【動画PRの成功術】講義をそのまま公開、顔の見える進学塾! | 東京IT新聞

【動画PRの成功術】講義をそのまま公開、顔の見える進学塾!

エンタープライズ 経営

【記事のポイント】
▼若者世代にとって、スマホで見るWeb動画コンテンツは、テレビと同等の存在感を獲得している
▼顔を出すことで、顧客の信頼を獲得できる
▼動画は新たな客層、地域にリーチするプロモーションとなる


■若者にとってテレビと同等の存在感を持つWeb動画

 ユーチューバー(YouTubeに動画を配信し、そこからの広告収入を生業とする人)という“職業”が生まれ、子供の将来の夢としてもランキングされる時代である。

 近年のスマホ普及は一般消費者の動向にも大きく影響し、スマホ経由で動画を視聴する人が増えている。今や十代から二十代の若者世代にとって、スマホで見るWeb動画コンテンツは、テレビと同等の存在感を獲得しているという調査もある。企業のプロモーションを考えた時、Web動画を無視していていい情勢ではないといえるだろう。CM、プロモーション媒体として、もはやWeb動画はテレビCMと肩を並べつつあるのだ。

 ただ、YouTubeの冒頭に数秒表示されるような、純粋なCM動画においては、すでに各分野の大手企業が進出している。中小企業の立場から考えれば、そこで同じ土俵に上がってしまっては、大手と渡り合うことは難しいだろう。

 だが、YouTubeに公開された動画そのものをプロモーション手段として活用し、堅実に成果を上げている中小企業もいる。栃木県宇都宮市にある「コマキ進学塾」がそうだ。Web動画を決め手として入塾を決めたという生徒が、着実に増えているという。

 教育業界は、少子化の影響もあって大手でも方針転換や業界再編が進められている、厳しい業界だ。そんな中でも成果を挙げるプロモーションとは、一体どのようなものなのか。同進学塾の小牧信夫氏に聞いた。

■地域に根ざす中小企業の強みを、動画なら最大限に生かせる

「学習塾は数も多く、競争が激しい中で、以前からあるチラシなどによるプロモーションは効果が上がらなくなっていました。そんな時に、Web動画という手法もあるということに気付いたんです。ブログなどは他社でも使っていましたが、動画をやっているところはありませんでした」

 そう語る小牧氏は、YouTubeにチャンネルを開設して動画コンテンツを発信している。最終的な目的は生徒獲得だが、内容はいわゆる宣伝・広告ではない。チャンネルには、まるで授業風景をそのまま切り抜いたように、講師の小牧氏が自ら、志望校別の詳細な傾向と対策を語りかける映像が並ぶ。

 つまり広告ではなく、“商材そのもの”である授業内容を、一部とはいえ無償で見られるコンテンツにしてしまったのだ。企業としては躊躇するところだが、小牧氏は「大手には出来ないことだから、やる価値がある」という。

「最初は、躊躇はありました、動画だけで満足されるんじゃないかと。でも結果は逆でした。惜しみなく情報を出すことで、『もっと聞きたい』と思ってもらえたんです。そういう我々の姿勢が動画視聴者の信頼感、心を掴むことができた。どの仕事も最終的にはそうですが、塾というのは、教師と生徒の人間関係が大事です。『あの人だから』という気持ちが仕事に繋がっていく。動画を見て、この先生ならしっかり教えてくれそう、この人はいろいろ相談に乗ってくれそうだと思った、そういう理由で入塾を決めてくれた生徒さんが増えました」

 小牧氏は動画によって、肝心な「顧客の気持ち」をしっかり捉えることに成功したのだ。大手には難しいだろう、勿体ぶらずに手の内をさらけだす大胆な動画内容が、結果として信頼感の獲得、顧客増に繋がったわけだ。人と人の結びつきという面では、商品しか実感のない大手企業よりも、会社がそこに建っていて、働く人の顔が見える、地域に根ざした中小企業の方が、顧客との距離が近くて有利な点がある。教師と生徒が文字通りのフェイストゥーフェイス、顔を合わせる進学塾というケースでは、その強みが最大限に生かされたのではないだろうか。生徒からすれば、「実際にどんな風に教えてくれるのか」が事前に分かるのは、心理障壁を取り除いて安心できる作用もあったろう。


 それでいて、“あの人だから”という感情は、大手企業の大々的なCMに著名タレントが起用されることと通じるものがある。“この人に教わりたい”という感情は、大手予備校が講師をタレント化して成功した手法にも似ているだろう。

 テレビ番組でも、これと似た要素を持つ企画が放送されることがある。大手企業の工場の現場レポートとして、企業の“裏側”を視聴者に覗き見させるものだ。現場を見せることで、「誰が」「どんな風に」作っているのかなど、商品に情報を付加して一層の親近感を抱いてもらおうという戦略である。

 コマキ進学塾は、そうした“大手ならでは”だった手法を、より顧客との距離が近い中小企業の立場から実現している。言うなれば、塾講師である小牧氏自身がひとつの商材として打ち出され、それが視聴者に受け入れられたのだ。この方法論は、進学塾に限らず多くの業界で応用できることだろう。動画PRは、「これを買いたい」以上に、「この人からモノを買いたい」と思わせるきっかけになるのだ。

