【新価値創造展】自社ブランド立ち上げのヒントを探る! | 東京IT新聞

【新価値創造展】自社ブランド立ち上げのヒントを探る!

コンシューマー 産業のIT化

【記事のポイント】
▼大手で躊躇する企画でも可能性があればトライする
▼クラウドファンディングをマーケティング的に活用する
▼中小ならではの機動力を発揮する


 少子化や消費の停滞、海外への工場移転などを受けて、新たな事業に進出する下請け企業が増えている。その中で注目されているのが自社ブランド。自らがメーカーとなって、製品の開発から販売までを手掛ける動きだが、成功には技術力だけではない何かが必要となる。

 中小企業が新たな技術や商品、サービスを展示する「新価値創造展」が、今年も東京ビッグサイトで10月31日から開催された。会場では様々な自社ブランド製品が出展されていたが、中でも興味深い取り組みを行なっていた2社の開発秘話から、自社ブランド実現のヒントを探りたい。

■クラウドファンディングから始める自社ブランド

 会場で“ONE-STOPパートナー”を名乗っていたのが、大阪に本社を持つものづくり企業のスタッフ。設計事業から始まって、現在では自社工場による試作や量産なども行なっている。主に手掛けているのが家電製品の基盤や筺体開発で、その中から生まれたのが初の自社ブランド製品となる「TISPY」だ。

 “学習型IoTアルコールガジェット”のTISPYは、元は東芝の社内ベンチャーから生まれた企画だという。呼気からアルコール濃度を測定し、データを蓄積。それらを複合的に分析して、「今日はペースが速いよ」とアドバイスしたり、酔いざめ予測などの機能を提供する。社内でのプレゼンを通過して予算もついたが、東芝という企業規模の中で意味のある売上が見込めなかったことから、スタッフに企画委譲の話が舞い込んだ。

 同社営業推進チームチームリーダーの廣江朋也氏によると、すでに東芝社内で企画が進んでいたため、まずはその引き継ぎからプロジェクトが始まったという。

「下請けという形で製品そのものを製造した経験もありましたが、それ以外のコンセプトや販路など、技術開発以外の部分のすり合わせを行なったのは今回が初めてでした。東京の東芝本社まで何度も足を運んで、ある程度の形が見えるまでには時間が必要でしたね」

 TISPYは企画段階から、販路にクラウドファンディングを活用することが盛り込まれていた。これについてはスタッフ側もプレゼンを受けた段階で、その魅力を感じていたという。最終的には国内最大級のクラウドファンディング「Makuake」で1500万円の資金を調達。これは、クラウドファンディングのプロジェクトでも、成功した部類といえるだろう。

「クラウドファンディングではお客様のフィードバックが得られるので、それをバージョンアップという形で次のロットに生かすことができます。フォルムや説明書をシンプルにしたのはデザイン的な意図もありましたが、お客様が“何が必要と感じたか”を知るための実験的な要素もあって、これもクラウドファンディングだからこそできた取り組みだと思います」

 ただ、同社によるとTISPYは単体で売上を上げることは目的としておらず、ブランド力を高めることでの、ほかの製品への相乗効果を狙った部分が大きいという。約1700台の受注があったTISPYでも、「クラウドファンディングだけで採算を取るのは難しいと思います」とのこと。次の販路も含めて、現在はプロジェクトの行く先を模索している途中とのことだ。


■失敗のまま終わらせない新商品開発

 車を汚さずに愛犬を助手席に乗せられるドライブボックス「dog pedear」を出展していたのは、山口県で縫製業を営むシーエス。アパレル業界で下請けを手掛けているが、同社代表取締役の加藤誠氏によるアイデアが、いくつもユニークな製品を世に送り出している。

 同社が最初に異業種参入したのは、住宅用エアバックだったという。強靭な繊維でつくられたエアバックを天井裏に設置して、地震とともに自動で膨らんで生存空間を確保する。この取り組みはテレビなどでも注目されたが、残念ながら製品化されることはなかった。ただ、これを展示会に出展していたところから縁が生まれて、JRから依頼を受けて開発した脱出用シューターが現在特許申請中だという。

 その一方で愛犬家である加藤氏が注目したのが、ペット業界だった。同社の縫製技術を生かしてドックウェアを開発。ただ、次第に業界では春夏物などシーズン物へのニーズが生まれ、繁忙期が本業と重なるようになっていった。また、ドックウェアはメーカーによってサイズがさまざまで、製図やパターンを個別におこし、生地をストックするのも負担が大きかったという。大手が参入する中で海外生産品も増え、価格競争に苦戦するシーンもあったようだ。

 そこで生まれたのが、冒頭で紹介したドライブボックス「dog pedear」だ。同社の縫製技術を生かして、生地をボックス状に成形。ふだんはクッションとして使い、組み立てて助手席に置けば、そこに愛犬を入れられるという仕組みだ。

「閃いたものはまずつくるという姿勢で事業に取り組んでいます。今回はデザイナーと協業して、女性目線の商品づくりを行ないました。3色の色使いや豪奢な金具、ハートのワンポイントなどは、我々からは生まれなかったアイデアだと思います」

 現状ではまだ本格的な販促は行なっていないが、美容院など思いがけないところから、取り扱いのオーダーが入っているという。犬好きから生まれたペット業界参入と、ドッグウェアをつくる中で得た知見。それを新たな形で商品化に結び付けたのは、アイデアマンな加藤氏ならではの取り組みと言えるだろう。

 下請けを手掛けてきた中小企業にとって、自社ブランドの開発で苦戦するのはやはり企画の部分だ。相次ぐ不祥事などで苦戦する大企業や、これまで自社が行なってきた取り組み。スタッフとシーエスの事例では、その中に意外なヒントが転がっていた。そこに商機を見つけてチャレンジすることも、これからの中小企業には必要となっていくだろう。

【新価値創造展:2】自社ブランド立ち上げのヒントを探る!

《丸田鉄平/HANJO HANJO編集部》

編集部のおすすめ

特集

page top