【3Dプリンターと製造業】3か月を3日に圧縮する新モノづくり | 東京IT新聞

【3Dプリンターと製造業】3か月を3日に圧縮する新モノづくり

ソリューション ものづくり

【記事のポイント】
▼3Dプリンターは試作の時間短縮・コスト削減に有効
▼金型メーカーが3Dプリンターを使い攻めのビジネスを実現
▼日本のものづくりの職人技と3Dプリンターの融合で競争力アップ


■試作機づくりで時間短縮・コスト削減を実現

 アメリカとイスラエルに本社を置き、3Dプリンターのメーカーとして世界中に事業展開しているストラタシス(Stratasys)。同社では現時点における3Dプリンターの大きな役割として、「ラピッドプロトタイピング(RP)」と「ダイレクトデジタルマニュファクチャリング(DDM)」を提唱している。

 RPは、CADデータを活用して試作機(プロトタイプ)を素早く(ラピッド)製作しようというもの。一方、DDMとはCADデータから最終製品を直接製作する試みだ。

 3DプリンターはまずRPを中心として、徐々に進展してきた歴史を持つ。製品開発の場では、最終製品のイメージを事前にできる限り具体的につかみ、その需要や実現性などを判断する必要がある。アイデアに始まり、企画書や2次元・3次元でのデザイン、モックアップといった過程を経て、試作機の製作と改良を繰り返しながら完成させるが、3Dプリンターによる短時間での試作製作は、製品開発に大きな変革をもたらした。

 まず1つはコストの削減。従来の試作機の製作では、専用の金型や治具などを用意しなければならないが、3Dプリンターはこれらがいっさい不要。また、CADデータでさまざまな立体形状を射出成型できるため、アイデアをCADデータ化すれば即座に試作機を製作できる。

 コストと時間の削減。これにより企画書から2次元・3次元のデザイン、モックアップといった過程の簡略化が可能となった。しかし、RPでのメリットはほかにも2点あると、ストラタシス・ジャパンの片山浩晶社長は指摘する。

「3Dプリンターを導入される企業の多くは、スピードという概念をお持ちです。製品開発のスピードが早くなれば、新製品をいち早く市場に投入できることで競争力が高まります。さらに、コスト削減によって試作機を何個も作れるようになり、失敗を恐れない、試作機作りに積極的になる社員の意識の向上、つまりマインドセットにつながっているようです」

 3Dプリンターは失敗に意義がある。すなわち試作機作りや製品開発に臨む姿勢が大きく変わったわけだ。これは製品の品質やデザインの向上にもつがるだろう。


「もう1つはコミュニケーション。これまで製品開発のミーティングでは、企画書を元に頭の中で新製品をイメージしながら話し合っていました。しかし、3Dプリンターで素早く手軽に製作した試作機を手にすることで、『部品を接続する位置をズラしたほうがいいのではないか』、『デザインを変えたほうがいいのではないか』、といった会話が生まれるというわけです」

 従業員数の限られた中小企業にとって、3Dプリンターの導入による“マインドセット”と“コミュニケーション”は、従業員1人ひとりのパフォーマンスを高めるという点で、大きな付加価値だといえる。

■完成品やパーツ品、金型・治具といった最終製品の製作にも用途拡大

 試作機とはいえ、可能な限り最終製品に近づけようと、3Dプリンターの性能は次第に高まっていた。その結果、素材の強度や耐久性、精度などが向上。3Dプリンターで直接、最終製品を製作できるようになった。これがDDMという、3Dプリンターの新たな役割となる。

「弊社の製品をご利用いただいている企業の1つに、従業員数が6名の金型メーカーがあります。ここでは3Dプリンターを使って、スマートフォンのケースの金型だけではなく最終製品も製作して、大手家電量販店に直接売り込んだのです。量販店のバイヤーから、『ここの形状をこう変えたほうがいい』などと指摘されると、それを修正してまた売り込むということを繰り返して、とうとう量販店で扱ってもらえるようになりました」

 その後、この金型メーカーはケースメーカーに飛び込み、「この金型を使ったこのケースはあの量販店に売れますよ、ですからこの金型を買いませんか」と売り込んだという。注文通りに金型を製作するのではなく、ビジネスにつながる金型を製作して売り込む。そんな攻めの姿勢に生まれ変われたのだ。

 DDMで製作されるものは今や最終製品だけでなく、パーツや製品の製造工場で用いられる金型や治具などにも広がった。これによってRPと同様に、DDMは時間とコストの削減にも貢献している。

「弊社に面白い事例がありまして、今後は3DプリンターがDDMの面からも市場拡大を見込めることから、キャラクターグッズを作りました。この際にはパーツだけでなく、金型づくりにも3Dプリンターを利用しています」


 ようするに、キャラクターの一部のパーツは3Dプリンターで直接製作して、その他の部分は金型を3Dプリンターで製作したのだ。それもわずか3日間で1000個。「3Dプリンターを使わなければ、パーツの1つひとつに金型を製作しなければなりませんので、期間は3か月かかるでしょうし、金型製作のコストもそれなりにかかったはずです」と片山社長は話す。

■今の設備を3Dプリンターに置き換えるのではなく補完する

 製品開発や製造の現場で、今の設備を3Dプリンターに置き換えればビジネスを変革できる――。このように考えがちだが、片山社長は「置換ではなく補完」だと指摘する。

「経営者の中には今あるCNCや切削機などを処分して、新しく3Dプリンターを入れればいいのか、とおっしゃる方がいます。しかし、モノによっては従来型の設備やスタイルで進めたほうがよいケースがありますので、『3Dプリンターを活用したものづくりも、新たな可能になりますよ』と補完の考え方をお勧めしています」

 同社では、FDMとPolyjetという2つの技術方式で、20種類以上の産業用3Dプリンターを展開。価格は性能や用途により、100万円から1億円台のものまで多岐にわたる。ここで片山社長が強調するのは、3Dプリンターを知るためには、まずは試しに使ってみること。それも産業用のプロ仕様のモデルだ。

「50万円くらいのデスクトップ型の3Dプリンターを使ってみて、ビジネスとしては使い物にならないという方がいらっしゃいますが、やはり3Dプリンターの実力を体験できるのはプロ用の機種。弊社ではプロ用を扱っていますし、一概にはいえませんが、中小企業のお客様にご購入いただいているのは100万円から500万円くらいまでの機種。少しでも負担を軽くするために、『ものづくり補助金』などの補助金や助成金を利用されるケースが多いですね」

 同社では、オンデマンドで3Dプリンティングを請け負うサービス「SDM(Stratasys Direct Manufacturing)」を展開している。これは3Dプリンターを納入した企業と手を組み、3Dプリンティング希望者からCADデータを受け付け、納入先企業の3DプリンターでDDMを提供するもの。利用者にとっては、3Dプリンターでどのような製作物が出来上がるのかを試せるわけだ。

 ほかにも同社では3Dプリンター技術者の養成をはじめ、メーカーの域を超えたさまざまなソリューションを展開することで、“ストラタシス・エコシステム”を構築しつつある。「Wohlers Report 2014」によると3Dプリンターの世界市場で54.7%を占める、いわばリーディングカンパニーともいえる同社のこうした動きは、3Dプリンターが将来のものづくりを支える存在になることを予感させる。片山社長は次のように語った。

「日本のものづくりの職人技は世界に誇れるもの。この職人技と3Dプリンターが融合することで、日本のものづくりはさらに競争力を高められるはずです」

【3Dプリンターと製造業:4】3か月を3日に圧縮する新モノづくり

《加藤宏之/HANJO HANJO編集部》

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