 大手ならこういう手法に既存マスメディアを使うが、では中小企業は、と考えた時に有効だったのが、動画という手法だったのである。

■ただ撮ればいいのではなく、こだわりと配慮を

 小牧氏が撮影時に使用していたのは、どこでも市販されている、一般的な家庭用ビデオカメラだ。それに、Web通販で購入した撮影用のライティング機材を照明に用いて、見栄えを良くしているという。

「室内で撮影する時は、なにかプラスの照明がないと画面が暗くなって、印象が良くないんです。照明を加えることで、がぜん、映像の印象が良くなります。プロモーションですから、最低限度の映像は撮りたい。これから動画を撮影するなら、光にはぜひ気を付けてもらいたいですね。カメラも今後は、動画機能のある一眼レフカメラに移行する予定です。やはり画質が良いですから」

 こだわりを持って撮影に臨む小牧氏だが、最初からこうだったわけではもちろんない。

「プロモーションの効果が出てくるスパンもそうなんですが、半年一年、少しずつ向上させていく意識で、焦らないようにやってきました。そこは普通の仕事と一緒で、トライ&エラーです。機材をそろえてすぐに上手く撮れて、それで成果を上げられるということではないです。新たに始めるなら、そこは長い目を持って欲しいと思います」

 動画プロモーションも魔法の杖ではない。通常業務と同じく、日々の積み重ねによる改善が必要ということだ。それも、量販店へ行けば一日で買いそろえられる程度の機材で撮影できるのである。数百万円もかけてプロ用の機材をそろえる必要はない。外注もせず、自社の社屋内でも出来る。映像制作への企業の敷居は、未だかつてなく下がってきているようだ。

 そうして撮影された動画は、短いもので約2分、長くても10分に満たない程度だ。撮影して即完成するわけではなく、パソコン上での編集作業によって、字幕やBGMの挿入などを行う。リハーサルやリテイクを含めれば、1本の動画を撮るのに1時間ほど、さらに編集作業で1時間から2時間ほどの時間をかけて制作しているという。


 小牧氏の場合、それを焦ることなく楽しんでやれているということが、最終的な結果に繋がっているようだった。“ゆるい”感もあるが、日々のワークフローを圧縮した限られた時間の中で、作業を進めていく上では、楽しみにもなっているということは重要な要素だ。また、予算もスケジュールもガチガチに決まってしまいがちな大企業よりも、そうした面で融通が利きやすい中小企業ならではのスタイルだ、ともいえるだろう。

 また、重要なポイントは動画そのものではなく、その動画から「どこへ誘導するのか」であるという。

「動画を見てくれた人に“次に見て欲しいところ”を、ランディングページとして用意して、動画ページにリンクを貼ってあります。動画で興味を持ってくれた人に、次にランディングページを見てもらえるように、という仕組みです。視聴者さんの興味を途切れさせない、動線を作っておくということですね。これが企業の公式サイトではダメなんです」

 例えば、Aという商品の動画から、AもBもCも売っていますという総合サイトへリンクを貼ったとしても、それが視聴者の興味を満たすことにはならない、ということだ。動画の内容と直結した情報でなければ、気の早い視聴者はすぐに飽きてそっぽを向いてしまう。視聴者、顧客が今欲しいと思っているものをすぐさま提示できなければ、成果アップには結びつかないのだと小牧氏は強調する。

■期待以上のマーケットの広がり

 こうして実際に動画でのプロモーションを行った結果として、今までなら思いもかけないような広がりが生まれているという。

「塾に通う生徒さんの範囲というのは狭くて、せいぜい半径3キロほどなんです。ところが動画を始めてから、これが5キロくらいに広がったし、極端なケースですと、地方や海外から、動画を見て『そちらに転居する予定なのだが、子供をそちらの塾へ通わせたい』という保護者さんもいらっしゃいました。また、保護者ではなくお子さんが直接動画を見て、この塾に行きたいと仰ってくれたというケースもありました」

 通学の必要性から、塾というのは一定距離より遠くから生徒が集まることはあまりないそうだが、動画プロモーションはその壁を破ってくれた。つまり商圏が拡大したということだ。従来の折り込みチラシやポスターといった広告手段が、主として保護者にリーチしていたのに対し、動画はスマホの普及によって、生徒になり得るお子さんに直接リーチすることを可能にしている。自らの受験や将来を考えてWebで検索した結果、コマキ進学塾の動画に辿り着くケースが増えた。誰かの紹介でもない限り、そんなことは今までなかったと、小牧氏も驚いている。

 コマキ進学塾では今、新規事業として教材の全国販売を企画しているが、その宣伝、プロモーションにも動画を大いに活用する方針だという。顧客層、商圏のみならず、商材の拡大にも動画が一役買ってくれるということで、小牧氏が自信を持って「中小企業が動画をやらない手はない」というのも頷ける。

 コマキ進学塾のケースは、スマホ普及によって動画に触れる機会を増した若年層、生徒児童の世代こそが、まさに企業としてリーチすべき層であったという巡り合わせもある。しかし、動画プロモーションが商圏や顧客層を拡大してくれたという実績は確かであり、少子化という重たいハンデを背負った分野でも成果を出せたことは大きい。この事例は、どの分野の企業にとっても応用できる教訓、見本となるのではないだろうか。ただ商品を売り出す、印象づけることに限らない、地域に密着した企業だからこその、働く人の姿を見せるというイメージ戦略などにも、動画プロモーションは効果を発揮してくれそうだ。

【動画PRの成功術:3】講義をそのまま公開、顔の見える進学塾!

《HANJO HANJO編集部》

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