、力を制御しながらバネのしなやかさを持つコンプライアンス制御を実現したマニピレーターを開発。今回は全方位移動が可能なモビリティ上に、このマニピレーターを搭載したロボットを出展し、生産ラインに自ら移動して作業できるロボットをアピール。また大手ABBの協調型双腕型ロボットは、小物部品の組み立てを器用に実行していた。

このほかユニークなものとしては、けん玉ロボットや、プロ棋士対コンピュータ将棋の団体戦「将棋電王戦FINAL」で対局した将棋ロボット、ヤマハがバイクを操縦するヒューマノイドロボットをビデオ映像で流していた。

●トンネル災害を想定したデモが人気

今回もうひとつ注目を浴びていたのはNEDOのブースだ。災害対応用ヒューマノイドロボットによるトンネル災害を想定したデモが行われ、人だかりができていた。出展したヒューマノイドロボットは、米国で開催された「DARPA Robotics Challenge」にも出場した機体。産業技術総合研究所「HRP-2改」、東京大学「JAXON」がデモを行ない、「HYDRA」も展示された。

デモの内容は、災害対応ロボットのコンピュータシミュレーション競技会「ジャパン・バーチャル・ロボティクス・チャレンジ」(JVRC)の実機版という位置付け。HRP-2改とJAXONの2体が、不整地や天井が低い場所などを歩行。さらに狭い平均台や落下したトラスをどけ、バルブを回して水蒸気を止める。その後ドアを開けてトラックまで進み、フロントガラスに突き刺さったパイプをどけて、車内を確認するデモを実施。

デモに登場したHRP-2改は、産業技術総合研究所(産総研)にNEDOが委託開発したモデルだが、もとは川田工業と産総研などが2003年に共同開発した研究用プラットフォームのHRP-2をベースに改造した機体だ。外観は変化がないが、中身は別もので脚腕が伸長する構造となり、レーザーレンジファインダーや3Dセンサーなどが追加され、電装系も一新。

●ヒューマノイドロボットが災害現場で活躍?!

一方のJAXONも、東京大学情報システム工学研究室がHRP-2をベースに10年以上も開発してきた知能ロボットだ。もとはダンスロボットを目標にしてきたが、高速高トルク水冷モータードライバーや、知能ロボットミドルウェアの「RTミドルウェア」と「ROS」の相互運用、高速全身ダンス動作生成研究などの成果を転用し、災害対応に仕上げた。

またHYDRAは、東京大学の中村研究室を中心に、千葉工業大学、大阪大学、神戸大学で共同開発した油圧ヒューマノイドだ。油圧と水素燃料電池を使用している点が特徴で、首以外は油圧アクチュエータで駆動。また手首・足首・肩・股は、2自由度の閉リンク機構でユニバーサルジョイントを駆動する。

このようなヒューマノイドロボットをわざわざ足場の悪い災害現場に適用させることへの議論もあるが、まだ実用には遠く及ばなくても、他国でもヒューマノイドロボットの研究が大きく進んでおり、サイエンスとして日本が研究を進めていく意義はあるだろう。
《井上猛雄》

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