【3Dプリンターと製造業】経費削減から自社ブランドの可能性まで | 東京IT新聞

【3Dプリンターと製造業】経費削減から自社ブランドの可能性まで

エンタープライズ 市場動向

【記事のポイント】
▼産業用3Dプリンターの価格は、ここ数年で急速に下がる
▼個人クリエイターをパートナーに、小ロットでも売れるモノづくりを
▼コストダウンから高精密まで、3Dプリンターが金型を変える


■世界に遅れる日本の3Dプリンター普及率

 産業用3Dプリンターにおける主要な特許が切れ始め、その価格が下がりつつある。日本のメーカーも3Dプリンターの製造・販売への参入を進めており、中小企業にとっても、いよいよ導入のチャンスが訪れそうだ。

 とはいえ、日本では未だ産業用3Dプリンターを持つ企業は少ない。価格は数十万円からとなるが、1億近い金属3Dプリンターを導入している企業はまず無いといってよいようだ。その用途については試作射出がほとんど。最終製品の大量ロットを3Dプリンターで製造するという現場は、日本にはほぼ存在しない。

 そのため、せっかく産業用3Dプリンターを導入したのに、それが遊休状態にある企業は多い。そこに目を付けたのが、パートナープログラム「PPP」を提供するカブクだ。同社のプラットフォーム「rinkak」を通じて、3Dプリンターの射出業務を受注。それを、約1000社のパートナー企業に委託している。

 カブク代表取締役CEOの稲田雅彦氏によると、パートナー企業に占める国内企業の割合は約1割。そのほとんどが試作射出を専業としている企業だという。

「ただ、ここ数年で高機能な3D CADソフトが無料で使えるようになり、インダストリアル4.0によって工場のデジタル化も進みそうです。3Dプリンターを業務に応用するためのエコシステムは整いつつあり、最終製品を町工場が製造するのも、そう遠い話ではないでしょう」

■ニッチなユーザーインサイトを製品化する

 では、中小企業が3Dプリンターを導入したとして、今後どのようなビジネスが成立していくのだろうか。現状では採算の合う高価格・小ロットのオーダー中心のため、医療、航空宇宙、自動車などの業種が主な利用先となっている。

 その中でもカブクでは、フィギュアやカメラのグリップパーツなどを、パートナー企業を通じて生産。トヨタのモビリティ「i-ROAD」では、カスタムパーツの射出を手掛けているが、これを手掛けたのが燕三条の金属加工事業者「米山工業」だ。同社ではほかにもiPhoneカバーやアロマポッドなど、3Dプリンターを通じて様々なプロダクトを提供している。

「ただ、既存のプロダクトの拡張であれば、今は100均になんでもあります。いきなり新製品を作れと言われても、それには発注に応えるモノづくりとは別のクリエイティビティが必要でしょう。むしろ、今まではニッチで注目されなかったユーザーインサイトの方が、何か新しいモノを生み出す可能性が高いかもしれません」


 rinkak内にある3Dプリンター専門のマーケットプレイスでは現在、食器や雑貨、フィギュア、アクセサリーなど多彩なアイテムが販売されている。これらの大半は個人のクリエイターの手によるもの。中には、ごく一般の主婦が自分で使うためにと、3D CADを覚えてイチから作ったという製品もある。

 ごく一部の人間が本気で望む商品を小ロットで生産する。そのために、中小企業が3DCGデザイナーなどをパートナーに迎えるというのは、あるいは今後のモノづくりにおける、ひとつのフローになるかもしれない。

■“金型のモノづくり”を変える3Dプリンター

 日本の製造業における3Dプリンターの応用について、稲田氏が注目しているのが金型との関係性だ。3Dプリンターは成形に金型を必要としないため、小ロットの製品をオーダーメイドかつオンデマンドで生産しても、採算が取れるビジネスモデルを作りやすい。ものづくりの現場では今、自社ブランドがトレンドとなっているが、その敷居を下げるためにも一つの武器となるだろう。

 一方で、3Dプリンターでは樹脂素材などによる安価な金型から、冷却材の流路を緻密に設計した高精密な金型までを射出できる。後者は金属射出になるため、現状では億単位の3Dプリンターが必要だが、これについてはサービスビューロ(出力センター)を利用するという手もある。リサーチ会社「アクトプローブ」が16年5月に発表したリリースによると、金属積層造形のサービスビューロ事業を行う会社は国内では20社に満たないが、その数は増加傾向にあるようだ。

「国内で試験射出を行うのであれば、県の工業試験場を利用するのも一つの手ですね。そこで生産効率化のトライアルを行い、徐々に自社のビジネスを立ち上げるような事例が、今国内でも現れ始めています」

 石工や樹脂などの射出は中小企業の手の届くところに。一方で、サービスビューロを使えば、金属製の金型や最終製品も出力できる環境が整いつつある。下請けという関係性を重視するなら、生産効率の未知数な3Dプリンターを導入するのはためらわれるかもしれない。しかし、独自製品の開発など新たな方向性を模索する企業にとって、3Dプリンターが今後見逃せない存在になることは間違いないだろう。

【3Dプリンターと製造業:1】経費削減から自社ブランドの可能性まで

《文=丸田鉄平/HANJO HANJO編集部》

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