期待はずれ? 購入決定? iPhone SE&iPad Proを分析! アップル | 東京IT新聞

期待はずれ? 購入決定? iPhone SE&iPad Proを分析! アップル

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 アップル(Apple)は22日未明、最新のスマートフォン「iPhone SE」、ならびに9.7インチの小型版「iPad Pro」を発表した。それぞれの新しい製品が“買い”なのか、スペシャルイベントで発表された内容を振り返りながら考察してみよう。

 今回発表された新しいiPhone、iPadについては海外サイトから多くの情報がリークされていたうえ、結果的に発表された内容から大きく外れていなかったこともあって、いつもより何となく気分は盛り上がらないように感じている方も多いかもしれない。注目されていた「新しい4インチ版iPhoneのデザイン」についても新色にローズゴールドが加わったこと以外は、4インチモデルの先輩である「iPhone 5s」を基本的に踏襲するものだった。発表会の壇上でアップルのティム・クックCEOが「iPhone、iPadのシリーズがさらに強化された」ことを強くアピールしていたことからも、今回は既存製品のコンセプトに沿ったかたちでラインナップを広げて足場を固めることが重視な戦略だったことが読み解ける。

 発表会の壇上では「iPhone SE」が生まれた背景について、「世界中で4インチのiPhone」を望む声が強かったためと伝えられた。実際に4.7インチの「iPhone 6」が発売された一昨年の秋は、折しも日本国内でも5インチ台、あるいはそれを超える大画面スマホが今後の主流になるともてはやされていた頃だった。一方で5インチ超えのスマホを片手持ちで操作することに不便を感じる女性層や、携帯電話はコンパクトに持ち歩きたいというエントリー層を中心に、“6世代”のiPhoneは購入せずにiPhone 5sを愛用し続けているユーザーも多かった。確かに日本国内でも4インチのiPhoneへの期待感は大きかったように思う。だから今回3月31日に発売される「iPhone SE」はかなり売れるスマホになると思われる。ハイスペックな割に価格面でも手ごろなので、これからスマホを持つエントリー層のニーズを「iPhone SE」が一気にさらっていく可能性も高い。

■価格は、米国で購入するより割高か。国内3キャリアも取り扱いへ

 アップルのオンラインサイトでは日本でのSIMフリー版の販売価格が16GBモデルが52,800円(税別)、64GBモデルが64,800円(税別)になることがそれぞれ発表された。本稿執筆時の為替レートである1ドル=112円に当てはめて計算すると、米国での16GBモデルの販売価格である399ドル(44,300円前後)よりも、国内での販売価格は少し高めの設定だ。発表当時にはNTTドコモ、ソフトバンク、KDDI(au)が3月24日からの予約受付け、3月31日の発売を明らかにしているが、各社がスマホのエントリー層にも優しい魅力的な価格プランを今後発表してくるのか興味深いところだ。

 「iPhone SE」の基本的な処理性能についてはプロセッサー「A9」、コプロセッサーが「M9」の仕様を共通とする「iPhone 6s」と同等になると考えられる。同じ4インチの「iPhone 5s」に比べるとCPUの性能性能は2倍、GPUの画像処理は3倍のスピードになると発表されているが、この辺の実力は発売後に検証してみたい。

 カメラまわりはスペックを見る限りでは「iPhone 5s」に比べて大きく進化しているようだ。メインのiSightカメラのセンサー解像度は8MP(メガピクセル)から12MPにジャンプアップした。iPhone 6sも採用する「Live Photos」や、「Focus Pixel」技術による高いオートフォーカス性能、並びにセルフィ撮影時にメインディスプレイを発光させてストロボの代わりにする「Retina Flash」が採用され、写真撮影時の利便性アップや機能拡張が実現されていることがわかる。動画撮影は4K対応になり、再生ズームにも対応した。ただ一点、FaceTimeカメラの性能が1.2MPに据え置かれたのは残念に感じる。

■「3D Touch」は非対応に

 ディスプレイはサイズだけでなく、解像度も「iPhone 5s」のまま変わらない。「iPhone 6s」にあって「iPhone SE」にはないものが感圧式の3D Touchインターフェースだ。iOS 9.3のフィーチャーとなるブルーライトカット機能「Night Shift」も利用できる。

 通信まわりではLTEによる音声通話のVoLTEに対応したほか、TD-LTEの周波数帯域もカバーした。Wi-Fiは高速規格の11acを新たにサポートしている。デジタルインターフェースはLightning端子のままとなりUSB-Cへの変更はなかった。また一部でなくなってしまうのではないかとウワサされていたヘッドフォン端子についても従来機と変わらず搭載されている。

 内蔵バッテリーの容量は明らかにされていないが、3G連続通話時間は5sの10時間に対してSEでは14時間に伸び、ビデオ再生やオーディオ再生の最大時間もアップしている。この辺りはソフトウェア処理の最適化などにより実現している可能性もある。肝心なのは普通に使ってフル充電からどれぐらいの時間バッテリーが持つのかという点だが、これについても発売後に検証する機会があれば試してみたい。

