IoTプラットフォームでジュゴンを保護 | 東京IT新聞

IoTプラットフォームでジュゴンを保護

ソリューション クラウド

●絶滅危惧の海洋生物

フィリピンで漁師がスマートフォンとAndoidのアプリを活用し、絶滅危機にあるジュゴンの活動をモニターしている。地域のジュゴンの生息数を監視し把握する「市民科学」プロジェクトに、IoTクラウドプラットフォームが活用されている。

ジュゴンは、東アフリカから西太平洋に渡る海に棲息する海洋哺乳類で、「海の牛」としても知られる。現在、国際自然保護連合(the World Conservation Union, IUCN)によって「危急種」に、日本の環境省によって「絶滅危惧1A」に分類されている希少種だ。地域での漁獲、棲息環境の破壊から密漁など、様々な危機にさらされているという。

Kii株式会社は1月27日、KiiのIoTクラウドプラットフォーム「Kii Cloud」が、Smart Earth Network(SEN)とCommunity Centered Conservation(C3)により、ジュゴンの「種の保存」プロジェクトに採用されたと発表した。SENは、自然保護活動家と科学技術者が地球上の問題への解決策を生み出すためのプラットフォームを提供する団体。C3は2002年にパラオで、海洋環境コンサルタントの国際的なグループによって設立された。多くの草の根運動を行なっている。

●位置情報付き写真

SENとC3がジュゴンの「種の保存」をスマートフォンとAndoidのアプリを使って展開しているのは、フィリピンのブスアンガ地域だ。すでに約30人の漁師が地域の携帯電話事業者、Cherry Mobileから支給されたスマートフォンを保有している。漁師は海に出てジュゴンを見つけると、スマートフォンで写真を撮影する。陸に戻ったときにSENが開発したアプリを用いて、Kii Cloudに設置されたデータベースに写真をアップロードする。

GPSによって画像にはジュゴンの位置が記録されており、C3はその情報を地図に落とすことで、その区域での生息数や、目撃のタイミング、移動のパターンなどについてより明確に知ることができる。保護区域を検討するのにも活用できる。今後はデータを、世界各地の自然保護活動家と共有したり、地元自治体とも共有したりする予定だという。

C3のメンバーであるクリス・プニアンによると、絶滅の危機にある生物をモニターするのにスマートフォンを使うのは新しい手法だ。「これまで我々は、海のジュゴンを空中から観察していた。これは費用がかかる上、信頼性の高い方法ではない。希少動物の保護・観察にスマートフォンを採用する試みは、このフィリピンでのプロジェクトが初めての例の一つだ。これが成功すれば、同じ手法が世界中で希少な種の調査に応用できるかもしれない」と述べる。

●市民科学

限られたリソースで絶滅の危機にある種をモニターするために市民の参加を求めることは“市民科学”と呼ばれ、生物保護活動において成長中の分野だという。「我々が開発し、試しているスマートフォンアプリは、世界どこでも、どんな種でもモニターでき、専門家ではない観察者でも有用な科学的データを取得できる可能性がある。今回はこれを使うことで、地域のコミュニティに関わり、海に実際に出てジュゴンの最も近くにいる漁師達の協力を得られるようになった」とプニアンは説明する。

SENの創業者、サイモン・ホドキンソンは、このアイデアは単純だが効果的だと評価する。「新しいモバイルテクノロジー、とりわけIoTは、自然保護活動のために観察者が歩き回る苦労を減らしてくれた。費用も削減できる。このプロジェクトはまだ初期段階であるにもかかわらず、地域コミュニティからの反応はとても好意的で、我々はすでに収集されたデータから一定の成果を得始めている」。

KiiのCEOで創業者である荒井真成は「SENとKiiとの関係は去年出会って以来急速に発展した。Kiiの技術がビジネスに利益をもたらす例を数多く見て来たが、今では自然保護プロジェクトにも参画し、絶滅の危機にさらされている種の保存に貢献している。フィリピンにおいてC3、CherryMobileと協力できることは喜ばしい」と述べる。
《東京IT新聞》

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