ICTが変える高齢化社会…介護になぜICTが好まれるのか? | 東京IT新聞

ICTが変える高齢化社会…介護になぜICTが好まれるのか?

コンシューマー 産業のIT化

 全国の40代以上の男女のうち、約80%が介護ロボットを肯定的にとらえている――。これは、オリックス・リビングが毎年行っているアンケート調査のうち、2015年の結果によるものだ。プライバシーにもかかわる介護については、むしろ人手よりロボットのほうが気を使わないという声が高まっている。

 このような意見を取り入れて、同社の老人ホームや付随する介護サービスでは、ICTやロボット技術(RT)を介護の現場に生かす取り組みを積極的に行っている。そこに、一体どんな効果を期待しているのか? 企画部 広報課長の入江徹氏に話を伺った。

■見守りシステムで作業時間を1時間短縮

 そもそも入江氏自身はロボット活用について、どちらかというと懐疑的な立場だったという。しかし、アンケート結果を「人手の介護が否定されたようだが、ぬくもりのある介護とはすべてが人の手である必要はないのかもしれない」と受け止め、介護現場での機械化、自動化を考えるようになった。

 とはいえ、その取り組みはパワーアシストスーツやセラピーロボット、コミュニケーションロボットのように、最先端IT機器を全面に押し出したものではない。しかし、それは介護される高齢者、介護する介護士にとって、現場での効果やメリットがあるもの。技術シーズ先行ではなく、現場ニーズをしっかりくみ取れるものを優先して考えているからだ。

 例えば、「グッドタイム リビング 流山 弐番舘」などで導入している次世代予測型見守りシステム「Neos+Care(ネオスケア)」は、カメラとセンサーを組み合わせた見守りロボットだ。形状はベッドサイトに取り付ける箱状のもの。取材を受けると「もう少しロボットっぽいものはないんですか?」といわれるそうだが、国の介護ロボットプロジェクトで優秀機器に選ばれた実績を持っている。

 見た目はインターフォンのようだが、3次元赤外線スキャナーを内蔵しており、ベッドの形状と人の動きを認識する。これにより、寝返りやずり落ちなど、危険な動作なのかを正確に予測、検知して、適切なワーニングをナースセンターや介護者に送ることができる。起き上がりや柵越えなど、さまざまな動作も認識できるとのことだ。


 センサー技術と画像認識を駆使することで、圧力センサーをベッドに敷くだけのようなシステムよりも誤報が格段に減ったようだ。検知データの履歴も残るので、それを解析することで予防措置、事故防止、事故原因の究明などにも役立てている。

 これは実証実験のデータになるが、ネオスケアを導入した施設内では転倒回数、転倒者数がほぼ半減したという。これは、被介護者の危険動作、および周辺の危険因子を早期発見できたため。また、誤報の減少、夜間監視などの効率化から、全体の作業時間の短縮効果も確認されている。導入後8週間で、1日あたりおよそ1時間、作業を短縮できたようだ。

■要介護者はロボットのほうが気を使わない

 その他では、電子制御を含むさまざまな介助リフトの導入についても積極的だ。介助リフトは欧米などではむしろ一般的で、被介護者の移動などは基本人手で行うことはない。日本だと高齢者をモノ扱いしているのでは? とネガティブにとらえられがちだが、被介護者の安全を考えれば、人手による作業は危険でさえある。

 リフト導入による効果は、まず労働環境の改善として現れたという。アンケート調査では業務で最もつらい作業となっていた移乗介護が、導入後の12年には掃除と同程度の負担となったという。被介護者にとっても、人手の介護よりゆっくり動くことに加え、移動中にスタッフと会話ができるといった評価する声が増えた。これは、在宅での事例だが、寝たきりで余命1年を宣言された高齢者が、家族と散歩したり外出する機会が増え、体調改善と延命の効果が確認されたこともあるという。

 現在は移動式の一般的な介助リフトに加え、壁収納型のスウィングリフトの導入も進めている。これは、ベッドと対向する位置にトイレを設置して、間の壁にリフトの支柱を埋め込むものだ。被介護者はベッドからリフトに乗れば、そのまま回転するリフトでトイレまでワンストップで移動できる。車いすへの移乗が必要なく、安全性と移動時間の短縮が可能だ。

 “移乗の負荷を掃除レベルまで軽減”し、“夜間の見回りを1時間短縮”するなど、見守りシステムやロボットの導入は、介護者の負担を明らかに軽減できる。注目すべきはその恩恵が介護中の事故を防ぎ、気を使わずに施設で過ごせるなど、要介護者にまで及んでいることだろう。介護現場では今、入居者の安全やサービス向上、職員の安全、職場の環境改善をうまくビジネス戦略へと昇華させるために、ICT・RTの有効活用が求められている。

【ICTが変える高齢化社会:6】介護になぜICTが好まれるのか?

《中尾真二》

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