誰でも簡単に超絶プレー?!…ギターアプリ | 東京IT新聞

誰でも簡単に超絶プレー?!…ギターアプリ

プロダクト アプリ

 スマートフォンでギターを弾く。そんなアプリが人気だ。昨年4月に発売された「Final Guitar」は、未経験者でも直感的に楽しめる上に、応用技もできる特殊な機能を盛り込んだことが受け、アップル社が運営するアプリダウンロードサービス、App Storeで昨年11月に国内有料音楽部門第1位を獲得。現在(2016年2月末)も20位前後をキープしている。開発・販売を手がけるのはITベンチャー、株式会社One Groove(岐阜市大垣市)。社長の藤田博基氏にその開発エピソードを聞いた。

■起業のきっかけ、母親の介護
 藤田氏は大手広告代理店出身。いわゆる広告マンだった。21年間勤務し、2014年3月、起業すべく退社。同年6月に株式会社One Grooveを立ち上げた。「起業のきっかけは、母親の介護です。会社勤めと介護の両立が難しくなって、だからといって仕事をやめるわけにはいかない。そんな境遇になってビジネスプランを競うコンテストに興味を持つようになったのです」

 ビジネスプランを競うコンテストで代表的なものに「スタートアップウィークエンド」がある。世界が抱える社会的な課題を技術的イノベーションで解決しようとする起業家支援の組織で、アメリカの非営利団体が運営する。54時間という限られた時間で、見知らぬ者同士が集まり、アイデアを披露し、チームを作って、新たなサイトやサービスを完成させる。藤田社長は、その名古屋大会で優勝。そのほか同種のコンテストでも優勝するなど好成績を挙げた。

 「いろいろなアイディアを思いついたら、そのつどメモを取るクセがあって、それを試してみるのも面白いんじゃないかと思ってコンテストに参加したんです。優勝して起業に向けての自信がつきました。審査委員からの助言もすごくためになった」。そんな藤田氏がギターアプリの開発に着目したのはベーシストとしての経験則からだったという。

■満足できるギターアプリがなかった
 「幼いころから音楽が好きで、いろんな楽器で演奏してました。なかでも得意のなのはベース。それとギターです。学生時代はバンド活動に明け暮れてました。やがてギターアプリが出回るようになって、私もギターアプリに興味を持つようになるわけですが、いざ使ってみるとどれも単調というか、ギター経験者からするとものたりないんです。だったら自分で自分が欲しいギターアプリをつくってしまおうと考えたわけです」

 Final Guitarの特徴は、初心者も上級者も楽しめる、まさに文字通り誰もが楽しめるという点にある。「ギターは楽しく、奥が深い。一度覚えれば生涯にわたって楽しめます。仲間とわいわいやれるのもギターの魅力です。でも難しい。だからギターに興味を持っても、練習が面倒で、諦めてしまう人が多いんです。だからFinal Guitarでは、その難しい部分を、システムに任せてハードルを低くすることが開発のポイントとなりました」

■音も見た目も、限りなく本物に近づける
 長さ60cm余り、6本の弦を持つギターは、弦のどこを押さえるか、あるいはどこの弦を弾くかで、音が決まる。その組み合わせは膨大で、ゆえに音域が広い。なかでも特徴といえるのが、複数の音が同時に鳴る和音、いわゆるコードだ。同時に6つの音を出せるコードは、音階という規則も相まって、パターンが膨大にある。それがハードルを高めている理由のひとつとなっている。

 「押さえる弦を、画面上でナビゲーションしてくれるギターアプリは、すでにいっぱいありました。でも音域をもっと広げるための応用技までリアルに再現されているアプリは数えるほど。例えばチョーキング。弦を引っ張り、無段階に音色を変化させる技なんですが、これを限りなくリアルに再現したかった。チョーキングができなければ上級者からは支持されませんからね」

 チョーキングの再現。それはシステムの複雑化を意味する。ただでさえ楽器アプリは電子機器のためにワンテンポ遅れるレイテンシという現象が起こりやすい。複雑化したシステムでは、それがより顕著になる。藤田氏が目指したのは「限りなくゼロレイテンシに近づけること」。しかも複雑な動きを単純化して、初心者が簡単に弾けることだ。「それを実現する作業が一番難しかったですね」という。

 60cm余りの弦が奏でる仕組みを、いかに長さ10cm程度のスマホで再現するか。単なる縮小再現にとどまらない巧みなシステムで構築されたFinal Guitarは、弦の描写も表現されている。実際にギターを弾くと、弦がしなるが、その見た目上の演出も盛り込んでいるのだ。そのほか、ユーザーの好きな曲を取り込めたり、好きなテンポでループ再生できたりと、便利な機能を数多く搭載。材質の密度が変化してできる「トラ目」模様も再現するなど、上級者が思わずニンマリしてしまう演出が随所に盛り込まれているのもFinal Guitarの特徴だ。

 プログラマーでもデザイナーでもない藤田氏がアプリ開発で活用したのは先述したコンテストを通じて知り合ったプログラマーや、クラウドソーシングなどのネットサービスだ。クラウドソーシングサイトは、子育てなどで離職した女性のほか、場所や時間を選ばないで仕事をしたいフリーランスが集まる。プログラマーとはメールで密に連絡を取り合い、情報共有するなかでアイデアが出れば、その都度、議論し、精査する。監修として著名なプロのギタリストも参画。さまざまなジャンルで才能を持つ人たちの協力者と力を合わせ、完成にこぎつけた。

■インパクトのある動画でSNS拡散
 元広告マンらしく、宣伝にも注力した。そのひとつが動画。機能面を前面に押し出すのではなく、楽しさを訴求するためのツールだ。「想定するターゲット層は、10代から20代の若者です。機能面をツラツラとならべるより、インパクトが重要で、"これすごい!"と思ってもらえる分かりやすいムービーを用意する必要があると思ったんです。びっくりすれば、今の若い人たちはすぐにSNSで拡散してくれる。それを狙いました」

 ウェブCMでは、Mary's Bloodという女性ロックバンドのギタリスト2人に出演を依頼し、駅前で路上パフォーマンスを展開。その様子をムービーにして流した。iPhoneをアンプにつなぐだけで、本物みたいなプレーができる事に驚く街の人の様子も撮影。美女がアプリで超絶ギタープレーをするというのはインパクトが大きく、「なんでこんなすごい演奏が出来るの!?」といったコメントを添えリツイートしてくれる若者が多く現れたという。

 さらにiPad用のアプリをリリースした時のプロモーションムービーでは、BABYMETALのギタリスト藤岡幹大氏と、開発時から携わっている鈴木健治氏のギターバトルを行った。「まさか、アプリでここまでの演奏ができるとは世の中の人は想像していないと思うので、インパクトを与えたかったんです。SNSなどで拡散させるためには、びっくりさせる要素を盛り込むことが重要。一度話題になればSNSは早いので」

 現在、藤田氏が練っているのは、ライブ情報の提供や音楽好き同士の交流を図る「音楽ライブアプリ」だ。演奏者と視聴者という両軸を囲い込んだ包括的な音楽サービスの構築を目指している。

【地方発ヒット商品の裏側】誰でも簡単に超絶プレー!…究極のギターアプリ

《DAYS》

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