ウェアラブル新潮流---表示と操作が変える | 東京IT新聞

ウェアラブル新潮流---表示と操作が変える

プロダクト ウェアラブル

昨年の4月にアップルが初のスマートウォッチ「Apple Watch」を発売して、いよいよスマートウォッチの普及が本格化していくものと思われたが、あれから約1年が経っても未だブレイクの兆しは見えてこない。時計型、メガネ型、新しいビジネスの可能性、ウェアラブルデバイスのトレンドを紹介する。

●スマートウォッチの次

そもそもApple Watch以前は、FitbitやJawboneをはじめ、アメリカ発のリストバンド型フィットネスギアがウェアラブル市場を築き上げ、牽引してきた。からだの健康維持・増進をサポートするヘルスケアデバイスとして一定の認知を獲得したウェアラブルは、やがてスマホのコンパニオンデバイスとして、音楽再生や写真撮影のリモコン操作などに対応しながらエンターテインメント性を帯びはじめる。そして、より視認性の高い画面を搭載する「スマートウォッチ」が登場。実はアップルよりも、サムスンやLG電子など家電ブランドが先に開拓してきた製品カテゴリーだ。両社は今や単体でネットワークにつなげる商品も発売しており、その先進性はApple Watchを周回差で引き離すほどである。

ところが昨今では、単体製品としてのスマートウォッチの進化がやや減速してきた。手首に着けて使うデバイスなので、必然的に画面や本体のサイズには一定の制約が発生する。かたや画面を大型化することで操作性の向上をアピールしてきたスマホに対して、スマートウォッチの小さな画面はWeb閲覧やメールの文字入力にはどうしても不向きだ。時計としての本質的な用途である「時間をみる」ことに関しては、よりファッション性に優れ、嗜好品としての趣味性も高いアナログ時計に軍配が上がる。

そこで大手メーカーがスマートウォッチの次の立ち位置として模索するのが、家庭内の白物家電やオートモーティブのスマート機能を操作するためのコントロールデバイスだ。既にサムスンやLGは自社スマート家電との連携、あるいは車のトップブランドとの協業によるサービスをローンチしている。この動きに対抗するために、アップルも早く次の製品、またはOSベースによる次の一手を講じる必要がありそうだ。

●二つの潮流に注目

ウェアラブル全体の潮流ではいま、ユーザーのアクティビティをビッグデータとして取得して、クラウド経由で循環モデルのサービスを提供する、従来のフィットネスギアに近いウェアラブルと、もう一方はアプリと連動しながらユーザーに情報を積極的にプッシュするディスプレイ型デバイスの、二つに注目することができる。特に後者についてはBtoBのフィールドを中心にいま、メガネ型の“スマートグラス”が新規のビジネスを創りつつある。

スマートグラスは現在、ソニーや東芝など国内の大手エレクトロニクスメーカーも参戦するホットな市場の一つだ。東芝は先日、新規事業分野として押し進めてきたスマートグラスのビジネスを本格的に立ち上げ、新商品「Wearvue」を法人向けに発表した。今後は製造・物流、保守点検市場のサポートツールとしてのみならず、医療やサービス分野に展開の道筋が見えているという。

同じ国内メーカーのブラザーが法人向けに展開する片目タイプのヘッドマウントディスプレイ「AiRScouter」は製造や医療の分野などにも採用が広がっている。同社では装着感に改良を加えた次世代モデルを開発中だ。HDMI接続にも対応することにより、クライアントの既存システム環境への組み込みを容易にする狙いがあるという。さらに屋外作業でのニーズの高まりを受けて、本体防水・防塵仕様のタフネスモデルの開発も進められている。

ディスプレイ型のウェアラブルデバイスといえば、今年はビデオゲームの世界に「VR(仮想現実)元年」がやってくると言われている。Facebookが買収したことでも知られるOculus VRは、いよいよヘッドマウントディスプレイ「Oculus Rift」の予約販売を開始した。日本から購入すると、国際送料込みで9万円を超える高額商品になりそうだ。そして大本命は今年前半の発売を予定するソニーの「PlayStation VR」。ふたつのライバルどうしが火花を散らして競い合いながらVR市場を熱く盛り上げるに違いない。

●IoTをコントロールする

BtoB市場では既存のスタイルにとらわれない、新しいウェアラブルの可能性も切り拓かれつつある。セメダインは電気伝導性を持つ接着剤を開発。年初に開催された「ウェアラブルEXPO」に出展し、布やシリコンゴム、紙などに電導回路を形成できる独自素材の優位性をアピールした。三機コンシスは普通の衣類と同様に手洗いできるファブリックヒーター素材を紹介。ジャケットやズボンのような、まさしく「着る」タイプのウェアラブルが安価に製造できるようになれば、これからアパレル市場にもハイテク化の波が押し寄せてくるだろう。

ウェアラブルにつながる興味深い技術動向をもう一件紹介しておきたい。KDDIはアメリカのベンチャー企業OSSIA(オシア)とともに、2.4GHz帯の無線通信を活用したワイヤレス給電技術「COTA(コータ)」をスマホやウェアラブル端末に組み込んでコンシューマー向けに展開するための技術開発に取り組んでいる。国内ではまだ法整備の面でも課題が残されているが、1人のユーザーが複数のスマホやウェアラブル端末を使わざるを得ない日はもうすぐそこまで来ている。機器の充電を手軽にワイヤレスで行うための技術開発は、もはや待った無しの最優先事項となりつつある。

BtoCの領域ではIoT(モノのインターネット)化が進み、多くの生活家電にネットワーク機能が組み込まれてくる。それをコントロールするためのデバイスとして、スマホやウェアラブル機器にかかる期待もますます大きくなるだろう。機器の使いやすさを高めるため、情報を表示するディスプレイ、あるいは操作を簡易化するセンサーの技術進化も見逃せない。複数の企業や研究機関が得意とする技術を持ち寄りながら、ウェアラブルの革新により大きなうねりをつくるべき時が訪れているのだ。
《山本敦》

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