■ローズゴールドが加わった9.7インチの小型版「iPad Pro」

 「iPad Pro」については、昨年11月に先行発売された12.9インチの大型モデルから名前がそのまま変わらず、一部にウワサされていた「iPad Pro mini」のように呼び分けるネーミングにはならなかった。些細なことだが、店頭で購入する際にはショップのスタッフに「9.7インチのiPad Proをください」と伝えるか、あるいは「iPad Proをください。9.7インチの方(または“小さい方の”)」といった具合に製品名とサイズをリクエストしなければならないので少し手間だ。

 なお「iPad Air 2」と「iPad mini 4」の販売は継続される。アップルのサイトを見る限りでは「iPad mini 2」もすぐには販売終了にならないようだ。ティム・クック氏が誇らしげに語る通り、iPadのラインナップもずいぶん充実した感じがする。

 画面サイズは「iPad Air 2」と同じだが、本日発表されたモデルは機能や位置づけは“別モノ”の商品と思われるのでストレートな比較にはふさわしくないように思う。ここでは簡単に「9.7インチのiPad Pro」に関するハイライトを振り返っておこう。

 まずカラバリにはiPadシリーズとして初めてローズゴールドが加わった。Wi-Fi単体モデルに、Cellurar通信機能を加えたモデルも発売されるが、発表会で上映されたムービーをよく見ると、Cellurarモデルは背面のアンテナ部分のデザインが少し変わったようだ。

 カメラまわりの機能も強化されており、メインであるiSightカメラのセンサーの解像度は12MPに上がり、FaceTimeカメラの方も5MPに高画素化した。セルフィ撮影時にディスプレイを発光させる「Retina Flash」や、「Live Photos」「4K動画撮影」なども乗って「iPhone 6s」なみの充実ぶりだ。

 ディスプレイまわりでは画面輝度が500ニットに上がって色域も拡大したことから、写真や動画を表示した際の精細感が一段とアップするものと思われる。使用環境の明るさに応じて画面の色合いを自動調節する「True Tone Display」は同機からの新機能だ。ほかにもオーディオ周りでは本体に4基のスピーカーが搭載され、出力もアップしたことでエンターテインメントコンテンツがより心地よく楽しめるようになるという。

 発表会の壇上でティム・クックCEOが「iPad Proの登場により、既存のラップトップPCからの買い替えが加速するだろう」と自信をもって述べていたが、タブレットの世界ではしばらく「iPadのライバルはiPad」の状況が続いていた。これからはマイクロソフトのSurfaceも含めたノートPCをターゲットに熾烈な戦いが繰り広げられることになる。iPadのセールス自体はこのところ、やや下降気味とも言われていたので、新たな戦いのフィールドに打って出ることでiPadシリーズを再度勢いづかせる狙いもあるだろう。パーソナルユースのスマートフォンであるiPhoneに対して、iPadは家族で使うタブレットという色彩が強いデバイスだったが、これからは仕事で使うビジネスツールとして、アップルはその魅力をより強調してきそうだ。今回256GBの大容量モデルを追加してきた戦略の背景にもビジネスマンへのアピールが透けて見える。実際に12.9インチだとやや大きくてビジネスバッグに入れづらいが、9.7インチならキーボード付きでもポータビリティが損なわれないし、ビジネスにも活躍してくれそうなタブレットとしては買って損はなさそうだ。

■アクセサリのキーボードとスタイラスペンもセットで

 その鍵を握るアイテムが、12.9インチの「iPad Pro」と同時に発売された周辺アクセサリの専用キーボード「Smart Keyboard」と、スタイラスペン「Apple Pencil」だ。それぞれに販売は好調と聞くが、iPadの操作性やクリエイティビティをさらに高めるアクセサリとしてますます定着してくれば、先にビジネスマンや学生の支持を獲得してきたマイクロソフトのSurfaceのユーザーを奪取することも可能になる。筆者としては今回のタイミングで「Smart Keyboard」の日本語対応や「Apple Pencil」のカラバリの登場に期待していたのだが、残念ながらそのアナウンスはどこにもなかった。

 一方で、もし今後iPadのビジネスツールとしての役割が多くのユーザーに認められ、ノートPCからiPadへの置き換えが進んだとしても、アップルがiPadのビジネスモデルを自体をシフトさせていく必要が出てくるだろう。なぜなら、仕事で使うノートPCは“革新的”なものよりも“使いなれたもの”を好むユーザーが多いからだ。

 確かにタブレットはノートPCに比べてポータビリティも高いし、メールやWebチェックなどをメインに使う限りはノートPCと互角か、あるいはそれ以上に作業効率を高めてくれる側面がある。ただし、iPadのようなデジタルガジェットに対しては、もっと短い期間で進化する革新的な機能やデザインを求めるユーザーの声も多い。

 二種類の期待を吸収しながら、これからiPad Airでは革新性を追求し、iPad Proはビジネスツールとしての安定性を重視しながら発展を遂げるという方向に、すみ分けが進むのだろうか。あるいは12.9インチのiPad Proから搭載が始まった独自の「Smart Connector」をコアに、革新的な機能を“外付け”のモデルで提供していくというスタイルもアリだと思う。いずれにせよ、これからのアップルのiPadを中心とした商品戦略にはこれまで通り熱い視線が注がれることだろう。

期待はずれ?購入決定?iPhone SE&iPad Proのポイントを分析!

《山本 敦》

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