「労務」をソフトウェアで自動化したい | 東京IT新聞

「労務」をソフトウェアで自動化したい

エンタープライズ 経営

誰がやっても同じならIT化しよう

企業が人を雇用するにあたっては、「入退社の書類作成」「社会保険・労働保険の各種手続き」といった「労務」の諸手続きが必要なのだが、その作業は煩雑で企業にとって負担が大きい。IT導入による業務の改善・効率化の例として、「労務」の自動化をめざすクラウド型ソフトウェア「SmartHR」を提供する株式会社KUFUの宮田昇始代表取締役に話を伺った。


●妻の産休がきっかけ

宮田氏は「妻が産休取得のための書類を自分で用意していたのが『SmartHR』を立ち上げたきっかけ」だと明かす。労務種類の作成・申請は非常に面倒で、専門の手引書が出版されるほど難解だ。

大企業には専任の社労士がおり、事務・総務は捺印だけして、社労士が業務を代行することもあるが、中小企業では従業員が自分ですることも珍しくない。「書式の準備や申請でも複数の役所に行かなければならず、それぞれで1時間待ち、2時間待ちとなる。社長がバックオフィス業務もしているような小規模な会社だと、ほかの業務が半日とまる」。

従業員モチベーションに悪影響があるだけでなく、「ある書式の性別に『3』があるが、これは炭鉱で働く人」を指すように、危険な環境で働く炭鉱労働者が多かった時代に制定された、旧態の制度でもある。

●誰がやっても同じ

こういった労務の手続きの書類作成、申請を代行する職業が社労士だ。人事や労務に関するコンサルティングも社労士の仕事で、一定規模の企業には、専業で有償の社労士に就業規則を作らせることが義務付けられたりもしている。ただし「社労士の利用は2割の企業に止まっている。社労士を利用しない理由として、95%がコストを理由に挙げる」と宮田氏。

「SmartHR」では、これらの労務業務をかんたんにブラウザで処理できる。チャットを利用したヘルプ機能や、「todoリスト」も用意された。政府が提供する電子申請受付サービスの「e-Gov」にも対応している。宮田氏によると「総務省はe-Gov普及のためにAPIを公開している。e-Govは、税務では申請の5割で利用されているのに対し、労務での利用率は4.2%しかない」そうだ。コストについては、「SmartHR」の料金は従業員4人で月額980円と、社労士の相場の約1/20だ。

宮田氏は「手続き系の仕事は、めんどうで時間がかかっても、最終的なアウトプットは誰がやっても同じ」という。この   ITで効率化したのが「SmartHR」というわけだ。

「SmartHR」は2015年7月にベータ版を公開、11月18日に正式公開された。2月下旬で630社を超える企業が導入している。やはりなじみがいいのか、インターネット系の企業やベンチャー系での採用が多いという。事業所や支店間での書類のやり取りが減った、社員の給与や家族構成といったプライバシーに関わることなので、少数の管理職に作業が集中していたのを軽減できた、チャットのサポートが迅速、といった評価がある。

●本来の価値ある仕事を

また「SmartHR」は、社労士を不要とするものではない。むしろ「SmartHR」の導入を歓迎する社労士もおり、企業との間で書類授受の手間が省けたり、月末月初の作業のピークが減ったりするのは「SmartHR」ユーザーと同じだ。社労士が「SmartHR」を使う例もある。宮田氏は「社労士も“誰がやっても同じ”と感じており、コンサルや提案といった価値の高い仕事を手掛けたいと思っている。複数のクライアント企業の労務を俯瞰して、トレンドや課題の可視化もできる」と期待する。

「会社の業務でアナログが多く残っていたのが労務」と宮田氏。人事や採用といった   IT化する“HRtech”=ヒューマンリソース・テクノロジーは、アメリカではすでに知られている概念だそうだ。「スタートアップ企業は、自分が過去に困った経験の改善を事業化することが多いので、その順番でいうと労務はこれから発展する分野だ」と宮田氏は語る。
《東京IT新聞》

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